長時間のデスクワークやスマートフォンの操作で、ふと鏡を見たときに「背中が丸まっている」と気になったことはありませんか?
猫背は見た目の印象を暗くするだけでなく、肩こりや腰痛の原因にもなりかねません。そんな姿勢の悩みを解消する運動として、今注目されているのが「水泳」です。
プールでの運動は、浮力や水の抵抗を利用することで、陸上よりも体に負担をかけずに姿勢を整える効果が期待できます。この記事では、なぜ水泳が猫背に良いのか、そのメカニズムと具体的な泳ぎ方をわかりやすく解説します。
水泳は猫背に効果がある?その理由と改善の仕組み

結論から言うと、水泳は猫背の改善に非常に効果的なスポーツです。陸上での筋力トレーニングやストレッチとは異なり、水の中という特殊な環境が、固まった体をほぐし、正しい姿勢へと導いてくれるからです。ここでは、なぜ水泳が姿勢改善に役立つのか、その主な3つの理由を解説します。
水の浮力が背骨や関節の負担を減らす
私たちの体は、普段生活しているだけで重力の影響を常に受けています。特に猫背の人は、重い頭を支えるために首や背中の筋肉が常に緊張し、背骨が押しつぶされるような負担がかかっています。
プールに入ると、浮力の働きによって体重が陸上の約10分の1まで軽くなります。この「重力から解放された状態」になることで、縮こまっていた背骨や関節の隙間が自然と広がり、本来の正しい位置に戻りやすくなるのです。
全身運動で体幹(インナーマッスル)が鍛えられる
良い姿勢をキープするためには、背骨を支えるための「体幹」の強さが必要です。猫背の人は、腹筋や背筋の深層部にあるインナーマッスルが弱っていることが多く、正しい姿勢を維持して立っていることができません。
水泳は、不安定な水の中でバランスを取りながら体を動かすため、意識しなくても自然と体幹が鍛えられます。体の内側の筋肉がコルセットのように背骨を支えてくれるようになるため、無理なく背筋が伸びた状態を保てるようになります。
肩甲骨を大きく動かすことで凝りがほぐれる
猫背の大きな特徴として、肩が内側に入り込む「巻き肩」や、肩甲骨が外側に開いたまま固まっている状態が挙げられます。これを改善するには、肩甲骨周りの柔軟性を取り戻すことが不可欠です。
水泳の動作、特に腕を回す動きは、肩甲骨を大きく動かします。普段の生活ではあまり動かさない範囲まで腕を回すことで、肩周りの筋肉の血行が良くなり、ガチガチに固まった背中がほぐれていきます。これにより、胸が開きやすい状態が作られるのです。
猫背改善におすすめの泳ぎ方・種目ベスト4

「水泳が良いのはわかったけれど、どの泳ぎ方が一番いいの?」と疑問に思う方もいるでしょう。実は、泳ぎ方によって姿勢への効果は少しずつ異なります。ここでは、特に猫背改善に効果的な種目を厳選してご紹介します。
背泳ぎ(バック):胸を開いて姿勢をリセット
猫背改善において最もおすすめなのが「背泳ぎ」です。理由は単純で、強制的に胸を開く姿勢になるからです。普段の前かがみの姿勢とは真逆の動きをするため、縮こまった大胸筋(胸の筋肉)がストレッチされます。
また、背泳ぎは顔が水面に出ているため呼吸が楽で、リラックスして泳ぎやすいのもメリットです。速く泳ぐ必要はありません。水面に浮きながらゆったりと腕を回すだけで、丸まった背中がリセットされていくのを感じられるはずです。
平泳ぎ:肩甲骨を寄せる動きがポイント
平泳ぎも姿勢改善に役立ちますが、ポイントは「肩甲骨」です。腕を前に伸ばしてから水をかき込む際に、左右の肩甲骨を背骨の中央にギュッと寄せる意識を持ちましょう。
この「寄せる」動きが、開いてしまった背中を引き締めます。ただし、ずっと顔を上げっぱなしにする泳ぎ方は首や腰に負担がかかるため、息継ぎの後はしっかりと顔を水につけ、頭から足先まで一直線になる姿勢を作ることが大切です。
クロール:正しい呼吸動作で胸郭を広げる
もっとも一般的なクロールも、正しく行えば効果的です。クロールで重要なのは「呼吸動作」です。横を向いて息を吸う際、体全体を回旋(ローリング)させることで、背骨周りの筋肉が刺激されます。
さらに、腕を大きく上に伸ばす動作は、脇の下や体側(体の横)を伸ばす効果があります。猫背の人は脇の下が縮んで硬くなっていることが多いので、ここを伸ばすことで腕が上がりやすくなり、姿勢が改善します。
水中ウォーキング:泳げない人でもできる姿勢矯正
「泳ぐのは苦手」という方には、水中ウォーキングが救世主となります。ただ歩くだけでなく、以下のポイントを意識してください。
【姿勢改善ウォーキングのコツ】
・視線は遠くを見て、頭のてっぺんが糸で吊られているイメージを持つ
・手のひらで水を後ろに押すようにして、肩甲骨を寄せる
・後ろ向きに歩く(背中の筋肉が刺激されやすい)
水の抵抗を受けながら、胸を張って大股で歩くことで、陸上よりも効率よく背中の筋肉を刺激できます。特に「後ろ歩き」は背面の筋肉を使いやすいため、猫背対策として非常に有効です。
逆に猫背が悪化する?注意すべきNGな泳ぎ方と対策

