背泳ぎをしていて、気がつくとコースロープにぶつかってしまったり、斜めに進んでしまったりすることはありませんか?「まっすぐ泳げているか不安で、思い切り泳げない」という悩みは、背泳ぎ初心者の方からよく聞かれる声です。
上を向いているため進行方向が見えず、恐怖心を感じることもあるでしょう。しかし、体の使い方や意識の持ち方を少し変えるだけで、驚くほど安定して直進できるようになります。今回は、背泳ぎでまっすぐ泳ぐための具体的なコツを、基本の姿勢から練習法までやさしく解説します。
背泳ぎでまっすぐ泳ぐコツは「目線」と「頭の位置」にあり

背泳ぎでまっすぐ泳ぐために最も重要なのは、実は手足の動きではなく「頭の安定」です。頭は船でいう「舵(かじ)」の役割を果たしており、ここが動くと体全体が左右に振られてしまいます。まずは、基本となる目線の位置と頭の固定方法を見直してみましょう。
天井のマークやラインを目印にする
泳いでいる最中、目はどこを向いていますか?もし視線がキョロキョロと動いているなら、それが蛇行の原因かもしれません。屋内プールであれば、天井の梁(はり)やライン、空調のダクトなど、まっすぐに伸びている直線をひとつ見つけて、それを追いかけるようにして泳ぐのがおすすめです。屋外の場合は雲や電線などが目印になります。常に決まった一点、あるいは直線を視界の中心に据えることで、自然と頭の位置が固定され、体の中心軸がブレにくくなります。
顎を軽く引いて頭を固定する
頭の位置を安定させるためには、顎(あご)の角度が非常に重要です。顎が上がりすぎていると頭が水没しやすく、逆に引きすぎると体が沈む原因になります。理想的なのは、顎と首の間に「握りこぶし1つ分」くらいのスペースを空ける感覚です。この角度を保つことで、おでこが水面から少し出た状態になり、安定した姿勢をキープしやすくなります。首の力を抜き、枕に頭を預けるようなリラックスした状態で、後頭部を水に乗せるイメージを持ちましょう。
コースロープを周辺視野で捉える
「ぶつかるのが怖くて、つい横を見てしまう」という方も多いですが、顔を横に向けてコースロープを確認するのは避けましょう。顔を横に向けた瞬間に、体もその方向へ傾いてしまい、結果的に蛇行してしまいます。大切なのは、顔を真上に向けたまま、目の端(周辺視野)でぼんやりと両サイドのコースロープを感じることです。人間の視野は意外と広いので、真上を見ていても両側のロープの色や距離感は何となく分かるものです。この「なんとなく」の感覚を信じて泳ぐことが、直進性を高めるコツです。
腕の入水位置を見直して蛇行を防ぐ

頭の位置が安定しているのに曲がってしまう場合、次に疑うべきは「腕の入水位置」です。特に、腕を振り上げた勢いで中心線を越えてしまう「クロスオーバー」は、背泳ぎが曲がる最大の原因の一つと言われています。正しい入水位置を身につけましょう。
時計の11時と1時の方向を目指す
両手を頭の上に伸ばしたとき、時計の針でいう「12時」の位置(頭の真上)に入水しようとしていませんか?実は、12時の位置に入水しようとすると、肩の構造上窮屈になり、体が左右にねじれやすくなります。おすすめなのは、右手は「1時」、左手は「11時」の方向へ入水することです。肩幅よりも少し広めの「Y字」を描くようなイメージを持つと良いでしょう。この位置に入水することで、体が安定し、次の水を捉える動作へスムーズに移行できます。
中心線を越えるクロスオーバーに注意
背泳ぎで最も避けたいのが、入水時に手が体の中心線(正中線)を越えて反対側に入ってしまう「クロスオーバー」です。例えば、右手が左肩の延長線上に入水してしまうと、体はバランスを取るために左側へ大きく振られてしまいます。これが繰り返されると、体はくねくねと蛇行を続けてしまいます。自分ではまっすぐ入れているつもりでも、内側に入りすぎているケースは非常に多いです。「少し外すぎるかな?」と思うくらい広めに入水する意識で、ちょうど良い位置になることが多いです。
小指から入水して水を捉える意識
スムーズに入水し、その後のキャッチ(水を捉える動作)を安定させるためには、「小指から入水する」ことが基本です。小指から水に入ることで、手のひらが外側を向き、無駄な水しぶきを立てずにスッと手を入れることができます。親指側から入水してしまうと、水面を叩いて抵抗が増えるだけでなく、肩に負担がかかり、フォームが崩れる原因になります。入水時は腕の力を抜き、小指が最初に水に触れる感覚を大切にしてください。これによって、直進するための推進力を効率よく得ることができます。
リカバリーの軌道は天井に向かって垂直に
入水だけでなく、腕を空中で戻す「リカバリー」の軌道も大切です。水から手が離れた後、天井に向かってまっすぐ垂直に腕を伸ばして運ぶようにしましょう。腕が横に大きく振れてしまうと、その遠心力で体が揺さぶられ、進行方向がズレてしまいます。天井に指先を突き刺すようなイメージで、高くまっすぐに腕を運ぶことがポイントです。肩の力を抜いて、リラックスした状態で腕を運ぶことができれば、体の軸がブレることなく、まっすぐな泳ぎを維持できます。
体の軸を安定させるローリングの技術

