選手コースの親の負担とは?覚悟すべき費用・時間・サポートを解説

選手コースの親の負担とは?覚悟すべき費用・時間・サポートを解説
選手コースの親の負担とは?覚悟すべき費用・時間・サポートを解説
子供・スクール・選手育成

「お子さん、選手コースに来ませんか?」

スイミングスクールのコーチからそんな言葉をかけられた時、最初に訪れるのは「うちの子が選ばれた!」という喜びではないでしょうか。しかし、その直後に押し寄せてくるのは、「親の負担はどれくらいなんだろう?」「本当にやっていけるのかな?」という現実的な不安です。

水泳の選手コースは、一般的な習い事の枠を超えた「競技の世界」への入り口です。そこには、想像以上の金銭的負担、生活リズムの激変、そして精神的な葛藤が待ち受けています。

この記事では、選手コースのお誘いを受けて迷っている親御さんや、まさに今、負担の重さに悩んでいる方に向けて、選手コースの親が背負う「リアルな負担」について包み隠さず解説します。きれいごと抜きで、費用や時間の現実、そしてそれを乗り越えるための心構えをお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

選手コースで親の負担になる「3大要素」とは?

まず、選手コースに入ると親の生活は一変します。「子どもが頑張るだけ」だと思っていると、その負担の大きさに驚くことになるでしょう。親が覚悟しなければならない負担は、大きく分けて「お金」「時間」「精神面」の3つに集約されます。

湯水のように消えていく「金銭面の負担」

最もわかりやすく、かつボディブローのように効いてくるのが費用の問題です。月謝が高くなるのはもちろんですが、それ以外にかかる「見えないお金」が驚くほど多いのが競泳の世界です。練習頻度が増えれば水着はすぐに摩耗し、大会に出ればエントリー代や交通費がかかり、長期休みには合宿費が飛んでいきます。「年間でこれくらい」と想定していた予算を、あっさりとオーバーしてしまうことも珍しくありません。

親は専属タクシードライバー?「時間面の拘束」

次に待ち受けるのが、時間の拘束です。選手コースの練習は、学校が終わった夕方から夜遅くにかけて、あるいは学校に行く前の早朝に行われます。公共交通機関で通える年齢であっても、防犯面や体調管理(練習後の即時補食や睡眠時間の確保)の観点から、親の送迎が必須となるケースが大半です。土日は大会で埋まり、ゴールデンウィークやお盆休みも練習や合宿で消えるため、「家族旅行」という概念が数年間失われる家庭も少なくありません。

実は一番つらい?「精神面でのサポート」

お金や時間はなんとかなっても、意外と親を追い詰めるのが精神的な負担です。タイムが伸びずに落ち込む我が子を見るつらさ、コーチから厳しく指導されている姿への葛藤、そして「0.1秒」を競うシビアな世界でのプレッシャー。親自身も、他の保護者との人間関係や、「自分のサポートが足りないのではないか」という不安に苛まれることがあります。子供のメンタルケアをするはずの親が、先に参ってしまうこともあるほどです。

想像以上にかかる?金銭面の負担を具体的にシミュレーション

「うちは富裕層ではないけれど、大丈夫かしら?」と心配される方も多いでしょう。ここでは、実際にどのような場面でお金がかかるのか、項目別に詳しく見ていきます。覚悟を決めるための「見積もり」としてご覧ください。

月謝だけではない!毎月・毎年かかる固定費のリアル

選手コースの月謝は、週5〜6回の練習で10,000円〜15,000円程度が相場ですが、強豪クラブや上位クラスになるとさらに上がります。しかし、これはあくまで「基本料金」です。これに加えて、年間登録料(日本水泳連盟への登録など)、暖房費、施設維持費などが徴収されることがあります。

また、意外と重いのが「指定用品」の購入費です。選手コースに上がると、チーム指定のジャージ、Tシャツ、短パン、バッグなどを一式揃える必要があります。これだけで初期費用として3万〜5万円ほどかかることも珍しくありません。子供は成長期ですぐにサイズアウトするため、数年おきの買い替えも発生します。