水泳は姿勢に良いとお伝えしましたが、やり方を間違えると逆効果になってしまうこともあります。特に「頑張って泳ぎすぎる」人ほど注意が必要です。ここでは、避けるべきポイントと対策を知っておきましょう。
クロールばかり泳ぐと巻き肩になりやすい理由
クロールの腕をかく動作(プル動作)は、強力な胸の筋肉(大胸筋)を使います。しかし、泳いだ後に胸の筋肉のケアをしないまま、クロールばかりを長時間泳ぎ続けると、発達した胸の筋肉が縮まり、肩を前へと引っ張ってしまいます。
これが「水泳選手の猫背」とも呼ばれる現象です。これを防ぐためには、クロールだけでなく背泳ぎを混ぜて泳ぐことや、泳いだ後に必ず胸を開くストレッチを行うことが重要です。
顔を上げすぎた平泳ぎは首への負担が大
顔を水につけるのが怖くて、常に顔を上げた状態で平泳ぎをしていませんか?この姿勢は、首の後ろが常に詰まった状態になり、首こりや肩こりを悪化させる原因になります。
また、下半身が沈んで腰が反ってしまうため、腰痛のリスクも高まります。「息を吸ったら顔をしまう」を徹底し、水中で一度体が真っ直ぐになる時間を作ることが、美しい姿勢への近道です。
力みすぎは逆効果!脱力が綺麗な姿勢を作る
「姿勢を良くしよう!」と意気込んで、水の中でガチガチに力を入れて背筋を伸ばそうとするのはNGです。筋肉が緊張しすぎると、本来動くべき関節が動かなくなり、かえってフォームが崩れてしまいます。
水泳の良いところは、浮力でリラックスできる点にあります。水に身を委ね、「クラゲ」のように力が抜けた状態から、必要な筋肉だけを使うイメージを持ちましょう。脱力こそが、しなやかで美しい姿勢を作ります。
水泳前後に取り入れたい!効果を高めるストレッチ

プールに入る前と上がった後に適切なケアを行うことで、姿勢改善の効果は何倍にも高まります。特に猫背の人が重点的に行うべきストレッチを紹介します。
入水前の肩甲骨周りの動的ストレッチ
冷えた体でいきなり泳ぎ始めると、筋肉を傷める原因になります。泳ぐ前は、反動をつけて体を動かす「動的ストレッチ」を行いましょう。
この準備運動をしておくことで、入水直後からスムーズに腕が動き、正しいフォームで泳ぎやすくなります。
プールサイドでできる大胸筋を伸ばす運動
休憩中や泳ぎ終わった直後におすすめなのが、胸のストレッチです。プールの壁や手すりを利用すると効果的です。
壁に片手をつき、そのまま体を反対側にねじっていきます。胸の前から肩の付け根あたりが気持ちよく伸びる場所を探してください。縮こまりがちな胸の筋肉を物理的に伸ばすことで、巻き肩をリセットできます。
泳いだ後のクールダウンで筋肉の緊張を取る
一生懸命泳いだ後の背中は、筋肉が疲労して張っている状態です。そのまま帰宅すると、疲労物質が溜まって背中がバキバキになってしまうこともあります。
練習の最後には、ゆっくりとしたペースで泳ぐか、水中ウォーキングでリラックスする時間を5分ほど設けましょう。
水の中でぶらぶらと体を揺らすだけでも、筋肉の緊張がほぐれます。家に帰ってからのお風呂上がりにも、ゆっくりストレッチを行うとより効果的です。
無理なく続けるための頻度と習慣化のコツ

姿勢の改善は、1日や2日で完了するものではありません。一時的に良くなっても、普段の生活に戻ればまた猫背に戻ってしまいます。大切なのは「継続」です。
週に何回通えば効果が出るのか
猫背改善を目的とする場合、まずは週に1回〜2回のペースで通うのがおすすめです。毎日通う必要はありません。むしろ、無理をして通うのが億劫になってしまっては本末転倒です。
週末だけ、あるいは平日の仕事帰りなど、自分のライフスタイルに合わせて「曜日を決める」ことが習慣化の第一歩です。水の中に入るだけでもリフレッシュ効果があるので、気負わずに楽しみましょう。
最初は距離よりもフォームを意識する
「今日は1km泳ごう」と距離を目標にすると、疲れてきた後半にフォームが崩れ、猫背の姿勢で泳ぎ続けてしまうことがあります。これでは逆効果です。
距離は短くて構いません。「25mを綺麗なフォームで泳ぐ」「疲れたら歩いて姿勢を整える」という意識を持ちましょう。量より質を重視することが、結果的に最短で美しい姿勢を手に入れるコツです。
仲間を作ったりスクールに通うメリット
一人で黙々と泳ぐのも良いですが、自己流のフォームは気づかないうちに崩れてしまうものです。可能であれば、スイミングスクールの成人クラスに参加したり、ワンポイントレッスンを受けたりすることをおすすめします。
インストラクターに客観的にフォームを見てもらうことで、「背中が丸まっている」「視線が下がっている」などの癖を指摘してもらえます。正しい体の使い方を学ぶことは、一生モノの財産になります。
まとめ:水泳は猫背に効果がある!楽しみながら美しい姿勢を手に入れよう
今回は「水泳は猫背に効果があるのか?」というテーマについて解説してきました。水泳は、浮力による背骨への負担軽減、体幹の強化、そして肩甲骨の可動域向上と、姿勢改善に必要な要素が詰まった素晴らしい運動です。
特に「背泳ぎ」や「水中ウォーキング」を取り入れることで、無理なく胸を開き、丸まった背中をリセットすることができます。ただし、クロールばかりを泳ぎすぎたり、力みすぎたりすることには注意が必要です。泳いだ後のストレッチも忘れずに行いましょう。
プールに通う習慣ができれば、姿勢が良くなるだけでなく、肩こりの解消やストレス発散など、心と体にとって嬉しい変化がたくさん待っています。まずは週に1回、水の中で体を伸ばす気持ちよさを味わうことから始めてみませんか?



