水泳を始めたばかりの方にとって、プールの壁際で行う「ターン」は一つの大きなハードルに感じられることが多いものです。泳ぎ自体はスムーズになっても、折り返しの動作で息が上がってしまったり、リズムが崩れてしまったりすることは珍しくありません。しかし、正しいフォームとコツさえ掴めば、ターンは休憩ポイントにもなり、次のストロークへの勢いを生み出すチャンスに変わります。
この記事では、「水泳 ターン」というキーワードを中心に、基本的な種類から各種目の具体的なやり方、そして失格にならないためのルールまでを詳しく解説していきます。壁を味方につけて、より快適に長く泳げるようになりましょう。
水泳のターンとは?基本の種類と特徴を知ろう

水泳におけるターンは、単に方向転換をするだけの動作ではありません。泳ぎの流れを断ち切ることなく、壁を強く蹴って加速するための重要なテクニックです。
初心者の方がまず知っておくべきなのは、ターンには大きく分けて2つの種類があるということです。それぞれの特徴を理解することで、自分がどの泳ぎでどのターンを使うべきかが明確になります。
クイックターン(前回り)の特徴とメリット
クイックターンは、壁の手前で前転(でんぐり返し)のような動作を行い、足で壁を蹴って折り返す方法です。主にクロールと背泳ぎで使用されます。このターンの最大の特徴は、手で壁に触れる必要がないため、スピードを落とさずに方向転換ができる点にあります。
一見すると難易度が高そうに見えますが、慣れてしまえば手をつくターンよりもスムーズに泳ぎ続けられるようになります。回転の勢いを利用するため、余計な筋力を使わずに済むというメリットもあります。特に長距離を泳ぐ場合、いちいち壁で止まって方向転換をするよりも、クイックターンを使ったほうが全体的な疲労を軽減できることが多いのです。
ただし、鼻に水が入らないように息を吐き続ける技術や、壁との距離感を掴む練習が必要になります。最初は怖がらずに水中で回る感覚を身につけることが大切です。
タッチターン(オープンターン)の特徴とメリット
タッチターン、あるいはオープンターンと呼ばれる方法は、その名の通り手で壁にタッチしてから方向転換を行う技術です。平泳ぎとバタフライでは、ルール上必ずこのターン(正確には両手でのタッチ)を行う必要があります。
このターンの大きなメリットは、動作の途中で顔が水面に出るため、しっかりと呼吸ができることです。クイックターンに比べて動作のスピードはやや劣りますが、確実性が高く、初心者の方でも安心して取り組むことができます。クロールや背泳ぎでも、クイックターンが苦手なうちは、このタッチターンを用いて練習を続けることが一般的です。
タッチターンは「壁に手をつく」「体を反転させる」「壁を蹴る」という3つのステップがはっきりしているため、一つひとつの動作を丁寧に確認しながら習得することができます。焦らず基本を身につけるには最適なターンと言えるでしょう。
4泳法ごとのターンの使い分け
水泳には4つの泳法(クロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ)がありますが、それぞれに適したターン、あるいはルールで決められたターンが存在します。これをごちゃ混ぜにしてしまうと、競技会では失格になったり、普段の練習でも効率が悪くなったりします。
まず、クロールと背泳ぎは基本的に「クイックターン」が推奨されます。競技ルール上は手をついて回ることも認められていますが、スピードを維持するためには回転動作が有利だからです。一方、平泳ぎとバタフライは「タッチターン」が必須です。特にこの2種目は「両手同時に壁にタッチしなければならない」という厳格なルールがあるため、片手だけでターンすると失格になってしまいます。
クイックターンを成功させる具体的な手順

クロールや背泳ぎをカッコよく泳ぐために、クイックターンの習得は欠かせません。回転動作に対する恐怖心をなくし、手順を分解して覚えることで、誰でもスムーズに回れるようになります。
ここでは、壁の手前から蹴り出しまでの一連の流れを、重要なポイントに絞って解説します。
回転を始めるタイミングと距離感
クイックターンで最も失敗しやすいのが、回転を始めるタイミングです。壁に近すぎると足が詰まってしまい、遠すぎると壁に足が届かないという事態に陥ります。適切な距離感をつかむための目印となるのが、プールの底に引かれている「T字ライン」です。
