「タイムを縮めるためにもっと背が伸びてほしい」「ライバルとの身長差が気になってきた」
水泳に打ち込むジュニアスイマーやその保護者の方なら、一度は「身長」について悩んだことがあるのではないでしょうか。
水泳において、手足の長さや身長の高さは確かに大きな武器になります。しかし、「身長は遺伝だから仕方ない」と諦めるのはまだ早いです。
実は、身長の伸びしろを決める要因には、遺伝だけでなく生活習慣や環境が大きく関わっていることをご存知でしょうか。
この記事では、成長期のジュニアスイマーが身長を伸ばすために実践すべき食事、睡眠、ケアの方法をわかりやすく解説します。
今日からできる具体的なアクションプランを見つけて、未来の可能性を広げていきましょう。
ジュニアスイマーと身長の深い関係とは?伸ばすために知っておくべき基礎知識

まずはじめに、なぜ水泳において身長が高いことが有利とされるのか、そして身長が伸びる仕組みについて正しく理解しましょう。
ただ漠然と「背が高くなりたい」と願うよりも、その理由とメカニズムを知ることで、日々の取り組みへのモチベーションが大きく変わります。
なぜ水泳では高身長が有利と言われるのか
競泳のトップ選手を見ると、多くの選手が高身長であることに気づくでしょう。
これには物理的な理由があります。
まず、身長が高いということは、それだけ手足(レバー)が長いことを意味します。
腕が長ければ、ひとかきでより遠くの水を捉えることができ、ストローク長(1回で進む距離)が伸びます。
また、スタートやターンにおいても、壁を蹴った後の到達点がゴールに近くなるため、単純な距離の面でも有利になります。
さらに、流体力学的にも、細長い物体の方が水の抵抗を受けにくいという特性があります。
身長が高く、体が流線型に近い選手は、同じパワーで泳いでも抵抗が少なく、効率よく進むことができるのです。
こうした「物理的なアドバンテージ」が、タイムに直結しやすいのが水泳という競技の特徴です。
「遺伝」と「環境」の割合を知ろう
「両親が小柄だから、自分も大きくならないだろう」と考えてしまう子供たちは少なくありません。
確かに、身長には遺伝的要素が強く影響します。
一般的に、身長が決まる要因の約80%は遺伝だと言われています。
しかし、残りの約20%は「環境要因」によって決まるという事実は、あまり知られていません。
この20%こそが、努力で変えられる「伸びしろ」なのです。
例えば、本来180cmまで伸びる遺伝的ポテンシャルを持っていたとしても、栄養不足や睡眠不足があれば、175cmで止まってしまうかもしれません。
逆に言えば、適切な食事、睡眠、運動の環境を整えることで、遺伝的な限界値ギリギリまで、あるいはそれ以上に可能性を引き出すことができるのです。
ジュニア期はこの「環境要因」を整える最初で最後のチャンスと言えます。
成長のスパート「最大発育期」を逃さない
身長には、人生で最も伸びる時期「最大発育期(成長スパート)」があります。
一般的に女子は11歳頃、男子は13歳頃にピークを迎えることが多いですが、これには個人差があります。
この時期に年間で10cm近く、あるいはそれ以上伸びることがあります。
大切なのは、この「伸びる時期」が来る前に、しっかりと身体の準備をしておくことと、スパート期間中に最大限のサポートを行うことです。
もしこの重要な時期に、激しすぎる練習でエネルギー不足になったり、怪我をしてしまったりすると、せっかくの成長の波に乗り切れません。
自分の成長曲線を記録し、「今が伸びる時期だ!」と気づけるようにしておくことが、ジュニアスイマーにとって非常に重要な戦略となります。
骨が伸びる仕組み「骨端線」とは
身長が伸びるというのは、具体的には「骨が伸びる」ということです。
成長期の子供の骨の端には、「骨端線(こったんせん)」と呼ばれる軟骨の層があります。
レントゲンで見ると線の用に見えるためこう呼ばれますが、成長線とも言われます。
この軟骨部分で細胞が増殖し、それが硬い骨に置き換わっていくことで、骨が長くなり、身長が伸びます。
大人になるとこの骨端線は閉じて硬い骨になり、それ以上身長は伸びなくなります。
