スイミングの選手コースに必要な素質とは?選ばれる子の特徴を徹底解説

スイミングの選手コースに必要な素質とは?選ばれる子の特徴を徹底解説
スイミングの選手コースに必要な素質とは?選ばれる子の特徴を徹底解説
子供・スクール・選手育成

「お子さんを選手コースに入れてみませんか?」スイミングスクールのコーチからそんな言葉をかけられたとき、嬉しさと同時に不安を感じる保護者の方は少なくありません。選手コースといえば、厳しい練習、毎日のような通学、そして大会への出場など、これまでとは全く違う生活が待っています。

「うちの子に本当に素質があるのだろうか」「厳しい練習についていけるのだろうか」と悩むのは当然のことです。

この記事では、スイミングの選手コースで求められる身体的・精神的な素質や、選ばれる基準、そして保護者に求められるサポートについて、詳しくわかりやすく解説していきます。

スイミング選手コースで求められる素質【身体能力編】

競泳は、水の抵抗といかに戦い、効率よく前に進むかを競うスポーツです。そのため、陸上のスポーツとは異なる独特の身体的特徴が「素質」として有利に働くことがあります。もちろん、これら全てが最初から備わっている必要はありませんが、トップを目指す上で有利になる身体的な要素について、具体的に見ていきましょう。

1. 水に浮きやすい体質とボディポジション

水泳において最も基本的な素質といえるのが「浮力」です。水に入ったとき、自然と体が浮きやすい子はそれだけで大きなアドバンテージを持っています。特に、下半身が沈みにくく、水面に対してフラット(水平)な姿勢を保ちやすい子は、水の抵抗を最小限に抑えることができます。

筋肉質で体脂肪が極端に少ない子は沈みやすい傾向にありますが、競泳選手に必要なのは適度な脂肪と、それを浮かせるための肺活量、そして重心のコントロール能力です。力を抜いた状態でストリームライン(けのびの姿勢)をとったとき、足先まで真っ直ぐに浮いていられる子は、無駄なエネルギーを使わずに進むことができるため、長距離を泳いでも疲れにくいという特徴があります。この「浮く力」は、技術練習だけでは補いにくい天性の才能の一つと言えるでしょう。

2. 関節の柔らかさと柔軟性(足首・肩)

競泳のパフォーマンスを大きく左右するのが関節の柔軟性です。特に重要なのが「足首」と「肩」の柔らかさです。足首が柔らかいと、キックを打つ際に足の甲で水をしっかりと捉え、フィンのようにしならせることができます。これにより、小さな力で大きな推進力を生み出すことが可能になります。逆に足首が硬いと、足が水中でフックのように引っかかってしまい、ブレーキになってしまうことがあります。

また、肩の柔軟性は、抵抗の少ないストリームラインを作るために不可欠です。両手を耳の後ろで組んだとき、隙間なくピタリと頭を挟める柔軟性があれば、水の抵抗を極限まで減らすことができます。さらに、ストローク(腕のかき)の可動域も広がるため、ひと掻きで進む距離が長くなります。これらの柔軟性は日々のストレッチで改善できる部分もありますが、生まれつき関節が柔らかい「ハイパーラックス」と呼ばれるような体質の子は、競泳において非常に有利です。

3. 身長と手足の長さ(リーチの長さ)

物理的なアドバンテージとして、身長の高さと手足の長さも重要な要素です。単純に身長が高ければ、それだけゴールへの到達が早くなりますし、腕が長ければ、より遠くの水をキャッチすることができます。競泳界では「ウイングスパン(両手を広げた長さ)」が身長よりも長いことが理想的とされることがよくあります。

手が大きいことはパドル(水かき)が大きいことと同じ意味を持ち、足が大きいことはフィンが大きいことと同じ効果をもたらします。成長期前の段階で、両親の身長が高い、あるいは同年代の子に比べて手足が大きいといった特徴があれば、将来的なフィジカル面での素質を秘めている可能性があります。ただし、身長が低くても、技術や回転数(ピッチ)でカバーして世界で活躍する選手も存在するため、これがないからといって諦める必要はありませんが、有利であることは間違いありません。

4. 水をつかむ独特の感覚「水感」

コーチたちが口を揃えて「これが一番重要」と言うのが、目に見えない素質である「水感(すいかん)」や「センス」です。これは、水の中での身のこなしや、手のひらで水を捉えたときの感覚の鋭さを指します。