一般的に、壁から約2メートル手前でT字ラインが終わっています。自分の泳ぐスピードや身長にもよりますが、このT字ラインが見えたら「あとひとかき」、あるいは「そのまま気をつけの姿勢に入る」といった自分なりの基準を作ることが大切です。初心者のうちは、壁に激突するのが怖くて早めに回ってしまいがちですが、思っているよりも壁に近づいてから回るのがコツです。
慣れるまでは、壁に触れるギリギリまで泳いでみて、そこから逆算して「ここで回り始めればちょうど足がつく」というポイントを探ってみましょう。何度も繰り返すことで、感覚が体に染み込んでいきます。
小さく回るための体の丸め方
スムーズに回転するためには、体をできるだけ小さく丸める必要があります。体が伸びたままだと回転半径が大きくなり、回るのに時間がかかるうえに、水の抵抗を大きく受けてしまいます。イメージとしては、水中で小さなお団子になるような感覚です。
回転のきっかけを作るのは「顎」と「お腹」です。まず、顎をグッと引いておへそを覗き込むようにします。同時に、腹筋を使って一気に頭を水中に潜り込ませ、膝を胸に引き寄せます。このとき、手で水をかこうとするのではなく、手のひらを太もものあたりに置き、回転の勢いを殺さないようにサポートする程度に留めましょう。
よくある間違いは、頭を持ち上げてから勢いをつけて回ろうとすることです。これだと逆に沈んでしまい、回転力が生まれません。水面を滑るような姿勢から、瞬時に顎を引いて丸まることが、素早い回転への近道です。
壁を蹴る足の位置とストリームライン
回転した後、壁に足がついた瞬間の姿勢が、その後の推進力を決定づけます。理想的なのは、両足が揃った状態で壁にタッチし、膝が90度くらい曲がっている状態です。足をつく位置が高すぎると下に向かって進んでしまい、低すぎると水面に飛び出してしまいます。
壁を蹴る直前、上半身は流線型(ストリームライン)を作ります。両手を頭の後ろで重ね、耳を腕で挟むようにして真っ直ぐな姿勢をとりましょう。この姿勢が完成してから、力強く壁を蹴り出します。壁を蹴った勢いをそのまま維持するために、蹴り出した後はしばらく体を動かさず、「けのび」の状態で進むのがポイントです。
重要ポイント
壁を蹴るのと同時に体をひねって(スクリューして)うつ伏せや横向きの姿勢に戻ります。焦って壁につく前から体をひねろうとすると、回転軸がぶれて失敗の原因になります。
鼻から息を吐く重要性
クイックターンで多くの人が挫折する原因の一つが、「鼻に水が入って痛い」という問題です。水中での逆さまの状態、つまり回転中は、鼻の穴が上を向く瞬間があるため、何もしなければ水が鼻の奥まで入ってきてしまいます。これを防ぐ唯一の方法は、回転動作中ずっと鼻から息を吐き続けることです。
回転を始める瞬間に「んー」とハミングをするように鼻から息を出し始めます。強く吐きすぎると苦しくなってしまうので、水が入ってこない程度の強さで長く吐き続けるのがコツです。特に初心者のうちは、回転することに意識が集中してしまい、息を吐くのを忘れがちです。
陸上で前転をしながら鼻歌を歌う練習をしてみたり、プールの中で立ったまま頭を沈めて鼻から息を吐く練習をしたりして、無意識にできるようになるまでトレーニングしましょう。鼻がツーンとする痛みがなくなれば、ターンの練習はもっと楽しくなります。
タッチターン(オープンターン)の正しいやり方とポイント

平泳ぎやバタフライで必須となるタッチターンは、クロールなどでも使える汎用性の高い技術です。動作が見えやすいため簡単そうに思えますが、実はタイムロスを減らすための奥深いテクニックが詰まっています。
ここでは、効率よく素早く折り返すためのタッチターンの手順を詳しく見ていきましょう。
壁へのタッチと手をつく位置
タッチターンの始まりは、壁への確実なタッチです。平泳ぎとバタフライの場合は、必ず「両手同時」に壁に触れる必要があります。このとき、指先だけでなく手のひら全体で壁を捉えるようにすると安定します。また、タッチする高さは水面と同じか、ほんの少し上が理想的です。
クロールでタッチターンを行う場合は片手で構いませんが、壁を叩くようにタッチするのではなく、自分の体重を壁に預けるようにして衝撃を吸収します。この「吸収」の動作が、次の反転動作へのバネのような役割を果たします。肘を軽く曲げて壁に触れることで、体が壁に近づき、コンパクトにターンする準備が整います。