つまり、骨端線が残っている間しか、身長を伸ばすことはできません。
水泳選手として体を大きくしたいのであれば、この骨端線が閉じずに活動している間に、いかに良質な栄養と刺激を与えるかが勝負の鍵となります。
身体を作る材料をチャージ!身長アップに欠かせない「食事と栄養」

「寝る子は育つ」と言いますが、それ以前に「食べる子は育つ」のが真実です。
特に水泳は、他のスポーツに比べても消費カロリーが非常に高い競技です。
ここでは、ジュニアスイマー特有の栄養問題と、身長を伸ばすための食事戦略について詳しく解説します。
水泳選手が陥りやすい「エネルギー不足」の罠
身長を伸ばすために最も重要なこと、それは「消費エネルギーを上回る摂取エネルギーを確保すること」です。
しかし、ここがジュニアスイマーにとって最大の難関となります。
水中での運動は、水の抵抗や体温調節のために、陸上競技よりも多くのエネルギーを消費します。
毎日数千メートル泳ぐジュニア選手の場合、消費カロリーは大人顔負けの数値になることも珍しくありません。
もし、「普通の子供と同じ量」しか食べていなければ、練習でエネルギーを使い果たし、体を大きくするためのエネルギーが枯渇してしまいます。
練習を頑張れば頑張るほど、身長を伸ばすためのエネルギーが足りなくなるというジレンマに陥りやすいのです。
「たくさん食べているつもりなのに大きくならない」という場合、単純に運動量に対して食べる量が追いついていない「エネルギー不足」の可能性が高いです。
身長を伸ばすためには、練習で消費した分に「プラスアルファ」して、成長分のエネルギーを上乗せして食べる必要があります。
骨の成長を支える「タンパク質」の重要性
「骨を強くするにはカルシウム」というイメージが強いですが、実は骨を伸ばすために最も重要なのは「タンパク質」です。
骨の構造は、鉄筋コンクリートの建物に例えられます。
コンクリートの部分がカルシウムなどのミネラルで、建物の骨組みとなる鉄筋の部分はコラーゲン(タンパク質の一種)でできています。
まずタンパク質によって骨の土台(骨基質)が作られ、そこにカルシウムが付着することで、強く長い骨が形成されます。
また、タンパク質は「成長ホルモン」の材料でもあります。
肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など、毎食必ずタンパク質源を取り入れることが必須です。
特に練習直後は筋肉の修復にも大量のタンパク質が使われるため、食事で不足すると骨の成長に回す分がなくなってしまいます。
カルシウムだけじゃない!吸収を助けるビタミンDとマグネシウム
骨の材料としてカルシウムが不可欠なのは間違いありませんが、カルシウム単体では体になかなか吸収されません。
ここで重要な役割を果たすのが「ビタミンD」と「マグネシウム」です。
ビタミンDは、腸管からのカルシウム吸収を促進する働きがあります。
ビタミンDは日光(紫外線)を浴びることで体内で生成されますが、ここに屋内プールのスイマー特有の課題があります。
屋内プールでの練習が中心の選手は、屋外競技の選手に比べて日光を浴びる時間が短くなりがちです。
そのため、食事から意識的にビタミンD(鮭、きのこ類など)を摂取する必要があります。
また、マグネシウムは骨の形成を助け、カルシウムとのバランスを調整します。
海藻類やナッツ類に含まれるマグネシウムも合わせて摂ることで、効率よく骨を作ることができます。
食事のタイミング:練習後と補食の活用
ジュニアスイマーにとって、何を食べるかと同じくらい「いつ食べるか」が重要です。
学校給食と朝晩の食事だけでは、激しい練習量に必要なカロリーと栄養を補いきれないことが多々あります。
そこで活用したいのが「補食(ほしょく)」です。
練習前の小さなおにぎりやバナナは、練習中のエネルギー切れを防ぎ、筋肉の分解(カタボリック)を抑制します。
そして最も大切なのが練習直後の栄養補給です。
練習が終わってから帰宅して夕食を食べるまでに時間が空く場合、その間に体は飢餓状態になり、成長に必要な材料が不足します。
