横泳ぎの基本から練習法まで!長く楽に泳ぐためのコツ

横泳ぎの基本から練習法まで!長く楽に泳ぐためのコツ
横泳ぎの基本から練習法まで!長く楽に泳ぐためのコツ
泳ぎ方のコツ・技術

みなさんは「横泳ぎ」という泳ぎ方をご存知でしょうか。学校の体育の授業で習うクロールや平泳ぎとは違い、少し馴染みが薄いかもしれません。しかし、横泳ぎは日本古来の泳法にルーツを持ち、非常に実用的で奥深い泳ぎ方なのです。

体力をあまり使わずに長い距離を泳ぎ続けることができるため、万が一の水難事故の際に命を守る「サバイバル・スイミング」としても注目されています。「速く泳ぐこと」に疲れてしまった方や、もっと楽に水と親しみたい方にとって、横泳ぎは新しい選択肢となるでしょう。この記事では、横泳ぎの魅力や具体的な泳ぎ方、練習のステップをわかりやすく解説します。

横泳ぎとはどのような泳ぎ方なのか?その特徴とルーツ

横泳ぎとは、その名の通り「体を横に向けた状態で泳ぐ」泳法のことを指します。クロールや平泳ぎのように左右対称の動きをするのではなく、左右の手足がそれぞれ異なる動きをするのが最大の特徴です。この独特なフォームにより、体力の消耗を抑えながら、ゆったりと長く泳ぎ続けることが可能になります。

日本古来の「日本泳法」との深い関係

実は、横泳ぎは日本の歴史と深く結びついています。古くは侍たちが甲冑(かっちゅう)を身に着けたまま、川や海を渡るために用いた「日本泳法(古式泳法)」の中に、横泳ぎの原型があります。当時は、重い装備をつけていても沈まず、かつ周囲の状況を確認しながら泳ぐ必要がありました。そのため、顔を水面から出し、体力を温存できる横向きの姿勢が発展したのです。

日本泳法での呼び名
日本泳法では、流派によって呼び名が異なりますが、「のし泳ぎ」や「一重伸(ひとえのし)」と呼ばれる泳ぎ方が、現代の横泳ぎに相当します。武術としての側面も持っているため、非常に理にかなった身体操作が含まれています。

現代における横泳ぎの位置づけ

現在の競泳種目(オリンピックなどで見る4泳法)には横泳ぎは含まれていません。そのため、スイミングスクールで最初に習うことは少なくなりました。しかし、その実用性の高さから、ライフセービング(人命救助)の現場や、自衛隊の水泳訓練などでは必須の技術として教えられています。速さを競うのではなく、「安全に、確実に移動する」ための泳ぎとして、今改めてその価値が見直されているのです。

他の泳ぎ方との決定的な違い

クロールや平泳ぎと決定的に違うのは、「呼吸の楽さ」と「視界の広さ」です。クロールでは息継ぎの瞬間に顔を上げますが、横泳ぎでは基本的に顔の半分、あるいは片方の目と鼻と口が常に水面上に出ています。そのため、息継ぎのタイミングを細かく気にする必要がなく、初心者でも呼吸によるパニックを起こしにくいという利点があります。また、常に横方向や前方の景色が見えているため、海などで泳ぐ際も方向を見失いにくいのです。

横泳ぎを覚えることで得られる3つの大きなメリット

「なぜ今、横泳ぎを覚える必要があるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、横泳ぎを習得することは、単に泳ぎのバリエーションが増えるだけでなく、安全面や楽しみ方の面で非常に大きなメリットがあります。

1. 驚くほど疲れにくい「省エネ」な泳ぎ

横泳ぎ最大の特徴は、水の抵抗が少ない姿勢と、「滑る」時間を長く取る独特のリズムにあります。常に体を一直線に近い状態(ストリームライン)に保ち、キックとプル(手のかき)の後に「伸びる時間」を設けます。この「伸び」の間は力を抜いて惰性で進むため、筋肉を休ませることができます。「泳ぐ」というよりは「水の中を歩く」「水面を滑る」ような感覚に近く、長時間泳いでも心拍数が上がりにくいのです。

2. 顔を上げているので呼吸が楽で安心

水泳が苦手な人の多くは、「息継ぎ」に壁を感じています。水中で息を止め、タイミングよく顔を上げて息を吸う動作は、慣れないうちは恐怖心を伴います。しかし横泳ぎなら、最初から顔を横に向けて水面に出しておけるため、いつでも好きな時に呼吸ができます。波が高い海などでは多少のコツが必要ですが、穏やかなプールであれば、散歩をしているようなリラックスした状態で呼吸を続けられます。

