競泳選手としての活動を続けていると、避けて通れないのが「遠征費」の問題です。全国大会の標準記録を突破するのは喜ばしいことですが、同時に交通費や宿泊費、食費といった出費が家計を圧迫することも珍しくありません。
特にスイミングクラブや学校の部活動で年間を通して活動していると、ブロック大会、全国大会、強化合宿と、遠征の機会は何度も訪れます。「子供の夢を応援したいけれど、費用面が心配」という保護者の方や、「自分のバイト代で活動費を賄いたい」という学生スイマーも多いのではないでしょうか。
この記事では、競泳のパフォーマンスを維持しながら、効果的に遠征費を節約するための具体的なノウハウを解説します。準備段階でできる工夫から、移動、宿泊、食事のコストカット術まで、今日から使える情報をまとめました。賢く節約して、競技に集中できる環境を整えましょう。
競泳の遠征費節約は「準備」と「優先順位」が9割

遠征費を安く抑えるために最も重要なのは、行き当たりばったりの行動を避け、綿密な計画を立てることです。直前になってからの手配は、交通費も宿泊費も高額になりがちです。まずは年間の流れを把握し、戦略的に準備を進めることから始めましょう。
年間スケジュールを把握して早割を狙う
競泳の大会スケジュールは、年度初めにおおよその日程が発表されます。主要な全国大会やブロック大会の日程と開催地をカレンダーに書き込み、どの時期に遠征が発生しそうかを予測しましょう。日程が決まった時点で、すぐに交通機関や宿泊施設の予約状況を確認することが節約の第一歩です。
多くの交通機関やホテルでは、早期予約に対する割引制度(早割)を設けています。例えば、飛行機なら75日前や55日前の予約で運賃が大幅に安くなることがありますし、新幹線も「トクだ値」などの割引切符は発売直後に売り切れることが多々あります。
標準記録を切れるかどうかが直前まで分からない場合でも、キャンセル規定を確認した上で、仮押さえをしておくという手もあります。特に宿泊施設は、大会期間中に会場周辺が満室になることが多いため、早めの行動が金銭的なメリットだけでなく、心理的な余裕にもつながります。
全ての大会に出る必要があるか見極める
「出場資格がある大会には全て出る」のが理想ですが、予算が限られている場合は取捨選択も必要です。コーチと相談し、そのシーズンのメインとなる大会(本命レース)を決め、それ以外の大会は近場の記録会で代用できないか検討してみましょう。
例えば、遠方の招待試合や予選会レベルの大会であれば、必ずしも高額な遠征費をかけて参加する必要がない場合もあります。現在の調子や目標に合わせて、「遠征してでも経験を積むべき試合」と「今回は見送る試合」を明確に区分けすることで、年間トータルの支出を大きく減らすことができます。
もちろん、経験値を積むことは大切ですが、無理な遠征費の捻出によって日々の活動費(水着代やサプリメント代など)が削られてしまっては本末転倒です。長期的な視点で、どこに資金を投下すべきか優先順位をつける勇気も持ちましょう。
チーム手配と個人手配のメリット・デメリット
所属するスイミングクラブや学校の部活によっては、チーム全体でバスをチャーターしたり、旅行会社を通じて宿を一括手配したりする場合があります。この「チーム手配」は、手間がかからず、団体割引が適用されるケースもあるため便利ですが、必ずしも最安値とは限りません。
一方で「個人手配」は、格安航空券(LCC)やビジネスホテルのプランを自分で探せるため、徹底的にコストを削ることが可能です。しかし、チームの行動予定(朝の集合時間やミーティングなど)に合わせる必要があり、別行動をとることで連絡ミスなどのトラブルが起きるリスクもあります。
節約を考えるなら、まずはチームの方針を確認しましょう。「現地集合・現地解散」が認められている場合は、個人手配の方が安くなるかシミュレーションしてみる価値があります。ただし、コーチや引率者の負担を増やさないよう、事前の相談と報告は必須です。
「安さ」と「コンディション」のバランスを考える
節約を意識するあまり、選手のコンディションを崩してしまっては意味がありません。例えば、夜行バスを使えば交通費は浮きますが、睡眠不足で体が重くなり、レースでベストタイムが出せなければ、その遠征の意味が薄れてしまいます。
・深夜バス到着で早朝からプールへ行き、体が動かなかった
・安宿のベッドが合わず、腰を痛めてしまった
