「水泳選手は筋トレしない」は本当?メリットと注意点を解説

「水泳選手は筋トレしない」は本当?メリットと注意点を解説
「水泳選手は筋トレしない」は本当?メリットと注意点を解説
筋トレ・陸トレ・体作り

「水泳選手は筋トレしない方がいい」という噂を聞いたことはありませんか?実はこれ、半分正解で半分間違いなんです。

「筋肉をつけすぎると体が重くなって沈む」

「柔軟性がなくなって泳ぎが硬くなる」

といったイメージから、筋トレを避ける人も少なくありません。しかし、現在のトップスイマーたちを見てみると、陸上でのトレーニングもしっかりと取り入れていることがわかります。

この記事では、なぜ「筋トレしない」と言われるのかその理由を紐解きながら、水泳の上達に必要な「本当に使える筋肉」の鍛え方について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

「水泳選手は筋トレしない」は誤解?昔と今の常識の違い

かつて水泳界では「陸上で筋肉をつけると泳ぎの邪魔になる」と信じられていた時代がありました。しかし、スポーツ科学が発達した現在では、その常識は大きく変わってきています。ここでは、なぜそのような誤解が生まれたのか、そして現代の水泳選手が実際に行っているトレーニング事情について詳しく解説します。

「筋トレで体が重くなる」説の背景

一昔前までは、「筋肉は脂肪よりも重いため、筋トレをすると浮力が減って沈みやすくなる」という考え方が主流でした。確かに筋肉の密度は脂肪よりも高いのですが、水泳で重要なのは「ただ浮くこと」ではなく「前に進むこと」です。体が重くなることへの恐怖心から、陸上でのトレーニングを極端に避ける指導者も多かったのです。しかし、推進力を生み出すエンジンが小さければ、どんなに浮きやすくても速く泳ぐことはできません。このバランスに対する考え方が、時代とともに変化してきました。

今のトップ選手は「陸トレ」を重視している

現在のオリンピック選手や世界大会に出場するスイマーを見てみると、彼らは水中練習と同じくらい、陸上でのトレーニング(ドライランド)を重視しています。筋力トレーニングによって爆発的なパワーを生み出し、スタートやターンでの壁を蹴る強さ、そしてひとかきで進む距離を伸ばしているのです。彼らが目指しているのは、単に見かけの筋肉を大きくすることではなく、水中で最大限のパフォーマンスを発揮するための体づくりです。現代の水泳において、陸上トレーニングは切っても切り離せない存在となっています。

目指すべきは「使える筋肉」

「筋トレ」と聞くと、重いバーベルを持ち上げてムキムキになるイメージを持つかもしれません。しかし、水泳選手に必要なのは、ボディビルダーのような大きな筋肉ではなく、しなやかで持久力のある「使える筋肉」です。関節の動きを妨げない柔軟性と、水の抵抗に負けずに姿勢を保ち続ける強さが求められます。現代のトレーニング理論では、筋肉の量よりも質、そして動きの連動性が重視されています。水泳特有の動きに合わせた筋力強化こそが、今のスタンダードなのです。

初心者はまず「水慣れ」が最優先

トップ選手が筋トレをしているからといって、水泳を始めたばかりの人がいきなり激しい筋トレをする必要はありません。初心者の方にとって最も大切なのは、水の中でのバランス感覚や、力を抜いて浮く感覚を掴むことです。まだフォームが定まっていない段階で筋力に頼った泳ぎをしてしまうと、変な癖がついたり、すぐに疲れてしまったりする原因になります。「筋トレしない方がいい」という言葉は、初心者に対して「まずは水中でたくさん泳いで、水に慣れることが先決だよ」という意味で使われることも多いのです。

なぜ「筋トレしない方がいい」と言われることがあるのか

現在では筋トレの重要性が認められていますが、それでもなお「筋トレはしない方がいい」という意見が消えないのには理由があります。やり方を間違えると、実際に水泳のパフォーマンスを下げてしまうリスクがあるからです。ここでは、水泳においてマイナスになり得る筋トレのパターンについて解説します。

ボディビルダーのような筋肉との違い

水泳選手とボディビルダーの体つきを比べてみると、その違いは一目瞭然です。ボディビルは筋肉の大きさや美しさを競うため、特定の部位を極限まで肥大させます。一方、水泳では筋肉が大きすぎると、それが水の抵抗となりブレーキになってしまうことがあります。特に、肩回りや胸の筋肉が分厚すぎると、腕をスムーズに回す妨げになることも。あくまで「水を効率よくかくため」の筋肉が必要であり、見せるための筋肉をつける目的でのトレーニングは、水泳においては避けるべきとされています。