水感が優れた子は、水を「かく」のではなく、水に「ひっかける」「重さを乗せる」ことができます。見ていると、決して必死に手足を動かしているわけではないのに、スルスルと不思議なほど前に進んでいくのが特徴です。この感覚を持っている子は、コーチがフォームを少し修正しただけで、劇的にタイムが伸びることがあります。「水を撫でるのではなく、水を押すことができる」能力は、練習量だけではなかなか身につかない、非常に稀有な才能の一つです。

【身体的な素質チェックリスト】

□ 足首を伸ばして座ったとき、足の甲が床にべったりつく
□ 立った状態で手を上に伸ばし、耳の後ろで組める
□ 両手を広げた長さが身長よりも長い
□ けのびをしたとき、下半身が沈まずに長く浮いていられる
□ 手のひらや足のサイズが年齢の割に大きい

タイムだけじゃない?コーチが見ているメンタル面の才能

身体的な素質と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「メンタル(心)」の素質です。競泳は自分自身との戦いであり、過酷な練習を何年も継続しなければなりません。コーチたちは、タイムの速さ以上に、その子の性格や練習に取り組む姿勢をよく観察しています。

負けず嫌いな性格と向上心

「隣の子に負けたくない」「昨日の自分のタイムを超えたい」という強い気持ちは、選手として伸びるための最大のエネルギー源です。競泳は0.01秒を争うシビアな世界です。レースで負けたときに、ただ「悔しい」と感じて終わるのではなく、「次はどうすれば勝てるか」を考え、練習に打ち込める子は間違いなく伸びます。

練習中であっても、隣のコースの子と競り合ったときに絶対に譲らない強気な姿勢や、苦しい場面でも諦めずに壁をタッチする粘り強さは、コーチが高く評価するポイントです。才能があっても、淡白で競争心がない子は、厳しい練習の中でモチベーションを維持するのが難しくなることがあります。泥臭くても「勝ちたい」という執着心を持てるかどうかが、選手としての寿命を決めると言っても過言ではありません。

コーチの話を聞く「素直さ」と「修正力」

スポーツの世界ではよく言われることですが、「素直さ」は最強の才能です。自分の泳ぎにこだわりすぎず、コーチのアドバイスを素直に聞き入れ、すぐに実行しようとする姿勢がある子は、成長のスピードが段違いです。

コーチは選手の泳ぎを見て、欠点や改善点を指摘します。そのとき、「でも自分はこうしたい」と反発したり、聞いているふりをして直さなかったりする子は、そこで成長が止まってしまいます。一方、指摘されたことをその場ですぐに試し、感覚が違えばまた質問するといったコミュニケーションが取れる子は、技術をどんどん吸収していきます。この「修正能力」の高さこそが、将来的にトップレベルに行けるかどうかの分かれ道になります。

単調な練習を休まず続ける「継続力」と「忍耐力」

華やかな大会の裏側で、競泳の練習は非常に地味で過酷です。来る日も来る日もプールの底を見ながら、何千メートル、何万メートルと泳ぎ続けなければなりません。ボールを追いかけるようなゲーム性も少なく、自分自身と向き合う孤独な時間が続きます。

このような単調で厳しい練習を、嫌にならずに毎日コツコツと続けられる「忍耐力」は、競泳選手にとって不可欠な資質です。「練習を休まない」というのは、簡単なようでいて実は最も難しいことです。天才肌で飽きっぽい子よりも、不器用でも休まずにプールに来て、淡々とメニューをこなせる子のほうが、最終的には速くなるケースが多々あります。この「継続する才能」こそが、大きな花を咲かせるための土台となります。

素直さが成長のカギ
トップスイマーへのインタビューで共通しているのは、幼少期に「コーチの言うことをよく聞いていた」という点です。自己流に走らず、基本を徹底して吸収できる心が、最強の武器になります。

選手コースへの推薦・勧誘の基準はどうなっている?

では、実際にスイミングスクールではどのような基準で選手コースへの勧誘(スカウト)や選抜を行っているのでしょうか。スクールによって方針は異なりますが、一般的に重視されるポイントはいくつか共通しています。タイムが速いことはもちろん重要ですが、それ以外の要素も大きく関わっています。

規定タイムのクリアと泳力のレベル

最も分かりやすい基準は「タイム」です。多くのスクールでは、日本水泳連盟が定める「資格級」や、スクール独自の基準タイムを設けています。例えば、ジュニアコースの進級テストで最上級まで合格した後、さらに上の「育成コース」や「選手コース」に上がるためのタイムトライアルが行われることが一般的です。