背泳ぎには、体を左右に回転させる「ローリング」という動作が必要ですが、これが過度になると蛇行の原因になります。正しいローリングは、あくまで「軸を保った回転」です。体をくねらせるのではなく、一本の棒になったつもりで回転する感覚を掴みましょう。
肩と腰を連動させてスムーズに回す
ローリングを行う際、肩だけ、あるいは腰だけを動かそうとすると体がねじれてしまいます。大切なのは、肩と腰をひとつのブロックと考え、同時に回すことです。右手を上げるときは右肩と右腰が水面から少し出て、逆に左肩と左腰は水中に沈むような形になります。この連動がスムーズに行くと、水の抵抗が減り、楽にまっすぐ進むことができます。体全体が丸太のように一直線に回転するイメージを持つと、軸が安定しやすくなります。
体幹を意識してブレない軸を作る
まっすぐ泳ぐためには、水の中に一本の芯が通っているような「体幹」の意識が不可欠です。お腹とお尻に軽く力を入れ、体をフラット(平ら)な状態に保ちましょう。腰が反りすぎたり、逆にお尻が落ちて「くの字」になったりすると、バランスが崩れて左右に流されやすくなります。陸上で背筋を伸ばして立っている時の姿勢を、そのまま水中で再現するような感覚です。この軸がしっかりしていれば、腕や足を動かしても体がブレにくくなります。
過度なローリングは逆効果になる
「ローリングをしっかりしなきゃ」と意識しすぎて、体を左右に大きく揺らしすぎるのは逆効果です。必要以上に体を傾けると、バランスを崩し、それを立て直そうとして蛇行してしまいます。ローリングの角度は、水面に対して45度程度が目安と言われています。横を向きすぎる必要はありません。あくまで、腕をスムーズに回し、効率よく水をかくための補助動作だと考えましょう。小さく鋭く回転することで、直進性とスピードの両方が手に入ります。
キックのバランスで直進性を高める方法