柔軟性が失われるリスク

筋トレを熱心に行うあまり、ストレッチをおろそかにすると、筋肉が硬くなり関節の可動域(動かせる範囲)が狭くなってしまいます。水泳、特にクロールやバタフライでは、肩関節の柔らかさが非常に重要です。肩が回らなくなると、無理な姿勢で水をかこうとしてフォームが崩れ、推進力が落ちるだけでなく、肩を痛める原因にもなります。「筋トレをすると体が硬くなる」というのは、ケアを怠った場合の結果論ですが、水泳選手にとっては致命的な問題になり得るため、この点が強く懸念されてきました。

水感(水をつかむ感覚)への影響

水泳には「水感(スイムセンス)」と呼ばれる、手のひらや足の裏で水を感じ取る繊細な感覚が必要です。激しい筋トレ直後は筋肉が疲労してパンパンに張った状態になり、この微妙な感覚が鈍ることがあります。「今日は筋トレをしたから、水がつかめない」と感じる選手も少なくありません。繊細なタッチを大切にするスイマーほど、筋肉の過度な疲労を嫌い、陸上トレーニングをセーブすることがあります。パワーと感覚のバランスをどう取るかが、非常に難しいポイントなのです。

水泳パフォーマンスを上げる「正しい筋トレ」の目的

では、水泳選手はどのような目的で筋トレを行うべきなのでしょうか。ただやみくもに体を鍛えるのではなく、水泳の動きに直結する明確な目的を持つことが大切です。ここでは、速く、楽に泳ぐために必要なトレーニングの狙いについて解説します。

推進力を生むパワーの強化

水泳のスピードを決める大きな要素は、手で水をかく力(プル)と、足で水を蹴る力(キック)です。これらを強化することで、ひとかきで進む距離が伸び、結果としてタイムが縮まります。特に短距離種目では、瞬発的なパワーが勝敗を分けます。水の中では自分の体重以上の負荷をかけることが難しいため、陸上で重りや自重を使ったトレーニングを行い、筋肉自体の出力レベルを上げておくことが、水中での強力な推進力につながるのです。

水の抵抗を減らす姿勢の維持

水泳で最も大切なのは、水の抵抗を最小限にする流線型の姿勢「ストリームライン」を保つことです。泳いでいる最中、特に疲れてくると腰が反ったり、お尻が落ちたりして抵抗が増えてしまいます。この姿勢をキープするために必要なのが、腹筋や背筋を中心とした体幹(コア)の強さです。手足がどれだけ強くても、土台となる体幹がグラグラしていては、その力が水に伝わりません。正しい筋トレは、後半になっても崩れない、真っ直ぐな姿勢を支えるために行われます。

怪我の予防とコンディショニング

水泳は関節を大きく動かす反復運動が多いため、特定の部位に負担がかかりやすいスポーツです。特に「水泳肩」と呼ばれる肩の痛みや、腰痛に悩む人は少なくありません。これらを防ぐために、肩の奥にある小さな筋肉(インナーマッスル)を鍛えて関節を安定させたり、腰回りの筋肉を強化して負担を分散させたりするトレーニングが欠かせません。パフォーマンスアップだけでなく、長く水泳を楽しむための体を作ることも、筋トレの重要な目的の一つです。

自宅でもできる!水泳選手におすすめの「陸上トレーニング」

ジムに通わなくても、自宅でできるトレーニングで十分に水泳に必要な筋肉を鍛えることができます。ここでは、特別な器具を使わずにできる、水泳選手におすすめのメニューを具体的に紹介します。日々の習慣に取り入れてみてください。

体幹を固める「プランク」

プランクは、水泳の基本姿勢であるストリームラインを安定させるために最適なトレーニングです。うつ伏せになり、肘とつま先だけで体を支え、頭からかかとまでを板のように一直線に保ちます。このとき、お尻が上がったり腰が反ったりしないように注意しましょう。まずは30秒キープから始め、徐々に時間を延ばしていきます。体幹が強くなると、水中で体がフラフラしなくなり、無駄な抵抗を減らしてスムーズに進めるようになります。

