「もっと速く泳げるようになりたい」「後半のスタミナ不足を解消したい」
そう感じているスイマーの皆さん、プールの中だけの練習で満足していませんか?実は、水泳のパフォーマンスを向上させるには、陸上で行う「筋トレ」が非常に重要です。水の抵抗に負けないパワーや、美しい流線型を保つための体幹は、陸上で効率よく鍛えることができます。
この記事では、水泳に必要な筋肉を鍛えるためのおすすめの筋トレ種目を、部位別・目的別にわかりやすく解説します。自宅でできるメニューを中心に紹介しますので、今日からさっそく取り入れて、ライバルに差をつけましょう。
水泳に筋トレが必要な理由と種目選びのポイント

水泳は「水の抵抗」という負荷の中で体を動かす全身運動です。プールで泳ぐだけでも筋肉は使われますが、より速く、より楽に泳ぐためには、陸上での筋力トレーニング(陸トレ)が欠かせません。なぜ水泳選手があれほど陸上でのトレーニングを重視するのか、その理由と効果的な種目選びのポイントを解説します。
推進力を生み出すパワーの向上
水泳で前に進む力、すなわち「推進力」を生み出すのは筋肉のパワーです。特に、水をかく腕の力(ストローク)や、水を蹴る脚の力(キック)は、筋肉の強さに比例して大きくなります。
水の中では浮力が働くため、自分の体重以上の負荷をかけることが難しく、筋力を「増やす」ことには限界があります。陸上での筋トレを行うことで、筋肉そのものの出力を上げ、ひとがき・ひとけりで進む距離を伸ばすことができます。これがタイム短縮への近道となります。
水の抵抗を減らす姿勢の維持
水泳において、パワーと同じくらい重要なのが「水の抵抗を減らすこと」です。抵抗が少なければ、少ない力で速く進むことができます。この抵抗の少ない姿勢(ストリームライン)を維持するために必要なのが、体幹を中心とした筋肉です。
疲れてくると腰が落ちたり、体が左右にブレたりして抵抗が増えてしまいます。筋トレで体を支えるインナーマッスルを鍛えることで、レース後半でも崩れない、フラットな姿勢をキープできるようになります。
怪我の予防とコンディショニング
水泳は関節を大きく動かすスポーツですが、その反面、肩や腰に大きな負担がかかります。「スイマーズショルダー」や腰痛は、特定の筋肉への過度な負担や、筋力バランスの悪さが原因で起こることが多いです。
肩甲骨周りの細かい筋肉や、関節を安定させる筋肉を個別に鍛えることは、怪我の予防に非常に効果的です。長く健康的に水泳を楽しむためにも、補強としての筋トレ種目を取り入れることが推奨されます。
上半身を鍛える水泳の筋トレ種目【ストローク強化】

水泳の推進力の大半は、上半身によるストローク動作から生まれます。水を力強くキャッチし、最後まで押し切るためには、背中、胸、腕、そして肩周りの筋肉が必要です。ここでは、力強いストロークを作るための主要な筋トレ種目を紹介します。
広背筋を鍛える「懸垂(チンニング)」
逆三角形の背中はスイマーの象徴ですが、その主役となるのが「広背筋」です。広背筋は腕を上から下へ引き寄せる動作で使われ、クロールやバタフライのプル動作に直結します。
懸垂(チンニング)は、この広背筋を鍛える最強の自重トレーニングです。手の幅を肩幅よりやや広めにとり、胸をバーに近づけるように体を引き上げます。単に腕で上がるのではなく、背中の筋肉を使って引き上げる意識を持つことが重要です。自宅にぶら下がる場所がない場合は、公園の鉄棒などを利用するのも良いでしょう。
胸と腕を強化する「腕立て伏せ(プッシュアップ)」
ストロークの後半、水を後ろに押し出す「プッシュ動作」に必要なのが、胸の筋肉(大胸筋)と腕の裏側の筋肉(上腕三頭筋)です。
基本的な腕立て伏せは、これらの筋肉を効率よく鍛えます。手は肩幅より少し広めに置き、頭から足までが一直線になるように姿勢を保ちます。体を深く下ろすことで、肩甲骨の動きも良くなり、可動域の広いストロークにつながります。肘が開いて脇が甘くならないよう、脇を適度に締めながら行うと、より水泳に近い動きになります。
肩周りのインナーマッスル「チューブトレーニング」
大きな筋肉だけでなく、肩関節を安定させる「ローテーターカフ(インナーマッスル)」を鍛えることも非常に重要です。ここが弱いと、大きなパワーを発揮した際に肩を痛めやすくなります。
トレーニングチューブ(ゴムバンド)を柱などに固定し、肘を脇腹につけたまま、前腕を内側・外側に開閉する動作(インターナル/エクスターナル・ローテーション)を行います。地味な動きですが、肩の怪我予防には必須の種目です。軽い負荷で高回数行うのがポイントです。
キャッチ動作を意識する「チューブ引き」
実際のストローク動作を陸上で再現するトレーニングです。チューブを高い位置に固定し、前傾姿勢をとって、クロールやバタフライのように腕を引き下げます。
この種目の最大のメリットは、水中で水を捉える「キャッチ」から「プル」「プッシュ」までの一連の動作を確認しながら負荷をかけられることです。肘が落ちないように(ハイエルボー)意識し、広背筋を使って引き切る感覚を養いましょう。鏡を見ながらフォームチェックを行うとさらに効果的です。
体幹を固める水泳の筋トレ種目【ストリームライン安定】

