冬の訪れとともに、「プールに行きたいけれど、寒くてどうしても足が遠のいてしまう」という悩みをお持ちではありませんか。
外の気温が下がるだけでなく、着替えの瞬間やプールサイドでの移動中、さらには水から上がった後の冷えなど、冬の水泳には「寒さ」という大きなハードルがあります。
しかし、しっかりとした知識と準備さえあれば、冬のプールは決して辛い場所ではありません。むしろ、人が少なく快適に泳げる絶好のシーズンとも言えます。
この記事では、水泳愛好家から初心者の方まで実践できる、効果的な寒さ対策を網羅しました。今日からすぐに取り入れられる工夫で、冬もポカポカと快適なスイミングライフを楽しみましょう。
なぜ冬のプールは寒い?原因を知って対策しよう

そもそも、なぜ温水プールであるにもかかわらず、冬場は「寒い」と感じてしまうのでしょうか。その原因を正しく理解することで、より効果的な対策が打てるようになります。
単に「気温が低いから」という理由だけではなく、水泳特有の物理的な現象が体温を奪っているのです。
「気化熱」が体温を奪う最大の敵
冬のプールで寒さを感じる最大の原因は、実は水温そのものではなく「気化熱」にあります。気化熱とは、水分が蒸発するときに周囲の熱を奪う現象のことです。
お風呂上がりに体が濡れたままだと急激に冷えるのと同様に、プールから上がって肌が空気に触れた瞬間、体の表面の水分が蒸発し、体温を一気に奪い去ります。
特に冬場は空気が乾燥しているため、水分の蒸発が促進されやすく、夏場以上にこの気化熱の影響を強く受けてしまうのです。水中にいる時よりも、プールサイドに上がった時の方が寒く感じるのはこのためです。
水温と室温のギャップによる冷え
多くの温水プールでは、水温は年間を通して30度前後に保たれています。これは運動するには適温ですが、人間の体温(約36度)よりは低いため、水に入っているだけで徐々に体温は奪われていきます。
さらに問題なのは室温とのギャップです。施設によっては、暖房が効いていても足元が冷えていたり、換気のために外気が入りやすかったりすることがあります。
水温と室温のバランスが崩れていると、体温調節機能に負担がかかり、より一層寒さを敏感に感じるようになります。特に更衣室からプールサイドへの移動通路などは、意外な「冷えスポット」になっていることが多いので注意が必要です。
体が冷えやすいタイミングを把握する
寒さ対策を効率よく行うには、「いつ体が冷えるのか」を把握しておくことが大切です。一般的に最も寒さを感じるのは以下のタイミングです。
・更衣室で水着に着替えた直後
・シャワーを浴びてからプールに入るまでの移動中
・練習の合間の休憩時間(プールサイドに上がっている時)
・練習終了後、採暖室から更衣室へ戻る時
泳いでいる最中は筋肉が熱を生み出しているため寒さを感じにくいですが、動きが止まった瞬間や、水から出ている部位が冷やされた時に急激に寒さが襲ってきます。
この「魔のタイミング」に対策を集中させることが、冬のプールを快適に過ごすポイントになります。
水着やウェアで変わる!装備による防寒術