しかし、単に50メートルを速く泳げれば良いというわけではありません。短距離のスピードだけでなく、200メートル個人メドレーを泳ぎ切る体力や、4泳法(クロール・背泳ぎ・平泳ぎ・バタフライ)すべてをバランスよく泳げるかどうかも見られます。特定の種目だけ速くても、身体のバランスが悪かったり、他の泳法が極端に苦手だったりすると、怪我のリスクも考慮して慎重に判断されることがあります。

きれいなフォームと泳ぎの基礎

コーチたちは、現在のタイム以上に「将来伸びる泳ぎ方をしているか」を見ています。これを判断する基準が「フォームの美しさ」です。力任せに水をかき回して出したタイムと、抵抗の少ないきれいなフォームで出したタイムでは、後者のほうが圧倒的に評価されます。

力任せの泳ぎは、体が大きくなれば限界が来ますが、きれいなストリームラインや効率的なキャッチができている泳ぎは、筋力がつくにつれて爆発的にタイムが伸びる可能性があります。また、基本に忠実な泳ぎをしている子は怪我をしにくいため、長期的な強化に耐えられると判断されます。ターンやスタート、浮き上がりといった細かい技術の基礎ができているかも、重要なチェックポイントです。

練習態度と集中力

どれだけ才能があっても、練習中に遊んでしまったり、コーチの指示を聞けなかったりする子は、選手コースに誘われないことがあります。選手コースでは、1つのコースに多数の選手が入り、秒単位で管理されたメニューをこなします。一人が輪を乱すと、全体の練習に支障をきたし、接触事故などの危険も伴うからです。

そのため、普段のレッスンでの「話を聞く姿勢」「整列の早さ」「挨拶の声の大きさ」といった規律面も厳しくチェックされています。コーチと目が合ったときにしっかり頷けるか、準備や片付けを率先して行えるかなど、集団行動ができる社会性も、選ばれるための重要な基準の一つです。

親のサポートも才能の一部?家庭環境の重要性

「水泳は親の競技」と言われることもあるほど、保護者のサポートは不可欠です。子供にどれだけ素質があっても、家庭の協力体制が整っていなければ、選手コースでの活動を続けることは困難です。ここでは、具体的にどのような負担や覚悟が必要になるのかを解説します。

送迎や食事管理などの生活サポート

選手コースに入ると、練習頻度が週1回から週5〜6回へと急増します。夕方の練習だけでなく、週末の早朝練習や、遠方のプールでの強化練習が入ることも珍しくありません。これらの送迎を数年間にわたって続けるには、親自身のスケジュール調整や忍耐が必要です。

また、激しい運動量を支えるための「食事」も重要です。練習直後の補食の準備や、成長期に必要な栄養バランスを考えたお弁当作りなど、台所でのサポートも欠かせません。睡眠時間を確保するために、学校の宿題や生活リズムを親が管理してあげる必要も出てきます。まさに、親子二人三脚での戦いとなります。

経済的な負担(月謝・遠征費・指定用品)

現実的な問題として、費用面の負担も大きくなります。選手コースの月謝は一般コースよりも高めに設定されていることが多く、それに加えて以下のような費用が発生します。

・大会へのエントリー費(1種目数千円)
・指定のジャージやユニフォーム代
・高速水着代(1着数万円することもあります)
・合宿や遠征の交通費・宿泊費
・選手登録料や保険料

これらが年間を通じて積み重なると、かなりの金額になります。子供の素質を伸ばすためには、これらの経済的な負担を家庭が許容できるかどうかも、重要な要素となります。

子供へのプレッシャーとの付き合い方

最も難しいのが、精神的なサポートです。タイムが伸び悩んだときや、レースで負けて落ち込んでいるときに、親がどのような言葉をかけるかが子供の今後を左右します。

熱心なあまり、親がコーチのように技術的な指導をしてしまったり、「なんであんなタイムなの!」と叱責してしまったりすると、子供は水泳を嫌いになってしまいます。親の役割は、技術指導ではなく、一番のファンであり続けることです。美味しいご飯を作り、結果に関わらず「頑張ったね」と迎え入れる温かい家庭環境があるからこそ、子供は厳しい練習に耐えることができます。親自身の「待つ力」や「信じる力」もまた、重要な素質の一つと言えるでしょう。

メモ:親の覚悟
子供が「辞めたい」と言ったとき、本当に辞めたいのか、ただ疲れているだけなのかを見極めるのも親の役割です。一喜一憂せず、どっしりと構える姿勢が求められます。