消耗品地獄?「高速水着」の寿命と価格

競泳の世界で親たちが最も衝撃を受けるのが、レース用水着(通称:高速水着)の値段と寿命です。トップ選手が着るような高機能水着は、1着2万円〜4万円もします。布面積の少ない男子用ですら数万円の世界です。

【高速水着の悲しい現実】

この高価な水着、実は「消耗品」です。撥水加工や着圧機能は、着用するたびに劣化します。「大事な大会でベストを出すためには、数回着たら寿命」と言われることもあります。成長期の子供はサイズも変わるため、年に何着も買い換える必要が出てくるのです。

さらに、日々の練習で使う練習用水着、ゴーグル、シリコンキャップも消耗品です。塩素の強いプールで毎日泳ぐため、生地はすぐに薄くなり、ゴムは劣化します。「またゴーグルが切れた」と言われるたびに、お財布を開く覚悟が必要です。

大会参加費と遠征・合宿費が家計を圧迫

選手コースの醍醐味は大会出場ですが、これには毎回お金がかかります。1種目あたり500円〜1,500円のエントリー代がかかり、1大会で3〜4種目出場すれば数千円。さらに会場までの交通費、朝早い場合の宿泊費、プログラム代、コーチへの引率費などが加算されます。

そして、最大の出費イベントが「合宿」です。春・夏・冬の長期休みに実施される強化合宿は、1回あたり数万円〜高い場合で10万円近くかかります。年に数回の合宿費だけで、家族全員で海外旅行に行ける金額になることも。強くなればなるほど遠征の範囲が広がり(県外、あるいは全国大会)、それに比例して出費も増えていくのが現実です。

費用のシミュレーション(年間イメージ)

ざっくりとしたイメージですが、選手コースの活動にかかる年間費用を想定してみましょう。

項目 金額の目安(年間)
スクール月謝 12〜20万円
大会関連(参加費・交通費) 5〜15万円
合宿・遠征費 10〜30万円
水着・道具代 5〜10万円
合計 32〜75万円

※これはあくまで目安です。クラブの方針やレベルによって大きく異なりますが、数十万円単位の出費は覚悟しておきましょう。

生活リズムが激変する時間的拘束と送迎のリアル

お金は何とか工面できても、どうにもならないのが「時間」です。選手コースに入ると、親の生活スケジュールは全て「水泳中心」に再構築されます。

「スイミング・タクシー」の開業

選手コースの練習時間は、一般コースが終わった後の夜間に行われることが多いです。例えば、夕方18時から20時、場合によっては21時まで練習ということもあります。練習が終わった後の子供はクタクタで、髪も濡れており、体も冷えやすくなっています。特に冬場や夜道の安全を考えると、親の車での送迎がほぼ必須となります。

仕事が終わって急いで帰宅し、軽食を食べさせ、プールへ送り、練習中は車内や観覧席で待機し、終わったら乗せて帰る。帰宅したらすぐに夕食と入浴、寝かしつけ。親自身が一息つく時間はほとんどありません。この「送迎ルーティン」が週5〜6回続くのです。

週末は早朝から場所取り?休日の消滅

「平日は忙しいけど、週末にゆっくりしよう」という考えは、選手コースでは通用しません。週末こそが大会の本番だからです。大会の日は朝が異常に早いです。ウォーミングアップのために朝6時台に会場集合ということも珍しくありません。

親は4時や5時に起きてお弁当を作り、子供を会場まで送ります。さらに、保護者の役割として、観覧席の場所取りや、テントの設営、計時役員(ストップウォッチでタイムを計る係)などのボランティアを求められることもあります。自分の子供の出番は一瞬ですが、朝から夕方まで丸一日拘束されるのが常です。

家族旅行のスケジュールが組めない

ゴールデンウィーク、夏休み、冬休み、年末年始。世間がレジャーを楽しむ時期は、水泳選手にとっての「書き入れ時」です。強化練習や合宿が集中するため、家族揃っての長期旅行は極めて困難になります。