ストロークを強くする「斜め懸垂」

水をかく動作(プル)で使う広背筋(背中の筋肉)を鍛えるには、懸垂が効果的です。しかし、ぶら下がり健康器などが家にない場合は、机の下に潜り込んで天板の縁を持ち、体を斜めにした状態で引き上げる「斜め懸垂」でも代用できます。背中の筋肉を意識しながら、胸を机に近づけるように体を引き上げます。これにより、水をキャッチして後ろに押し出す力が強化され、力強いストロークが身につきます。

キック力を支える「スクワット」

壁を蹴るスタートやターン、そして力強いキックを生み出すためには、下半身の強さが欠かせません。スクワットは太ももやお尻の筋肉を全体的に鍛えられる万能な種目です。足は肩幅程度に開き、背筋を伸ばしたまま、椅子に座るようにお尻を落としていきます。膝がつま先より前に出過ぎないように注意してください。水泳では膝を深く曲げる場面は少ないため、深くしゃがみ込むよりも、浅めのスクワットを回数多く行うことで、持久力のあるキック力が養われます。

肩の怪我を防ぐ「チューブトレーニング」

ゴムチューブ(セラバンドなど)を使ったトレーニングは、肩のインナーマッスルを鍛えるのに最適です。柱などにチューブを固定し、肘を脇腹につけたまま、前腕だけを外側や内側に動かす動作(内旋・外旋)を行います。地味な動きですが、肩関節を安定させ、水泳肩の予防に非常に効果があります。また、チューブを柱の高い位置に固定し、クロールのストロークのように腕を引く動作を行えば、水中の動きに近い形で筋力を強化することも可能です。

初心者からマスターズまで!レベル別・筋トレの取り入れ方

水泳のレベルによって、筋トレの必要性や取り組むべき内容は変わってきます。自分の現在の泳力に合わせて、無理なくトレーニングを取り入れることが上達への近道です。ここでは、レベル別のアドバイスを紹介します。

【初心者】まずはプールで泳ぐ時間を増やす

水泳を始めたばかりの方や、まだ25メートルを泳ぎ切るのがやっとという方は、陸上での筋トレよりもプールで泳ぐ時間を優先しましょう。水の中での体重移動や呼吸のタイミング、リラックスして浮く感覚は、実際に泳ぐことでしか身につきません。この段階で無理に筋トレをすると、変な力が入りやすくなり、かえって泳ぎがぎこちなくなる可能性があります。まずは水泳を楽しむことから始め、泳ぐための基礎体力を水中で養ってください。

【中級者】伸び悩んだら体幹トレーニングを追加

ある程度長く泳げるようになり、タイムや距離への意識が出てきた中級者の方は、フォームの安定を目指して体幹トレーニングを取り入れてみましょう。泳いでいて「後半になると足が沈む」「腰が痛くなる」といった悩みが出てくるのは、体幹の筋力不足が原因であることが多いです。自宅でのプランクや腹筋運動を少しずつ始め、水中で姿勢をキープする感覚を養うことで、壁を突破するきっかけになります。

【上級者】ウエイトトレーニングでパワー強化

大会での記録更新を目指す上級者やマスターズスイマーの方は、より高い推進力を得るために、計画的なウエイトトレーニングや専門的な陸上トレーニングが必要です。自分の泳ぎの弱点を分析し、必要な部位を重点的に強化します。ただし、高負荷のトレーニングは怪我のリスクも伴うため、専門のトレーナーに指導を仰ぐか、十分な知識を持って行うことが大切です。水中練習と陸上トレーニングのバランスを調整し、疲労を管理することも実力のうちとなります。

まとめ:水泳選手は「筋トレしない」わけではなく「選び方」が重要

まとめ
まとめ

「水泳選手は筋トレしない」という言葉の裏には、ボディビルのような見た目重視の筋肉は不要であるという意味や、柔軟性を損なうことへの警戒が含まれていました。しかし実際には、トップ選手をはじめ多くのスイマーが、速く泳ぐために必要な「使える筋肉」を陸上で鍛えています。

大切なのは、今の自分のレベルや目的に合ったトレーニングを選ぶことです。初心者はまず水慣れを優先し、泳ぎに慣れてきたら体幹トレーニングや自重トレーニングを取り入れることで、効率よく上達することができます。「筋トレ=体が重くなる」という先入観を捨て、しなやかで強い体を作るためのツールとして、上手に筋トレを活用していきましょう。

 

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