腕の動きに注目しがちですが、実はキック(バタ足)もまっすぐ泳ぐための重要な要素です。足が左右に開いていたり、リズムが悪かったりすると、それがブレーキや舵の役割となり、進路を乱してしまいます。安定したキックのポイントを押さえましょう。
水面近くで小刻みに蹴り上げる
背泳ぎのキックは、水を「蹴り上げる」動作が推進力になります。このとき、足が深い位置にあると、体全体が沈んでしまい、バランスが悪くなります。できるだけ水面に近い位置で、水面を沸騰させるように小刻みにキックを打ち続けましょう。大きなキックよりも、細かく速いキックの方が体の揺れを抑える効果があります。足の親指同士が軽く触れ合うくらいの幅で蹴るようにすると、足が外に開きすぎるのを防ぐことができます。
膝が水面から出ないように注意する
初心者に多いのが、キックの際に膝が水面から出てしまう「自転車こぎ」のような動作です。膝が水面から出ると、腰が沈み、大きな抵抗となってブレーキがかかります。また、膝が曲がりすぎると太ももが左右に振れやすくなり、蛇行の原因にもなります。キックは太ももの付け根から動かし、膝は水面下に収めた状態で、足の甲で水を押し上げるように意識してください。膝を伸ばしきるのではなく、ムチのようにしなやかに使うのがコツです。
足の指先まで伸ばして抵抗を減らす
足首に力が入って直角に曲がっていると、水に引っかかってしまい、スムーズに進めません。バレリーナのように足の指先までピンと伸ばし、足首を柔らかく使うことが大切です。足先が伸びていると、水の抵抗が最小限になり、まっすぐな姿勢を保ちやすくなります。ただし、力を入れすぎてふくらはぎがつらないように注意が必要です。リラックスした状態で足先を伸ばし、魚の尾びれのようにしなやかに動かすことを心がけましょう。
まっすぐ泳ぐための練習ドリルと矯正法

理屈がわかっても、いきなり完璧に泳ぐのは難しいものです。そこで、まっすぐ泳ぐ感覚を養うための効果的な練習メニュー(ドリル)をいくつか紹介します。これらをウォーミングアップなどに取り入れて、少しずつ体を慣らしていきましょう。
片手背泳ぎで左右のバランスを確認
片手は体側に添え(または頭の上に伸ばし)、もう片方の手だけで背泳ぎをする「片手ドリル」は非常に効果的です。片手だけで泳ぐことで、どちらかの手が入水したときに体が曲がりやすいか、自分の癖をチェックできます。使っていない方の肩や腰が沈みすぎないよう、体幹でバランスを取りながらまっすぐ進むことを意識してください。左右それぞれ行い、苦手な側があれば、そこを重点的に練習することで全体のバランスが整います。
ダブルアーム(両手同時)背泳ぎ
両手を同時に動かす「ダブルアーム背泳ぎ」は、入水位置の確認に最適です。両手を同時に「11時と1時」の方向に広げて入水し、左右対称に水をかくことで、体がまっすぐ進む感覚を養えます。交互に手を動かすとどうしてもローリングの反動で曲がってしまう人も、この練習なら左右の力が均等になるため、直進する感覚を掴みやすいでしょう。特に「クロスオーバー」の癖を治したい方におすすめの練習法です。
おでこにペットボトルを乗せるイメージ
頭が動いてしまう癖を治すためのユニークな練習法として、おでこの上に水の入ったペットボトル(またはビート板やカップ)を乗せて泳ぐバランスドリルがあります。実際に乗せて落とさないようにキックだけで進む練習をすると、いかに普段頭が動いているかを実感できるはずです。「おでこの上の物を落とさないように」という意識を持つだけで、顎の角度や頭の固定が自然と身につきます。遊び感覚で取り入れて、安定した頭の位置をマスターしましょう。
まとめ
背泳ぎでまっすぐ泳ぐコツは、頭の固定、適切な入水位置、そして安定した体幹にあります。まずは天井のラインを目印にして視線を定めてみましょう。そして、腕が内側に入りすぎないよう「Y字」の入水を意識し、小刻みなキックで体のバランスを保ちます。最初は誰でも蛇行してしまうものですが、今回紹介したドリルを試しながら、焦らず少しずつ修正していってください。まっすぐ泳げるようになれば、コースロープへの恐怖心が消え、背泳ぎの楽しさがもっと広がるはずです。
【記事のポイント】
・目線は天井の一点に固定し、頭を動かさない。
・腕の入水は「11時と1時」の方向へ。クロスオーバーに注意。
・体は一本の軸を意識し、過度なローリングは避ける。
・膝が水面に出ないよう、小刻みに蹴り上げる。
・片手ドリルやダブルアームでバランス感覚を養う。
背泳ぎはリラックスが一番の鍵です。力が入りすぎると体が沈み、バランスを崩しやすくなります。まずは深呼吸して、水に身を任せることから始めてみましょう。