もし下に兄弟がいる場合、兄弟にも我慢をさせることになります。「お兄ちゃんの水泳があるから旅行に行けない」という不満が出ないよう、兄弟へのフォローも親の大切な仕事になります。家族全員のカレンダーが、スイミングの予定表に支配される日々が続くのです。

食事管理と体調管理は親の腕の見せ所

トップアスリートを目指すわけではなくても、選手コースに入れば体はアスリート並みに酷使されます。ここで親の「サポート力」が最も問われるのが、食事と体調管理です。

練習量に見合った「爆食」サポート

水泳は全身運動であり、水の抵抗や体温調節で驚くほどのカロリーを消費します。練習量が増えた子供は、今まで通りの食事量ではエネルギー不足(ガス欠)になり、痩せてしまったり、タイムが伸び悩んだりします。

親は「栄養士」のような役割を求められます。「練習前におにぎりを食べさせる(補食)」「練習後30分以内にタンパク質と炭水化物を摂らせる」といったタイミングの管理が重要になります。学校から帰宅して練習に行くまでのわずかな時間に食べやすい食事を用意したり、夜遅くの夕食は消化に良いメニューにしたりと、献立作りには頭を悩ませることになります。

終わらないお弁当作り

大会や合宿、そして長期休みの朝練習や二部練習(午前・午後の2回練習)。これらには必ず「お弁当」がついて回ります。しかも、レースの合間に少しずつ食べられるような「エネルギーになりやすく、消化が良いもの」を用意する必要があります。

揚げ物ばかりのガッツリ弁当では、レースで体が重くなってしまいます。うどんやパスタ、おにぎり、バナナ、ゼリー飲料など、スポーツ栄養学を意識したお弁当作りが求められます。コンビニで済ませることも可能ですが、毎日のこととなると栄養バランスや費用の面で手作りを選ぶ親御さんが多いのが実情です。

睡眠時間の確保と怪我のケア

練習で夜遅くに帰宅しても、翌朝は学校があります。宿題をする時間も確保しなければなりません。いかに効率よくお風呂に入らせ、食事を済ませ、少しでも長く寝かせるか。親はタイムキーパーのように子供を急かすことになります。

また、過度な練習による肩や腰の痛み、足のつりなど、怪我のケアも必要です。整体や整骨院への通院が必要になれば、その送迎も親の仕事に加わります。子供の「ここが痛い」というサインを見逃さず、練習を休ませる勇気を持つことも、親の重要な判断力の一つです。

そして何より、風邪を引かせないことが至上命題となります。大事な大会の直前に発熱すれば、数ヶ月の努力が水の泡になるからです。家族全員で手洗い・うがいを徹底し、冬場は加湿器をフル稼働させるなど、家庭内での感染対策にも気が抜けません。

意外と見落としがちな精神面でのサポートと親の心構え

お金や時間は物理的な負担ですが、親の心を最も削るのはメンタル面の負担かもしれません。水泳は個人競技であり、結果が「タイム」という残酷な数字で突きつけられるスポーツだからです。

スランプの我が子にかける言葉が見つからない

選手コースに入った当初は、練習すればするほどタイムが縮まり、親子共に楽しい時期が続くでしょう。しかし、必ず「スランプ」が訪れます。数ヶ月、あるいは1年以上ベストタイムが出ない時期もあります。

周りのライバルや、後から入ってきた子に抜かされていく悔しさ。大会の帰りの車内、無言で涙を流す我が子に、どんな言葉をかければいいのか。励ますべきか、そっとしておくべきか。親としての正解がわからず、一緒に苦しむことになります。子供のイライラや八つ当たりを受け止める「サンドバッグ」になる覚悟も時には必要です。

「第二のコーチ」にならないこと

熱心な親御さんほど陥りやすい罠が、親が「コーチ」になってしまうことです。観覧席から見ていて、「もっとキックを強く!」「ターンの入りが遅い!」など、技術的なアドバイスをしたくなる気持ちは痛いほどわかります。