・食事をケチってエネルギー不足になり、後半失速した
競泳は0.01秒を争う繊細なスポーツです。「削ってはいけない費用」と「削っても良い費用」を見極めることが大切です。移動や睡眠に関わる部分は慎重に検討し、少し費用がかかっても体調管理を優先すべき場面があることを忘れないでください。
交通費を削減する!移動手段の選び方と裏ワザ

遠征費の中で最も大きな割合を占めるのが交通費です。ここをいかに抑えるかで、全体の費用感は大きく変わります。定番の手段から、意外と知られていない割引制度まで、賢い移動手段の選び方を紹介します。
新幹線・飛行機は早期予約と株主優待が鉄則
長距離移動の定番である新幹線や飛行機は、定価で乗ると高額ですが、安く乗る方法はたくさんあります。新幹線であれば、各鉄道会社が提供するインターネット予約サービスの会員限定割引を利用するのが基本です。また、「ぷらっとこだま」のように、時間はかかるものの安く移動できる旅行商品も狙い目です。
飛行機の場合、LCC(格安航空会社)の利用が最も手っ取り早い節約術ですが、荷物の重量制限には注意が必要です。競泳選手はジャージ、セームタオル、水着、飲み物など荷物が多くなりがちです。追加料金が発生して結局高くついた、とならないよう事前に荷物重量を測っておきましょう。
また、航空会社や鉄道会社の「株主優待券」を金券ショップやフリマアプリで安く入手し、それを使って正規運賃を半額程度にする方法も有効です。これは特に、急な遠征が決まり、早割などの期限が過ぎてしまっている場合に威力を発揮します。
近場の遠征ならチームメイトと自家用車で乗り合わせ
隣県などの「電車で行くには遠いが、飛行機を使うほどではない」距離の遠征では、自家用車の乗り合わせが最強の節約手段になります。高速道路料金とガソリン代を、同乗する人数(家庭数)で割り勘にすれば、公共交通機関を使うよりも一人当たりの負担を大幅に減らせます。
乗り合わせを行う際は、運転する保護者の負担が偏らないように配慮することや、万が一の事故に備えて保険の適用範囲を確認しておくことが重要です。また、車内スペースの問題も考慮しましょう。選手たちの荷物は大きいため、ミニバンなどの積載量に余裕がある車が必要です。
さらに、車移動のメリットとして、会場までドア・ツー・ドアで移動できるため、重い荷物を持って乗り換えをする疲労がない点も挙げられます。親同士のコミュニケーションも深まり、チームの団結力が高まる良い機会にもなるでしょう。
高速バスは「3列シート」や「昼行便」で疲労軽減
とにかく安さを追求するなら高速バスが候補に挙がります。しかし、前述の通り4列シートの狭い夜行バスは体への負担が大きすぎます。そこで検討したいのが、「3列独立シート」の夜行バスや、昼間に移動する「昼行便」の活用です。
3列独立シートであれば、隣の人を気にせずリクライニングを倒しやすく、比較的良質な睡眠をとることができます。新幹線よりは安く、通常の夜行バスよりは快適という、バランスの取れた選択肢です。足のむくみ対策として、着圧ソックスを持参するなどの工夫も合わせましょう。
また、前日に移動日が確保できるなら、昼行便の高速バスもおすすめです。景色を見ながらリラックスして移動でき、夜は現地のホテルでしっかり布団に入って眠れるため、コンディションへの悪影響を最小限に抑えつつ交通費を節約できます。
意外と見落としがちな「学割」や「団体割引」
学生スイマーの場合、JRなどの鉄道会社には「学生割引(学割)」という制度があります。片道の営業キロが101キロを超える場合、運賃が2割引になります。学校で「学割証」を発行してもらう手間はかかりますが、往復で数千円の差が出ることもあるため、必ず利用しましょう。
また、8名以上で同じ行程を移動する場合は「団体割引」が適用される可能性があります。これはチーム単位での遠征で有効です。ただし、団体割引は事前の申し込みが必要で、変更やキャンセルの手続きが個人チケットより複雑になることもあります。
宿泊費を安く抑えつつパフォーマンスを守る宿選び

大会期間中の宿泊費も、積み重なると大きな出費になります。しかし、ただ安いだけの宿を選んで騒音で眠れなかったり、衛生環境が悪かったりしては問題です。快適さをある程度保ちつつ、コストを下げる宿選びのコツを解説します。
会場周辺ではなく数駅離れたエリアを探す