着替えたらすぐに飲める牛乳やプロテイン、おにぎりなどを準備し、「練習が終わったら即チャージ」を習慣にしましょう。
こまめに栄養を入れることで、常に体が「成長モード」を維持できるようにすることが大切です。
成長ホルモンをドバッと出す!「睡眠」の質を高めるテクニック

栄養が「材料」だとすれば、睡眠は実際に体を組み立てる「工事の時間」です。
「寝る子は育つ」は科学的にも正しい事実です。
しかし、ただ長く寝ればいいというわけではありません。スイマーに必要な睡眠の質について掘り下げていきましょう。
「ゴールデンタイム」の真実と成長ホルモン
かつては「夜10時から深夜2時が成長ホルモンのゴールデンタイム」と言われていましたが、現在では少し解釈が変わっています。
成長ホルモンが最も多く分泌されるのは、時刻に関係なく「入眠後の最初の深い眠り(ノンレム睡眠)」の時です。
眠りについてから約90分〜120分の間に訪れる最も深い睡眠時に、1日の成長ホルモン分泌量の大部分が放出されます。
つまり、何時に寝るか以上に、「寝入りばなに、いかに深くぐっすり眠れるか」が勝負なのです。
もちろん、早く寝るに越したことはありませんが、塾や練習で遅くなる場合でも、「最初の90分の質」を高める工夫をすることで、成長ホルモンの恩恵を受けることができます。
深部体温をコントロールして入眠をスムーズに
深い睡眠に入るためには、体の深部体温(体の中心の温度)がスムーズに下がることが必要です。
人は体温が下がる時に強い眠気を感じるようにできています。
効果的なのは、就寝の90分ほど前に入浴を済ませることです。
湯船に浸かって一時的に体温を上げると、その後反動で体温が急激に下がろうとします。
このタイミングで布団に入ると、ストンと深い眠りに入りやすくなります。
逆に、寝る直前の熱いお風呂や激しい運動は、体温が高すぎて目が覚めてしまう原因になるので避けましょう。
水泳の練習で興奮した神経を落ち着かせ、リラックスモードに切り替える時間を確保することが大切です。
睡眠の質を下げる「ブルーライト」に注意
現代のジュニアスイマーにとって最大の敵とも言えるのが、スマートフォンやゲーム機から発せられる「ブルーライト」です。
ブルーライトは、睡眠を促すホルモンである「メラトニン」の分泌を抑制してしまいます。
夜遅くまでスマホを見ていると、脳が「まだ昼間だ」と勘違いし、メラトニンが出にくくなります。
その結果、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりして、せっかくの成長ホルモンの分泌チャンスを逃してしまいます。
「布団に入ったらスマホは見ない」「寝る1時間前からは画面を見ない」というルールを徹底するだけでも、身長の伸びにはプラスに働きます。
身長を伸ばすためのトレーニングの一環として、デジタルデトックスを取り入れてみてください。
ハードな練習が逆効果に?水泳と成長阻害の「嘘と本当」

「筋トレをすると背が伸びなくなる」「水泳をやりすぎると伸びない」といった噂を聞いたことはありませんか?
真剣に競技に取り組むほど、こうした情報は不安の種になります。
ここでは、運動と成長に関する正しい知識を整理し、何が本当に危険なのかを解説します。
適度な運動は成長を促すが、過度は禁物
基本的に、水泳を含む適度な運動は骨を刺激し、成長ホルモンの分泌を促すため、身長を伸ばすのにプラスに働きます。
特に水泳は、重力による関節への負担が少なく、全身をくまなく使うため、成長期の体には非常に良いスポーツです。
しかし、何事も「やりすぎ」は逆効果になります。
オーバートレーニング(過度な練習)により、体が慢性的な疲労状態になると、体は「成長」よりも「生命維持」や「修復」を優先します。
また、過度なストレスがかかると、成長ホルモンの働きを阻害するコルチゾールというホルモンが分泌されます。
「練習後にいつもぐったりして食欲がない」「常にどこかが痛い」といった状態は、体が悲鳴を上げているサインかもしれません。
休養もトレーニングの一部と捉え、メリハリのある練習計画が必要です。
「筋トレで背が止まる」は本当か?