タッチの位置が深すぎると体が持ち上がりにくくなり、高すぎると肩に負担がかかります。水面付近を目安に、自然に手が届く位置を探してみてください。
素早い引きつけと体の反転動作
壁にタッチしたら、次は体を反転させます。ここで大切なのは、「壁を蹴って回る」のではなく、「膝をお腹に引きつけて回る」という意識です。タッチした手で壁を軽く押しつつ、両膝を一気に胸の方へ引き込みます。
体を小さく丸めることで水の抵抗が減り、クルッと素早く向きを変えることができます。このとき、壁についている手(片手)を支点にして体を回転させますが、視線は動かさずに壁を見続けるようにすると軸が安定します。体が横向きになり、足が壁の方向へ向かっていく感覚を掴みましょう。
この一連の動作を「引きつけ」と呼びますが、これが速ければ速いほどターンのスピードが上がります。陸上で体育座りの状態から素早く立ち上がるような瞬発力が求められる動きです。
呼吸のタイミングと目線の配り方
タッチターンは顔が水面に出るため呼吸ができますが、のんびりと息を吸っている時間はありません。壁にタッチして膝を引きつける一瞬の間に、短く鋭く息を吸い込みます。顔を上げすぎるとお尻が沈んでしまい、次の動作に移りにくくなるため、水面ギリギリで口を開けるのがポイントです。
目線は非常に重要です。タッチする瞬間は壁を見ますが、反転動作に入ったらすぐに進行方向(これから進むコースの先)を見るのではなく、壁についた手や壁の側面を見るように意識してください。顔を早く進行方向に向けすぎると、体が開きすぎてしまい、壁を真っ直ぐ蹴ることができません。
呼吸を終えて壁を蹴る直前には、再び頭を腕の間に入れてストリームラインを作ります。この「見る・吸う・潜る」のリズムを一定に保つことが、疲れないターンの秘訣です。
ターンでよくある失敗と改善策

練習を重ねてもなかなか上手くいかないときは、どこかに原因があります。多くのスイマーが直面する「あるある」な失敗例と、その解決策を知っておくことで、上達のスピードは格段に上がります。
ここでは、特によく見られる4つの失敗パターンについて、具体的な改善策をご紹介します。
回転中に体が斜めになってしまう
クイックターンで真っ直ぐ回れず、体が斜めになって隣のコースにはみ出しそうになることがあります。これは多くの場合、回転を始める瞬間に「ねじり」が入ってしまっていることが原因です。無意識のうちに、呼吸のために顔を横に向けたまま回ろうとしたり、片手だけで水をかいて回ろうとしたりしていませんか。
改善策としては、回転直前の両手の位置を確認しましょう。両手を太ももの横、あるいは膝のあたりに揃えてから回ると、軸が安定します。また、目線をおへそに集中させ、真下を向く意識を強く持つことも効果的です。鏡の前で、体が左右対称に動いているかチェックしてみるのも良いでしょう。
壁との距離が近すぎる・遠すぎる
壁との距離が合わないのは、ターンそのものの技術というより、アプローチ(壁への接近)の問題です。特に、壁の手前でスピードを緩めて調整してしまうと、勢いがなくなって失敗しやすくなります。
これを解決するには、普段の練習から「ストローク数(手を回す回数)」を数える癖をつけることです。「5メートルラインの旗を通過してから、何回手を回せば壁に着くか」を把握しておきましょう。例えば「旗から4回かいて壁」と決まっていれば、迷いなくターン動作に入れます。
メモ
疲労度によってストローク数は変わることがあるので、ウォーミングアップのときにその日の調子を確認しておくと安心です。
鼻に水が入ってツーンとする
前述した通り、鼻への水の侵入は息を吐くことで防げますが、それでも入ってしまうことがあります。これは、息を吐く力が弱かったり、回転の最中で一瞬息が止まってしまったりしていることが原因です。
改善策として、「んーパッ!」というリズムを意識してみてください。回転中は「んー」と鼻から強めに息を出し続け、水面に出た瞬間に「パッ」と口で息を吸います。また、上唇で鼻の穴を少し塞ぐようにして(鼻の下を伸ばすような顔をして)息を吐くと、物理的に水が入りにくくなるという裏技もあります。
壁を蹴った後に深く潜りすぎてしまう
ターン自体は成功したのに、壁を蹴った後にプールの底の方へ進んでしまい、浮上するのに時間がかかるケースです。これは、壁につく足の位置が高すぎることが主な原因です。足が高い位置にあると、体は下向きの角度で蹴り出すことになります。