素質があっても伸び悩む?「早熟」と「晩成」の違い

「小学生の頃はあんなに速かったのに、中学に入ってからタイムが伸びなくなった」という話はよく聞きます。逆に、「小学生の頃は目立たなかったのに、高校生になって急激に速くなった」というケースもあります。これは成長のタイプである「早熟型」と「晩成型」の違いが大きく関係しています。

小学生時代に圧倒的に速い「早熟型」

早熟型の子は、同級生よりも早く体が大きくなり、筋肉もつき始めます。小学校高学年で中学生のような体格をしている場合、パワーの差で圧倒的なタイムを出すことができます。この時期に大会で優勝したり、好記録を出したりすることで「天才」と呼ばれることも多いでしょう。

しかし、これはあくまで「成長が早かったことによるアドバンテージ」である可能性があります。周囲の子たちが成長期に入り、体格差がなくなってくると、以前のような勝ち方ができなくなることがあります。ここで「自分はダメになった」と勘違いして挫折してしまう子も少なくありません。早熟型の子こそ、今の勝ちに驕らず、将来を見据えて技術を磨き続けることが大切です。

中学・高校で一気に伸びる「晩成型」

一方、晩成型の子は、小学生の頃は体が小さく、パワー負けしてしまうことがよくあります。技術やセンスがあっても、身体的な成長が追いついていないため、タイムになかなか反映されません。しかし、この時期に腐らずにフォームの改善や基礎体力の向上に取り組んでいれば、成長期(スパート)が来たときに一気に才能が開花します。

体が大きくなると同時に、今まで培ってきた技術が噛み合い、驚くようなタイムアップを果たすのがこのタイプです。小学生時代の結果だけで「素質がない」と判断するのは非常に危険です。水泳は、高校生や大学生になってからピークを迎える選手もたくさんいます。

焦らず成長を見守る大切さ

大切なのは、今の子供の状態が「早熟」なのか「晩成」なのか、あるいはその中間なのかを冷静に見極めることです。成長のタイミングは遺伝や個人差によるもので、誰にもコントロールできません。

コーチたちは、その子の骨格や親の体格などを見て、ある程度の成長予測を立てています。もし今、タイムが伸び悩んでいたとしても、それが成長の踊り場である可能性は十分にあります。「周りの子はベストが出ているのに」と焦らせるのではなく、身長が伸びる時期を待ちながら、今は技術を蓄える時期だと割り切ることも必要です。長く水泳を続けるためには、目先の結果にとらわれない長いスパンでの視点が不可欠です。

タイプ 特徴 注意点
早熟型 体が早く大きくなり、小学生時代に好成績を残しやすい。 中学以降、周りが成長すると勝てなくなる時期がある。技術練習を怠らないことが重要。
晩成型 小学生時代は小柄でパワー負けしやすいが、技術力が高い場合が多い。 結果が出なくても諦めない忍耐力が必要。成長期に急激に伸びる可能性がある。

スイミング選手コースの素質と向き合い方まとめ

まとめ
まとめ

ここまで、スイミングの選手コースに必要な素質について、身体面、メンタル面、そして環境面から解説してきました。
最後に、改めて重要なポイントを振り返ります。

1. 身体的な素質は「浮力」や「関節の柔軟性」が鍵
身長や手足の長さも有利に働きますが、水に乗る感覚(水感)や、抵抗の少ない姿勢を作れる柔軟性が大きな武器になります。

2. メンタルの強さが成長を支える
「負けず嫌い」であること、そして何よりコーチのアドバイスを吸収できる「素直さ」と、厳しい練習を継続できる「忍耐力」が、才能を開花させます。

3. 選手コースに選ばれるには「総合力」が必要
単にタイムが速いだけでなく、きれいなフォーム、真面目な練習態度、そして挨拶などの礼儀も評価の対象となります。

4. 親のサポートと理解が不可欠
送迎や食事管理、費用面の負担に加え、子供を一喜一憂せずに見守る親の精神的な強さも、選手活動を続けるための重要な「環境の素質」です。

もし、お子さんが選手コースに誘われたなら、それはコーチが「この子には光るものがある」と判断した証拠です。素質があるかどうかは、やってみなければわからない部分も多くあります。最初から全てを兼ね備えている選手はいません。
一番の才能は「水泳が好き」という気持ちです。
その気持ちがあるなら、まずはチャレンジしてみてはいかがでしょうか。親子で挑むその経験は、結果がどうあれ、お子さんの人生にとってかけがえのない財産になるはずです。

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