3. いざという時の「自分の命を守る」技術になる

海や川で足がつかない深さの場所に流されてしまった時、最も重要なのは「パニックにならず、体力を温存して救助を待つ」あるいは「岸までゆっくり戻る」ことです。クロールで全速力で泳げば数分で力尽きてしまいますが、横泳ぎなら何十分、時には数時間も浮き続けることが可能になります。また、着衣状態(服を着たまま)で水に落ちた場合、クロールのように腕を高く上げる動作は服の重みで困難になりますが、水中での動作が中心の横泳ぎなら、服を着たままでも比較的容易に泳ぐことができます。

メモ:レスキューにおける活用
ライフセーバーが溺れている人を救助する際、片手で相手を抱え、もう片方の手と足(横泳ぎのキック)を使って泳ぐ「キャリー」という技術を使います。横泳ぎは、自分だけでなく他人の命を救うための基礎技術でもあるのです。

横泳ぎの具体的な泳ぎ方と美しいフォームのポイント

それでは、実際に横泳ぎはどうやって泳ぐのでしょうか。ここでは、体の向き、腕の動き、足の動き、そしてタイミングの4つの要素に分けて、詳しく解説していきます。

基本姿勢:水面に対して体を垂直に立てるイメージ

まずは基本の姿勢です。水面に対して体が「横向き」になるように浮かびます。ベッドで横向きに寝ている姿を想像してください。下側になる腕(進行方向側の腕)は、頭の先にまっすぐ伸ばします。上側の腕は体側に添えます。この時、体全体が一本の棒になるように意識し、腰が沈まないように注意しましょう。顔は横を向き、下側の耳を水につけ、口と鼻を水面から出します。

腕の動き:左右非対称の「合わせ」動作

腕の動きは、左右で役割が異なります。

  • 下側の手(リーディングアーム): まっすぐ前に伸ばした状態から、水を自分の方へ引き寄せます(プル)。かき終わる位置は胸の前あたりです。
  • 上側の手(トレーリングアーム): 体側に添えた状態から、お腹や胸を撫でるようにして手を前に運びます(リカバリー)。そして、下の手とすれ違うようにして、水を足元の方へ押し出します(プッシュ)。

ポイントは、胸の前で両手が一度近づく瞬間を作ることです。下の手が水をかいて胸の前に来た時、上の手も胸の前に移動しています。そこから、下の手は再び前へ、上の手は後ろへ、と互い違いに動きます。まるで弓を引くような、あるいは忍者が手裏剣を投げるような動作とも言われます。

足の動き:推進力の要「あおり足(シザースキック)」

横泳ぎで最も重要で、かつ難しいのがこの「あおり足」です。英語では「シザースキック(ハサミのようなキック)」と呼ばれます。

あおり足の手順

  1. 両足を揃えて伸ばした状態からスタート。
  2. 膝をゆっくりと曲げながら引きつけます。
  3. 上の足を体のへ、下の足を体の後ろへ大きく開きます(ハサミを開く動作)。
  4. 開いた両足を、勢いよく挟み込むように閉じます(ハサミを閉じる動作)。この「挟む力」で水を押し出し、前に進みます。

平泳ぎのキックとは全く異なる動きですので注意が必要です。上の足の裏で水を後ろに蹴り、下の足の甲で水を後ろに押すイメージを持つと良いでしょう。前後に開く幅が大きいほど、強い推進力が生まれます。

タイミングとリズム:「伸び」を作るコンビネーション

手と足の動きをバラバラに行うとスムーズに進みません。正しいリズムは以下の通りです。

  1. 1. 引きつけ: 下の手で水をかき始めると同時に、両手と両足を胸・お腹のあたりに引き寄せます(体が縮こまる状態)。
  2. 2. キックとプッシュ: 足を前後に開き(あおり足の準備)、勢いよく挟み込むと同時に、上の手で水を後ろへ押し、下の手を前へ伸ばします。
  3. 3. グライド(伸び): 手足が完全に伸びきった状態で、2〜3秒間、何もしないで滑る時間を作ります。

この「3. グライド」が横泳ぎの真骨頂です。ここで焦って次の動作に移らず、スーッと進む感覚を楽しむことが、楽に長く泳ぐコツです。

上達への近道となる練習方法とステップ

いきなり水中で完璧な横泳ぎをしようとすると、手足の動きがこんがらがってしまいがちです。段階を踏んで練習することで、体で動きを覚えることができます。

ステップ1:陸上でのシミュレーション(陸トレ)

まずはプールに入る前に、床やマットの上で横向きに寝転がり、動きを確認しましょう。特に「あおり足」は陸上で理解しておくことが重要です。

横向きに寝て、上の足を前に出し、下の足を後ろに引く。そこから両足をバチンと閉じる。この感覚を何度も繰り返してください。手と足のタイミング(縮こまってから、一気に伸ばす)も、陸上でリズムを取る練習をしておくと水中での混乱を防げます。