これを直すには、回転したときに「足を壁の下の方につく」意識を持ちましょう。目安としては、水面から30〜40cm下のあたりです。また、蹴り出す瞬間の上半身の角度も重要です。少し指先を水面方向へ向けてストリームラインを作ることで、自然と適切な深さを進めるようになります。
タイムを縮めるための上級テクニックとルール

基本的なターンができるようになったら、次は「より速く」「より遠くへ」進むためのテクニックに挑戦してみましょう。また、競技会への出場を目指す方のために、絶対に知っておくべき失格ルールについても触れておきます。
ターンは単なる折り返し地点ではなく、タイムを縮めるための最大の武器になり得ます。
ターン前後のスピードを落とさないコツ
上手な人とそうでない人の決定的な差は、ターン前後のスピード変化にあります。初心者は壁の手前で「準備」をして減速してしまいますが、上級者は壁に向かって加速していきます。この違いを生むのは「アプローチの積極性」です。
壁の手前5メートルからは呼吸を我慢(ノーブレス)することで、姿勢が崩れずトップスピードのままターンに入ることができます。そして、壁を蹴った後の「けのび」の姿勢を極限まで細く、抵抗を少なく保つことで、壁を蹴ったエネルギーを逃さずに推進力に変えます。水中で進むスピードは泳いでいる時よりも速いため、この時間をいかに有効に使うかが重要です。
意外と知らないターンの失格ルール
一生懸命泳いだのに、ターンの違反で失格になるのは非常に悔しいものです。特に気をつけたいルールをいくつか挙げます。
まず、背泳ぎのターンです。以前は壁にタッチしてから回る必要がありましたが、現在は回転動作中のうつ伏せ状態が許可されています。ただし、「うつ伏せになってから、ひとかきもしないうちに回転動作に入らなければならない(キックはOK)」というルールや、「壁を蹴った後は仰向けでなければならない」というルールがあります。蹴り出した後に体がうつ伏せに近い角度になっていると失格を取られることがあります。
平泳ぎとバタフライでは、前述の通り「両手同時タッチ」が絶対です。タッチの瞬間に手が離れていたり、左右の手の高さが極端に違っていたりすると違反となります。タッチターンを行う際は、しっかりと両手で壁を叩く意識を持ちましょう。
ドルフィンキックを活用した浮き上がり
壁を蹴った後、水面に浮上するまでの間に「ドルフィンキック」を入れることで、さらに加速することができます。これを「バサロキック(背泳ぎ)」や「アンダーウォーターキック」と呼びます。
壁を蹴った直後の最もスピードが出ている瞬間は姿勢を維持し、少しスピードが落ちてきたタイミングでドルフィンキックを打ち始めます。これにより、スピードを再加速させながらスムーズに泳ぎへと繋げることができます。クロールや背泳ぎでは特に効果的ですが、苦しい状態でキックを打ち続けるには練習が必要です。最初は壁を蹴ってから2〜3回打つところから始めてみましょう。
まとめ:水泳のターンを自分のものにしよう
今回は「水泳 ターン」をテーマに、基本的な種類から実践的なコツ、上達のためのポイントまでを解説してきました。
記事のポイントを振り返ってみましょう。
- ターンの種類を理解する:クロール・背泳ぎは「クイックターン」、平泳ぎ・バタフライは「タッチターン」が基本です。
- クイックターンの鍵:回転前の距離感、小さく回るお団子の姿勢、そして鼻から息を吐き続けることが成功への近道です。
- タッチターンの鍵:両手(または片手)での確実なタッチと、素早い膝の引きつけ、そして目線の安定が大切です。
- 失敗から学ぶ:体が斜めになる、鼻に水が入るなどのミスには必ず原因と解決策があります。焦らず一つずつ修正しましょう。
- ルールを守る:種目ごとのタッチのルールや潜水距離を守ることで、競技としても正しい水泳が身につきます。
ターンがスムーズにできるようになると、長い距離を泳いでも疲れにくくなり、水泳そのものがもっと楽しくなります。最初は失敗して鼻に水が入ったり、壁に足が届かなかったりすることもあるでしょう。しかし、それは誰もが通る道です。
まずはプールに行った際、壁際でゆっくりと回転の練習をすることから始めてみてください。焦らず、楽しみながら、華麗なターンをマスターしましょう!