大きな大会がある時、会場最寄りのホテルはすぐに満室になるか、特別料金で高騰することが一般的です。そこで、検索範囲を少し広げてみましょう。電車で20〜30分程度(数駅分)離れたエリアや、乗り換えが便利な主要ターミナル駅周辺を探すと、相場がガクッと下がることがあります。
少し離れた宿を選ぶ際は、会場までのアクセス経路を事前によく調べておくことが大切です。「乗り換え回数が少ないか」「朝のラッシュに巻き込まれないか」などを確認しましょう。移動時間が多少増えても、始発駅に近いホテルを選んで座って移動できれば、体への負担は少なくて済みます。
ビジネスホテルの会員制度とポイントサイト活用
大手ビジネスホテルチェーンには、独自の会員制度を設けているところが多くあります。会員登録(有料・無料あり)をすることで、一般予約よりも早い時期に予約ができたり、会員特別価格で宿泊できたりします。また、宿泊するごとにポイントが貯まり、数回泊まれば1泊無料になるサービスもあります。
さらに、楽天トラベルやじゃらんなどの予約サイトを経由する場合、ポイントサイト(ポイ活サイト)を通して予約することで、ポイントの二重取りが可能です。貯まったポイントは次回の遠征費や、日用品の購入に充てることができます。一度の手続きは微々たるものですが、年間を通すと数千円〜数万円の節約になることもあります。
複数人での相部屋や民泊利用の検討
1人部屋(シングル)は割高になりがちです。チームメイトと協力できるなら、ツインやトリプルルームを予約して割り勘にするのが最も効率的な節約術です。最近では、エキストラベッドを入れて4人で泊まれるファミリールームなどを提供しているビジネスホテルも増えています。
また、Airbnbなどの民泊サービスを利用して、一軒家やマンションの一室を借りる方法もあります。大人数で泊まれば一人当たりの単価は格安になりますし、キッチンが付いている物件なら自炊ができるため、食費の節約にもつながります。洗濯機備え付けの物件が多いのも、競泳選手には嬉しいポイントです。
コインランドリー有無は必須チェック項目
宿泊費そのものの節約とは少しずれますが、ホテル選びで重要なのが「コインランドリーの有無」と「台数」です。競泳選手は毎日大量のタオルや水着を洗濯する必要があります。ホテル内にランドリーがないと、重い洗濯物を持って街中のコインランドリーを探し回ることになり、時間とお金の無駄です。
客室内に洗濯乾燥機があるホテルや、館内に十分な数のランドリーがあるホテルを選ぶことで、荷物の量を減らすことができます。荷物が減れば、飛行機の受託手荷物料金を回避できたり、小さなバッグで移動できたりと、結果的に遠征全体のコストダウンにつながります。
食費と現地での雑費を賢くコントロールする方法

遠征先では「せっかくだから美味しいものを」と気が大きくなりがちですが、毎回外食をしていては出費がかさみます。また、栄養管理の面でも、外食続きは塩分や脂質過多になりやすいというデメリットがあります。
コンビニ弁当を避けて地元のスーパーを活用
手軽だからといって、朝食や夕食を全てコンビニで済ませていませんか?コンビニ商品は定価販売が基本なので、割高です。現地のスーパーマーケットを利用すれば、おにぎり、パン、バナナ、ヨーグルトなどの同じような食品を2〜3割安く購入できます。
また、スーパーの惣菜コーナーでは、夕方以降に割引シールが貼られることもあります。栄養バランスを考えながら、サラダや焼き魚などのおかずを安く調達しましょう。地元のスーパーを見ることは気分転換にもなりますし、その土地ならではの食材に出会える楽しみもあります。
粉末スポーツドリンクや補食は自宅から持参
大会中の水分補給にかかる費用も侮れません。500mlのペットボトルを1日何本も自動販売機で買うと、それだけで数百円〜千円の出費になります。節約のためには、粉末(パウダー)タイプのスポーツドリンクを自宅から持参し、現地の水道水やスーパーで買った2リットルの水で作るのがおすすめです。
レースの合間に食べるエネルギーゼリーやプロテインバーなどの補食も、現地のコンビニで買うより、近所のドラッグストアやネット通販で箱買いしておき、必要な分だけ持っていく方が圧倒的に安上がりです。こうした「ちりつも」の節約が、遠征費全体を圧縮します。
外食はディナーではなくランチタイムを狙う