「筋トレをすると背が伸びなくなる」という説は、医学的には根拠が薄いと言われています。
適切な方法で行う筋力トレーニングは、むしろ成長ホルモンの分泌を促し、骨を強くします。
ただし、注意が必要なのは「重すぎる負荷」と「フォームの崩れ」です。
成長期の未発達な骨や関節に対し、大人のような高重量のバーベルを担ぐようなトレーニングを行うと、骨端線や軟骨を傷つけるリスクがあります。
骨端線が損傷すると、最悪の場合、骨の成長が止まったり変形したりする可能性があります。
ジュニアスイマーが行うべきは、自重(自分の体重)を使ったトレーニングや、体幹を鍛える運動が中心です。
正しいフォームで行えば、筋トレが身長の伸びを止めることはありませんので、指導者の管理下で適切に行いましょう。
水泳選手に多い「猫背」と身長の関係
水泳選手、特に平泳ぎやバタフライの選手などは、大胸筋や広背筋が発達しやすく、肩が前に入り込む「巻き肩」や「猫背」になりやすい傾向があります。
猫背は、見た目の身長を低く見せるだけでなく、実際の成長にも悪影響を及ぼす可能性があります。
背骨が曲がった状態が続くと、椎間板への負担が偏り、脊柱の健全な成長を妨げる恐れがあるのです。
また、姿勢が悪いと呼吸が浅くなり、酸素摂取量が減って睡眠の質が下がることもあります。
水泳のパフォーマンス向上のためにも、身長のためにも、陸上での姿勢改善は必須課題です。
練習後には、縮こまった胸の筋肉を開くストレッチを念入りに行いましょう。
寝る前や練習後に取り入れたい!成長を促す「ストレッチとケア」

身長を伸ばすためには、骨が伸びやすい環境を整えてあげることが大切です。
筋肉と骨は密接に関係しており、筋肉がガチガチに固まっていると、骨の成長を物理的に邪魔してしまうと言われています。
ここでは、成長をサポートするためのケア方法を紹介します。
筋肉を緩めて骨の抵抗を減らす
骨は筋肉に覆われています。
もし、周りの筋肉が硬く縮こまっていたら、骨が伸びようとする力に対してブレーキをかけてしまうことになります。
イメージとしては、きつい服を着ていると体が動かしにくいのと同じです。
特に成長スパートの時期は、骨の伸びるスピードに筋肉の伸びが追いつかず、体が硬くなりやすい時期でもあります(これを「成長期による柔軟性低下」と呼びます)。
この時期にこそ、入念なストレッチが必要です。
特に股関節周り、太もも、背中など、大きな骨の周りの筋肉を柔らかく保つことで、骨がスムーズに伸びるスペースを作ってあげましょう。
お風呂上がりの体が温まっている時に、痛みを感じない程度の心地よいストレッチを習慣にしてください。
「縦」の刺激を与えるジャンプ運動
水泳は浮力があるため、骨に対して「縦方向の重力刺激」がかかりにくいスポーツです。
実は、骨は適度な縦方向の衝撃を受けることで、骨芽細胞が活性化し、成長が促されるという性質があります。
バスケットボールやバレーボールの選手に背が高い人が多いのは、ジャンプ動作が多いことも一因とされています。
水泳選手も、陸上トレーニングの一環として「縄跳び」や軽い「ジャンプ運動」を取り入れるのがおすすめです。
骨端線に適度な刺激を与えることで、骨の成長スイッチを入れる効果が期待できます。
ただし、コンクリートの上などで激しくやりすぎると膝や腰を痛めるので、クッション性のあるシューズやマットの上で行いましょう。
親ができるマッサージとコミュニケーション
日々の激しい練習で疲労した筋肉をほぐすために、保護者の方がマッサージをしてあげるのも非常に効果的です。
プロのような技術は必要ありません。ふくらはぎや背中を優しくさすったり、軽く揉んであげたりするだけで十分です。
マッサージによる血行促進効果はもちろんですが、親子のスキンシップによるリラックス効果(オキシトシンの分泌)が、ストレスを軽減し、良質な睡眠へと導きます。
「今日は練習どうだった?」と会話しながらケアすることで、メンタル面のサポートにもなり、成長ホルモンが出やすい心身の状態を作ることができます。
まとめ:ジュニアスイマーの身長を伸ばすために今日からできること
水泳選手にとって身長は強力な武器ですが、それは遺伝だけで決まるものではありません。
「食事」「睡眠」「運動・ケア」の3つの生活習慣を見直すことで、遺伝的なポテンシャルを最大限に引き出すことが可能です。
【身長を伸ばすためのチェックリスト】
□ 消費カロリーを上回る食事量を確保できているか?(練習後の補食は必須!)
□ タンパク質・カルシウム・ビタミンD・マグネシウムをバランスよく摂れているか?
□ 寝る90分前に入浴し、スマホをやめて深い睡眠に入れているか?
□ 練習のやりすぎで慢性的な疲労状態になっていないか?
□ ストレッチで筋肉を柔らかく保ち、骨が伸びやすい環境を作れているか?
身長を伸ばす取り組みは、一朝一夕で結果が出るものではありません。
しかし、これらは全て「水泳のパフォーマンスアップ」や「怪我の予防」にも直結することばかりです。
たとえ身長が急激に伸びなかったとしても、ここで培った強い体と正しい生活習慣は、必ずスイマーとしての大きな財産になります。
焦らず、信じて、日々の生活を丁寧に積み重ねていきましょう。
その毎日の積み重ねが、数年後の大きな成長、そしてベストタイム更新へと繋がっていくはずです。