しかし、これは絶対NGです。

技術的な指導はプロであるコーチの領分です。親が口出しをすると、子供はコーチと親のどちらの言うことを聞けばいいのか混乱し、コーチとの信頼関係も崩れてしまいます。家では水泳の話はあえてせず、リラックスできる環境を作ること。親の役割は「指導」ではなく、美味しいご飯とふかふかの布団を用意する「安心基地」であることに徹するのが、長く続ける秘訣です。

保護者同士の人間関係(スイミング・ママ友事情)

避けて通れないのが、保護者同士の付き合いです。観覧席では「〇〇ちゃんのママ」として認識され、狭いコミュニティが形成されます。情報交換ができる心強い仲間になる一方で、子供のタイムやクラスの昇格・降格が絡むため、微妙な嫉妬や競争意識が生まれることもあります。

「あの子はコーチに気に入られているから速い」といった根拠のない噂話や、大会での席取りなどのローカルルールに巻き込まれることも。適度な距離感を保ち、子供の競技生活に親の人間関係を持ち込まない賢さが求められます。

選手コースに入る前に確認しておきたいチェックリスト

ここまで、選手コースの親の負担について厳しい現実をお伝えしてきました。それでも、子供が「やりたい!」と言った時、GOサインを出すべきかどうか。最終判断をする前に、以下のポイントを家族で確認してみてください。

子供自身の「熱量」は本物か?

一番大切なのは、子供自身が「速くなりたい」「選手になりたい」と強く思っているかどうかです。「コーチに誘われたから」「友達もやるから」「親が喜ぶから」という理由では、過酷な練習には耐えられません。親が先走っていないか、一度冷静になって子供の目を見て話し合いましょう。「練習はキツイよ?」「遊ぶ時間は減るよ?」とデメリットを伝えても、なお「やりたい」と言うなら、応援する価値があります。

家族全員の協力体制はあるか?

送迎を誰が担当するのか、母親だけに負担が偏らないか、父親は大会の応援やサポートに協力的か。また、兄弟がいる場合は彼らのケアをどうするか。選手コースは「家族の総力戦」です。誰か一人が犠牲になるシステムは長続きしません。祖父母のサポートが得られるかどうかも含め、具体的な分担を決めておく必要があります。

「辞める勇気」を持っておく

始める前に「辞めどき」を考えておくことも大切です。「中学受験が本格化するまで」「タイムが〇〇秒切れなかったら」など、ある程度の区切りをイメージしておきましょう。また、子供が精神的に追い詰められたり、怪我が続いたりした場合には、スパッと辞める選択肢を親が持っておくことで、心に余裕が生まれます。選手コースに入ることがゴールではなく、水泳を通じて子供が成長することが目的なのですから。

まとめ:選手コースの親の負担は大きいけれど、得られる感動もプライスレス

まとめ
まとめ

選手コースにおける親の負担について解説してきました。正直なところ、金銭的にも時間的にも、そして精神的にも、その負担は並大抵のものではありません。「親の修行」と言われることさえあります。

しかし、それだけの負担を背負ってでも、多くの親がサポートを続ける理由があります。

それは、0.1秒を縮めるために必死に努力する我が子の姿や、ベストタイムを出した時の輝くような笑顔、そして悔し涙を流しながら成長していく過程を、一番近くで見守れるからです。大会の招集所に向かう子供の小さな背中を見送る時のドキドキ感や、タッチ板に触れた瞬間の電光掲示板を見る瞬間の高揚感は、選手コースの親だけが味わえる特権です。

【最後に伝えたいこと】

負担は確かに大きいですが、それは子供が親を必要としてくれている期間が「濃密」になるということでもあります。子供が大きくなれば、親の出番は自然と減っていきます。選手コースでの数年間は、親子で一つの目標に向かって走る、かけがえのない宝物の時間になるはずです。

覚悟が決まったなら、あとは親も一緒に楽しむだけです。完璧なサポートを目指さず、手抜きできるところは手抜きしながら、お子さんの「水泳人生」を応援してあげてくださいね。

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