「水泳は体幹が命」と言われるほど、胴体部分の強さは重要です。手足がどれだけ強くても、土台となる体がグラグラしていては力が水に伝わりません。ここでは、水の抵抗を最小限にし、回転動作をスムーズにするための体幹トレーニングを紹介します。
基本の姿勢を作る「フロントプランク」
体幹トレーニングの王道であり、水泳の基本姿勢「ストリームライン」を維持するために不可欠な種目です。
うつ伏せになり、肘とつま先だけで体を支えます。この時、お尻が上がったり下がったりせず、頭からかかとまでが一直線の板(プランク)のようになることを意識してください。おへそを背骨に近づけるようにお腹を凹ませることで、深層の筋肉に刺激が入ります。まずは30秒キープから始め、徐々に時間を延ばしていきましょう。
ローリングを支える「サイドプランク」
クロールや背泳ぎでは、体を左右に回転させる「ローリング」という動作が入ります。この回転時に体が「くの字」に曲がらないよう支えるのが、脇腹の筋肉(腹斜筋など)です。
横向きになり、片方の肘と足の外側で体を支えて持ち上げます。体が前後に倒れないように、床に対して垂直を保つことがポイントです。この筋肉が強化されると、呼吸動作の際にもバランスを崩しにくくなり、安定した泳ぎが可能になります。
背面から体を支える「バックエクステンション」
水泳では体の前面だけでなく、背面の筋肉も重要です。特に、下半身が沈まないように持ち上げ続けるには、背筋とお尻の筋肉の連動が必要です。
うつ伏せの状態から、手と足を同時に持ち上げる「スーパーマン」のような姿勢をとります。反動を使わず、じっくりと背中の収縮を感じながら行いましょう。腰を反りすぎると痛める原因になるので、高さよりも「遠くへ伸びる」イメージを持つことが大切です。フラットな姿勢の維持に役立ちます。
腹圧を高める「ドローイン」
これは動きの少ないトレーニングですが、水中でのパフォーマンスに直結します。仰向けになり、膝を立てた状態で、息を吐ききってお腹を限界まで凹ませます。その状態をキープしながら浅い呼吸を続けます。
水泳中は水圧がかかるため、陸上よりも呼吸筋に負担がかかります。ドローインで腹横筋(インナーマッスル)を鍛えることで、腹圧を高め、水中でボディポジションを高く保つことができるようになります。テレビを見ながらでもできるおすすめの種目です。
下半身を強化する水泳の筋トレ種目【キック力アップ】