精神論で寒さを我慢するのは得策ではありません。今は便利な防寒アイテムがたくさん販売されています。
いつもの水着やキャップを少し見直すだけで、体感温度は劇的に変わります。ここでは、冬のプールにおすすめの装備について詳しく解説します。
保温水着(サーマル水着)の実力とは
寒さが苦手な方に最もおすすめしたいのが、「保温水着」と呼ばれるアイテムです。通常の競泳水着は薄くて水の抵抗を減らすように作られていますが、保温水着はまったく別の発想で作られています。
多くはウェットスーツと同じような「クロロプレーンゴム」などの素材が使われており、生地自体に厚みと断熱性があります。
これにより、冷たい水が直接肌に触れる感覚を和らげ、体温を外に逃がさない効果が期待できます。まるで温かい膜で体を覆っているような感覚で、一度使うと冬場は手放せなくなる人も多い優秀なアイテムです。
浮力があるタイプも多いため、体が沈みやすい初心者の方にも泳ぎやすいというメリットがあります。
ラッシュガードの活用法と注意点
日焼け対策として夏によく使われるラッシュガードも、冬の防寒対策として役立ちます。ただし、選び方と使い方には少しコツがいります。
通常の薄手のラッシュガードは、濡れた状態でプールサイドに上がると、水分を含んだ布が肌に張り付き、かえって体を冷やしてしまうことがあります。冬場に選ぶなら、裏起毛タイプや撥水加工がされた厚手のものがおすすめです。
また、水中では温かくても上がると寒い場合は、泳ぐ時だけ着用し、プールから上がったらすぐに脱げるように、前開きのファスナータイプを選ぶと便利です。
シリコンキャップで頭部からの放熱を防ぐ
意外と見落としがちなのが「頭」からの放熱です。頭部は血管が多く集まっているため、ここが冷やされると全身の冷えにつながります。
メッシュ素材のスイムキャップは通気性が良く夏には最適ですが、冬場は水を通さない「シリコンキャップ」に変えることを強くおすすめします。
シリコンキャップは断熱性が高く、頭が水に直接触れるのを防いでくれます。さらに保温性を高めたい場合は、メッシュキャップの上からシリコンキャップを被る「2枚重ね」というテクニックもあります。
耳までしっかり隠れる被り方をすれば、耳の奥がキーンとなる冷たさも軽減できます。
休憩中や移動時に役立つ「スイムポンチョ」
プールサイドでの休憩中や、採暖室への移動中に活躍するのが「スイムポンチョ」や「タオルローブ」です。
濡れた体の上からサッと羽織るだけで、気化熱による冷えを強力にブロックしてくれます。特にマイクロファイバー素材などの吸水速乾性に優れたものであれば、水気を吸い取りながら保温もできて一石二鳥です。
フード付きのものを選べば、濡れた髪や頭部もカバーできるため、体感温度はかなり上がります。休憩時間が長いレッスンの待ち時間などには必須のアイテムと言えるでしょう。
練習前と練習中の工夫で体を冷やさない方法

良い装備を整えたら、次は行動での対策です。練習の前後や最中のちょっとした行動パターンを変えるだけで、寒さを感じにくくすることができます。
ここでは、プールの現場で実践できる具体的なテクニックをご紹介します。
入水前のシャワーは「熱め」でしっかり浴びる
プールに入る前のシャワーは、単に汚れを落とすだけでなく、体を温めるための重要な「儀式」と捉えましょう。
少し熱めの温度設定で、首筋や肩甲骨周り、腰など、大きな血管が通っている部分を重点的に温めます。こうすることで血行が良くなり、冷たい水に入った時のショック(ヒートショック)を和らげることができます。
体が芯まで温まった状態で入水すれば、泳ぎ始めの数分間の寒さを大幅に軽減でき、スムーズに練習に入ることができます。
休憩中は「水中に留まる」か「すぐに動く」
泳いでいる最中は筋肉が熱を発していますが、止まるとすぐに体温は下がり始めます。特に気をつけたいのが、メニュー間の休憩時間です。
プールサイドに上がって休憩すると、気化熱で一気に体が冷えてしまいます。可能な限り、肩まで水に浸かった状態で休憩することをおすすめします。水温が30度あれば、空気中で濡れた体でいるよりは温かく過ごせます。
もしプールサイドに上がる必要がある場合は、じっとしているのではなく、腕を回したり軽くジャンプしたりして、筋肉を動かし続けるようにしましょう。
運動強度を保つ泳ぎ方のコツ
冬場は「のんびり長く泳ぐ」よりも、「少し負荷をかけてテキパキ泳ぐ」スタイルの方が体温維持には向いています。
心拍数が少し上がる程度の運動強度を保つことで、体内から熱が発生し続けます。インターバル(休憩時間)を短めに設定したり、ダッシュを取り入れたりして、体が冷える隙を与えないメニュー構成にするのがコツです。
特にウォーキングをする方は、泳ぐ人に比べて運動量が低くなりやすいため、腕を大きく振ったり、膝を高く上げたりして、意識的に運動量を増やす工夫が必要です。
プールから上がった直後のケアが重要