遠征の楽しみとして「現地の美味しい食事」を完全に我慢する必要はありません。ただし、節約を考えるならディナーではなくランチタイムを利用しましょう。同じお店でも、夜は数千円するメニューが、ランチなら千円程度で提供されていることがよくあります。
夜はスーパーで買った軽めの食事や、宿での自炊で済ませて体を休め、翌日のレースが終わった後の昼食で豪華なものを食べる。このようにメリハリをつけることで、満足度を下げずに食費をコントロールすることができます。
洗濯は部屋干し・手洗いでランドリー代を節約
長期の遠征では洗濯代もかかります。コインランドリーを使うと1回数百円かかりますが、水着やセームタオル、薄手のTシャツ程度なら、お風呂場で手洗いして部屋干しすれば無料です。
メモ:
折りたたみ式のハンガーや洗濯ロープ、少量の洗剤を持参すると便利です。ただし、部屋の湿度や換気状況には注意し、乾きにくい厚手のジャージやバスタオルだけランドリーを使うなど、使い分けをするのが賢い方法です。
遠征費の補助金や資金作りについての知識

「支出を減らす」だけでなく、「資金を増やす(調達する)」という視点も大切です。個人レベルでも利用できる補助金制度や、応援してもらうための仕組みを知っておきましょう。
自治体やスポーツ協会の補助金制度を調べる
お住まいの自治体(市区町村)によっては、全国大会や国際大会に出場する選手に対して「激励金」や「遠征費補助金」を支給している場合があります。金額は数千円から数万円と幅がありますが、返済不要の資金ですので、まずは役所のスポーツ振興課などのホームページを確認してみましょう。
また、都道府県の水泳連盟や体育協会が、強化指定選手に対して遠征費の一部を助成しているケースもあります。これらの情報は自動的に通知されないことも多いので、自分から情報を取りに行く姿勢が必要です。コーチや先輩保護者に聞いてみるのも良いでしょう。
所属クラブの積立制度や後援会活動
スイミングクラブによっては、選手コースの保護者会で毎月一定額を積み立て、遠征費に充てる制度を設けているところがあります。一気に大きな出費が発生するのを防ぐための仕組みです。もしそういった制度がない場合は、保護者同士で提案して、チーム全体で資金作りのためのバザーを行ったり、地元企業にスポンサー(協賛)をお願いしたりする活動も考えられます。
クラウドファンディングという新たな選択肢
近年では、個人アスリートがクラウドファンディングを利用して遠征費や活動資金を募ることが一般的になりつつあります。インターネットを通じて自分の目標や熱意を発信し、支援者を募る仕組みです。
成功させるためには、魅力的な活動報告やリターン(お礼)の準備など手間はかかりますが、金銭的な支援だけでなく、多くの人に応援してもらえるという精神的な支えを得ることができます。「全国大会で決勝に残りたい」「将来オリンピックに行きたい」という強い想いがあるなら、挑戦してみる価値は十分にあります。
不用品販売などでプチ資金作り
サイズアウトした水着(練習用)、使わなくなったジャージ、読み終わった本などをフリマアプリで販売し、その売上を「遠征費専用貯金」にするのも手軽な資金作りです。特に競泳用品は、中古でも需要がある場合があります(状態によります)。
家の中が片付き、遠征費の足しにもなる一石二鳥の方法です。子供自身に管理させれば、お金の大切さや遠征にかかるコスト意識を育てる教育的な機会にもなります。
まとめ
競泳の遠征費節約について、様々な角度から方法をご紹介しました。大切なのは、単に「ケチる」ことではなく、競技パフォーマンスを落とさずに「無駄を省く」ことです。
最後に、今回のポイントを振り返ります。
競泳遠征費節約のポイント
・早期計画:年間スケジュールを把握し、早割や割引切符を確実にゲットする。
・優先順位:出場する大会を厳選し、メリハリのある予算配分を行う。
・移動の工夫:近場は乗り合わせ、遠方はLCCや3列シートバスを使い分ける。
・宿と食事:会場から少し離れた宿や民泊を活用し、食事はスーパーや持参品で賢く済ませる。
・資金調達:補助金制度の確認や、クラウドファンディングなどの新たな手段も検討する。
遠征費の悩みは尽きませんが、工夫次第で大幅にコストダウンすることは可能です。浮いた費用で新しい高速水着を買ったり、体のケアにお金をかけたりすれば、結果的にタイム向上にもつながります。ぜひ、できることから実践して、充実した競泳ライフを送ってください。