「水泳は腕で泳ぐもの」と思われがちですが、キック(脚)の役割も無視できません。キックは推進力だけでなく、体全体を浮かせ、リズムを作る役割も担っています。力強く、疲れにくい脚を作るための種目を見ていきましょう。
キックの根源を鍛える「スクワット」
下半身全体のパワーアップに最も効果的なのがスクワットです。太ももの前側(大腿四頭筋)やお尻(大臀筋)など、キックの打ち下ろし動作に関わる大きな筋肉をまとめて鍛えられます。
水泳の壁を蹴る「ターン」の動作や、スタートの飛び込みの威力も向上します。足は肩幅程度に開き、膝がつま先より前に出すぎないようにお尻を後ろに引いてしゃがみます。深くしゃがむことで股関節周りの柔軟性も養えるため、一石二鳥の種目です。
裏腿を意識する「ランジ」
キック動作では、蹴り下ろすだけでなく、脚を「引き上げる」動作も重要です。この時に使われるのが太ももの裏側(ハムストリングス)とお尻です。
足を前後に大きく開き、腰を真下に落とすランジは、これらの筋肉をバランスよく鍛えることができます。片足ずつ行うため、左右の筋力差を整える効果もあります。ハムストリングスが強化されると、アップキック(引き上げ)がスムーズになり、休むことのない連続したキックが打てるようになります。
足首の動きに関わる「カーフレイズ」
水泳のキックは、足首をしなやかに使い、フィン(足ひれ)のように水を捉える必要があります。ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)は、この足首を伸ばす動作に関与します。
立った状態でかかとを上げ下げするカーフレイズは、ふくらはぎをピンポイントで鍛える種目です。壁や椅子に手をついてバランスを取りながら、可動域いっぱいに動かします。ふくらはぎの筋肉が発達すると、水を最後まで押し切るスナップの効いたキックが可能になります。
自宅でできる器具なし筋トレ種目とメニューの組み方

ここまで紹介した種目は、特別なマシンがなくても自宅で行えるものがほとんどです。しかし、やみくもに行うだけでは効果が出にくいこともあります。ここでは、継続しやすく効果的なメニューの組み方について解説します。
初心者におすすめの週間スケジュール
筋トレは毎日行えば良いというものではありません。筋肉は休んでいる間に修復され、強くなる(超回復)からです。
初心者の方は、週に2〜3回のペースから始めるのがおすすめです。例えば、「月・木」や「火・金・日」のように、トレーニングの間に1〜2日の休息日を設けます。1回のトレーニングで全身を行うのが大変な場合は、「火曜日は上半身」「金曜日は下半身」のように部位を分けて行う「分割法」を取り入れると、短時間で集中して取り組めます。
頻度と休息のバランス
「早く速くなりたい」と焦って毎日ハードな筋トレを行うと、疲労が蓄積し、逆にパフォーマンスが落ちたり怪我をしたりする原因になります。
特に水泳の練習(スイム)も並行して行っている場合は、オーバートレーニングに注意が必要です。「スイムの練習がハードな日は筋トレを軽めにする」「完全に体を休める日を作る」など、自分の体調と相談しながら強度を調整してください。筋肉痛がひどい場合は、無理せず休む勇気も必要です。
ストレッチとの組み合わせ
水泳のための体作りにおいて、筋トレと同じくらい重要なのがストレッチです。筋肉がつくと体が硬くなると思われがちですが、正しくストレッチを行えば柔軟性は維持・向上できます。
特に関節の可動域(動く範囲)が広いことは、大きなストロークやしなやかなキックを生むための武器になります。筋トレの後は筋肉が収縮して固まりやすいので、必ずゆっくりと伸ばす静的ストレッチを行いましょう。肩甲骨周りや股関節、足首の柔軟性は、毎日のお風呂上がりなどにケアするのがおすすめです。
【メニュー例:全身バランスコース】
1. プランク(30秒 × 2セット)
2. スクワット(15回 × 3セット)
3. 腕立て伏せ(10回 × 3セット)
4. バックエクステンション(15回 × 2セット)
5. ストレッチ(全身)
水泳の筋トレ種目を実践してタイム向上を目指そう
今回は、水泳のパフォーマンスアップに直結する筋トレ種目について解説しました。
水泳は水の中のスポーツですが、陸上で培った筋肉のパワーと体幹の強さは、必ず泳ぎに活きてきます。
「推進力を生むための上半身と下半身の強化」、そして「抵抗を減らすための体幹の安定」。この2つの軸を意識してトレーニングを行うことで、あなたの泳ぎはより力強く、スムーズなものへと進化するはずです。
まずは自宅でできる種目から少しずつ始めてみてください。陸トレの成果をプールで感じられたとき、水泳がもっと楽しくなること間違いありません。