練習が終わった直後は、寒さ対策の最重要局面です。ここでいかに手際よく行動できるかで、その後の快適さや風邪のリスクが決まります。
更衣室に戻るまでの時間を「戦い」と捉え、素早いケアを心がけましょう。
素早く水分を拭き取るタオル選び
プールから上がったら、1秒でも早く体の水分を拭き取ることが鉄則です。この時、普通のバスタオルではなく「セームタオル(吸水タオル)」を使うのがベストです。
セームタオルは絞れば何度でも吸水力が復活するため、プールサイドで全身の水分をほぼ完全に拭き取ることができます。ロッカーに行く前に、プールサイドの段階で体を乾いた状態にしておくことが、湯冷めを防ぐ最大のポイントです。
髪の毛の水分もしっかり吸い取っておくことで、更衣室への移動中に頭が冷えるのを防げます。
温かいシャワーとジャグジーの活用
練習後は、冷えた体を温め直すことが大切です。温水シャワーを浴びる際は、単に流すだけでなく、体が芯から温まるまで少し時間をかけましょう。
施設にジャグジーや採暖室がある場合は、必ず利用しましょう。ただし、長居しすぎて汗をかいてしまうと、着替えた後にまた「汗冷え」を起こす可能性があります。
着替えの手順と体を温めるウェア
更衣室では、着替えのスピードが命です。あらかじめ着替えやすい順番に服をセットしておくとスムーズです。
冬場の着替えでおすすめなのは、吸湿発熱素材のインナーや、裏起毛のスウェットなどです。肌着が濡れた肌に触れると冷たく感じるため、ベビーパウダーをはたいて肌をサラサラにしてから着替えるという裏技もあります。
また、靴下を早めに履くのもポイントです。足元を温めることで、全身の温まり方が早くなります。厚手の靴下を用意しておきましょう。
髪の毛を完全に乾かす重要性
意外と適当に済ませがちなのが、髪の乾燥です。「少し湿っているけど帽子を被るからいいや」というのは危険です。
頭皮が濡れていると、帰宅中に頭部から熱が奪われ続け、頭痛や風邪の原因になります。ドライヤーを使って、地肌までしっかりと乾かしきりましょう。
女性で髪が長い場合は、吸水性の高いタオルキャップを被って帰るのも有効な手段ですが、基本はドライヤーで完走させることが理想です。
食事と生活習慣で寒さに強い体を作る

ここまでは物理的な対策を中心にお伝えしましたが、体の内側から熱を生み出す力を高めることも重要です。
食事や日頃の習慣を見直して、寒さに負けない燃焼ボディを作りましょう。
泳ぐ前のエネルギー補給
空腹状態でプールに入ると、体が熱を生み出すためのエネルギーが不足し、より寒さを感じやすくなります。
泳ぐ30分〜1時間前には、バナナやおにぎりなどの消化の良い炭水化物を軽く摂取しておきましょう。エネルギーが満タンの状態であれば、運動による熱産生がスムーズに行われ、体温を高く保つことができます。
また、アミノ酸系のサプリメントも、脂肪燃焼を助け体温上昇に寄与すると言われています。
泳いだ後の温かい飲み物と食事
練習後は、温かい飲み物で内臓から体を温めましょう。自動販売機で温かいお茶やココアを買うのも良いですが、保温ボトルに生姜湯やホットレモネードを入れて持参するのもおすすめです。
特に生姜やシナモンなどのスパイスは、血行を促進し体を温める効果が高い食材です。
帰宅後の食事では、鍋料理やスープなど、汁物を取り入れると良いでしょう。タンパク質をしっかり摂ることで、筋肉の回復を助けるとともに、食事誘発性熱産生(食事をすることで熱が生まれること)を高めることができます。
普段の基礎代謝アップ
寒さに強い体を作るには、基礎代謝を上げることが欠かせません。基礎代謝が高い人は平熱が高く、冷たい水の中でも体温を維持しやすい傾向があります。
普段からストレッチを行ったり、湯船にしっかり浸かって入浴したりすることで、基礎体温を上げる努力をしましょう。
メモ:
質の良い睡眠も代謝アップには不可欠です。冬場こそ、しっかり寝て体を休めることが、結果的にプールでの寒さ対策につながります。
まとめ:冬のプールも寒さ対策万全で楽しもう
冬のプールの寒さは、適切な対策を行うことで十分に克服できます。
気化熱を防ぐために素早く拭くこと、保温水着やシリコンキャップなどの便利なアイテムを活用すること、そして練習中のちょっとした行動の工夫。これらを組み合わせることで、驚くほど快適に泳げるようになります。
冬場にプールに通うことは、風邪を引きにくい丈夫な体を作ることにもつながります。また、夏場よりも水が綺麗で空いていることが多いという大きなメリットもあります。
「寒いから」と諦めてしまうのはもったいないことです。今回ご紹介した対策を一つでも多く取り入れて、冬ならではの快適なスイミングライフを満喫してください。
しっかり準備をして、温かいプールで体を動かす爽快感を味わいましょう。