ステップ2:ビート板を使ったキック練習

水中での最初の練習は、足の動きだけに集中します。ビート板を抱えるように持ち、体を横に向けます。下の手でビート板の先端を持ち、上の手でビート板の上を押さえます。この状態で、あおり足(シザースキック)だけを練習します。

「膝を引きつける時はゆっくり」「蹴る時は素早く」「蹴った後は足を揃えて伸びる」というメリハリを意識しましょう。足が開いた時に体が仰向けやうつ伏せにならないよう、真横をキープすることが大切です。

ステップ3:手だけのプル練習(足にブイを挟む)

次に、足の間にプルブイ(足に挟む浮き具)を挟み、足を使わずに浮いた状態で手の動きを練習します。

下の手で水をかき込み、胸の前で手と手がすれ違い、上の手で水を後ろへ押す。この一連の流れを確認します。特に、上の手がしっかりと水を捉えて後ろへ押し出す感覚(フィニッシュ)をつかむと、推進力がグンと増します。

ステップ4:コンビネーションスイム

手と足、それぞれのパーツ練習ができたら、いよいよ組み合わせて泳ぎます。最初は形が崩れても構いません。「縮む(準備)→伸ばす(キック&プッシュ)→滑る(休み)」のリズムを口ずさみながら泳いでみましょう。もし体が沈んでしまう場合は、キックのタイミングが合っていないか、頭を上げすぎている可能性があります。リラックスして、水に身を委ねるように練習を重ねてください。

よくある間違いと改善するためのヒント

横泳ぎの練習中に陥りやすい失敗や、うまく進まない原因には共通点があります。ここでは代表的な間違いとその修正方法を紹介します。

足が沈んでしまう場合

原因: 頭の位置が高すぎる、または呼吸をしようとして顔を上げすぎていることが原因です。人間の体は、頭が上がると足が下がるシーソーのような構造になっています。
改善策: 下側の耳をしっかりと水につけましょう。「枕に頭を乗せて寝ている」ような感覚まで頭を寝かせると、自然と足が浮いてきます。

平泳ぎのキックになってしまう

原因: これまで習ってきた平泳ぎの癖が抜けず、無意識に両足を開いて閉じる「カエル足(ウェッジキック)」になってしまうことがあります。
改善策: 足を「左右」に開くのではなく、「前後(歩く方向)」に開くことを強く意識してください。陸上練習に戻り、ハサミの動きを再確認しましょう。上の足の指先が見える位置(体の前)に来ているかを目で見て確認するのも有効です。

進まない・スピードが出ない

原因: キックの後に足を揃えるのが甘い、またはグライド(伸び)の時間が短すぎることが考えられます。
改善策: キックの最後は、両足の太ももから足首までがピタリとくっつくまで意識して閉じましょう。そして、蹴った直後にすぐに次の動作に入らず、「いち、に、さん」と数えるくらい待ってみてください。この「待ち時間」こそが、最も進んでいる時間です。

左右どちらを向くのが正解?
基本的には「自分がやりやすい向き」で構いません。利き手や利き足の関係で、右を下にした方が泳ぎやすい人もいれば、左が楽な人もいます。慣れてきたら、疲れを分散させるために左右両方で泳げるように練習することをおすすめします。

まとめ:横泳ぎをマスターして安全で楽しい水泳ライフを

まとめ
まとめ

ここまで、横泳ぎの魅力や泳ぎ方のポイントについて解説してきました。最後に、今回の記事の要点を振り返ります。

  • 横泳ぎは「省エネ」泳法: 体力を消耗せず、長く楽に泳ぎ続けることができるため、生涯スポーツやリラクゼーションに最適です。
  • 日本泳法がルーツ: 武術としての背景を持ち、顔を上げて泳ぐため呼吸が楽で、周囲の状況把握もしやすいのが特徴です。
  • あおり足(シザースキック)が鍵: 足を前後に開いて挟み込む独特のキックが推進力を生みます。平泳ぎのキックとの違いを理解しましょう。
  • リズムは「縮む・伸ばす・滑る」: 常に動き続けるのではなく、キックの後の「伸び(グライド)」の時間を作ることで、水の中を滑るように進みます。
  • サバイバルスキルとしての価値: 服を着た状態や、万が一の水難事故の際にも、命を守るための大きな武器になります。

横泳ぎは、決して「古臭い泳ぎ」ではありません。むしろ、競泳的な速さとは別のベクトルで、水泳の奥深さや楽しさを教えてくれる素晴らしい泳法です。プールでゆったりと優雅に泳ぐ横泳ぎは、見ている人にも余裕を感じさせます。ぜひ、次回のプールでの練習に取り入れてみてください。水との付き合い方が、きっとより豊かで安心なものになるはずです。

タイトルとURLをコピーしました