ディセンディングの意味とは?水泳用語を初心者にもわかりやすく解説

ディセンディングの意味とは?水泳用語を初心者にもわかりやすく解説
ディセンディングの意味とは?水泳用語を初心者にもわかりやすく解説
練習メニュー・プール情報

水泳の練習メニューを見ていると、「DES」や「ディセンディング」という言葉を目にすることがあります。「どういう意味だろう?」と疑問に思ったまま、周りの人と同じように泳いでいるけれど、実は正しいやり方がわかっていないという方は意外と多いものです。

ディセンディングは、初心者から上級者まで、泳ぐ速さや持久力を高めるために非常に効果的なトレーニング方法です。この言葉の意味を正しく理解し、意識して練習に取り組むだけで、あなたの泳ぎは驚くほど変わります。

この記事では、水泳におけるディセンディングの基本的な意味から、具体的な練習方法、そして似たような言葉との違いまで、詳しく丁寧に解説していきます。今日からプールで使える知識を、一緒に身につけていきましょう。

水泳におけるディセンディングの意味と基本

まずは、ディセンディングという言葉の基本的な意味と、実際の練習でどのように行われるのかを見ていきましょう。言葉の響きは難しそうですが、やるべきことは非常にシンプルです。

ディセンディングの定義

ディセンディング(Descending)とは、英語で「下っていく」「降りていく」という意味を持つ言葉です。水泳のトレーニングにおいては、「本数を重ねるごとに、徐々にタイムを縮めていく(速くしていく)」という練習方法を指します。

例えば、50メートルのクロールを4本泳ぐとします。1本目はゆったりとしたペースで泳ぎ、2本目は少し速く、3本目はさらに速く、そして最後の4本目は全力に近いスピードで泳ぐ、といった具合です。階段を降りるようにタイムが数値として小さくなっていく(速くなる)ことから、この名前がついています。

単に全力で泳ぐだけの練習とは異なり、自分でスピードをコントロールする能力が求められます。「今はこれくらいの力加減で泳ごう」「次はもう少しペースを上げよう」と、頭と体を連動させて行うため、非常に質の高い練習ができるのが特徴です。初心者の方にとっては、自分の泳ぐスピードを体感として理解するための、最初の一歩となる重要な練習と言えるでしょう。

具体的な練習メニューの例

では、実際にプールで行われるメニューの例を見てみましょう。ここでは、初心者の方でも取り組みやすい一般的な設定を紹介します。

【例:50m × 4本 1分30秒サークル DES】

・1本目:50秒(余裕を持ってゆっくり)

・2本目:48秒(少し力を入れる)

・3本目:46秒(呼吸を整えつつスピードアップ)

・4本目:44秒(ハード、全力で泳ぐ)

このように、決められたサークル(出発時間)の中で、泳ぐタイムだけを段階的に速くしていきます。休憩時間は、速く泳げば泳ぐほど長くなる傾向にありますが、その分疲労も溜まっていくため、決して楽な練習ではありません。

ポイントは、1本目から全力で泳がないことです。1本目はあくまで「次の本数へつなげるための準備」として、フォームを確認しながら丁寧に泳ぎます。そして、最後の一本でしっかりと出し切ることが、この練習の成功の鍵となります。「最後だけ速ければいい」のではなく、そこに至るまでの「過程」を作り上げることが大切なのです。

練習メニューでの表記方法

水泳の練習メニューは、ホワイトボードや紙に書かれていることが多いですが、そこには独特の略語が使われます。ディセンディングも例外ではありません。コーチやクラブによって多少の違いはありますが、一般的には以下のように表記されます。

主な表記例:
・DES
・Desc
・1-4 Des(1本目から4本目にかけて上げる)
・Des to Max(最後は最大スピードで)

もしメニューに「50×4 1’30” DES」と書かれていたら、「50メートルを4本、1分30秒ごとに出発し、1本ずつタイムを上げていく」と読み解きます。時には「1-3 DES / 4 Easy」のように、「3本目までは上げて、4本目はゆっくり流す」という変則的な指示が出ることもあります。

この表記を見た瞬間に、「あ、これはペース配分を考える練習だな」と判断できるようになれば、あなたはもう練習の意味を理解している立派なスイマーです。メニューの意図を汲み取ることで、ただ泳がされている状態から、自ら考えながら泳ぐ状態へとステップアップできるでしょう。

ディセンディングと他の用語との違い

水泳には、スピードを変化させる練習用語がいくつかあります。特に「ビルドアップ」や「ネガティブスプリット」などは、ディセンディングと混同されやすい言葉です。ここでは、それぞれの違いを明確にし、どのように使い分けるべきかを解説します。

ビルドアップとの違い

「ビルドアップ(Build-up)」は、ディセンディングと最も間違えられやすい用語です。どちらも「だんだん速くする」という意味では同じですが、「どの範囲で速くするか」に決定的な違いがあります。

ディセンディングが「1本目、2本目、3本目」と、本数単位でスピードを上げていくのに対し、ビルドアップは「1本の距離の中で」スピードを上げていきます。

【ビルドアップの例:100m × 1本】

・最初の25m:ゆっくり

・25m〜50m:少しペースアップ

・50m〜75m:さらに加速

・最後の25m:全力ダッシュ

このように、泳ぎ続けている最中にギアを切り替えていくのがビルドアップです。これに対し、ディセンディングは壁にタッチしてタイムを確認し、次のスタートで修正を加えるというプロセスが入ります。

ビルドアップは、レース後半の追い上げや、疲れた状態からスパートをかける能力を養うのに適しています。一方、ディセンディングはペース感覚そのものや、泳ぎの出力をコントロールする能力を養うのに適しています。

ネガティブスプリットとの違い

「ネガティブスプリット(Negative Split)」は、主に長距離や中距離の練習、あるいはレース展開で使われる言葉です。これは、「前半よりも後半を速く泳ぐ」ことを指します。

例えば、100メートルを泳ぐ際に、前半の50メートルを35秒で入り、後半の50メートルを34秒で泳ぐようなケースです。合計タイムの前後半を比較しているため、これは1本の泳ぎの中でのペース配分戦略といえます。

ディセンディングとの違いは、ネガティブスプリットが「1本の泳ぎの中での前後半の比較」であるのに対し、ディセンディングは「別々の本数同士の比較」である点です。もちろん、ディセンディングの練習をしている最中に、各本数をネガティブスプリットで泳ぐという高度な組み合わせも存在しますが、基本的には別物と考えて良いでしょう。

ネガティブスプリットは、レースの後半に失速しないための持久力や、冷静なペース配分を身につけるために非常に有効です。初心者のうちは、どうしても前半に飛ばしすぎて後半バテてしまう「ポジティブスプリット」になりがちなので、この概念を知っておくだけでも泳ぎが変わります。

イーブンペースとの使い分け

「イーブンペース(Even Pace)」は、その名の通り「一定の速度で泳ぎ続ける」ことです。1本目から4本目まで、すべて同じタイム(例えばすべて45秒)で揃える練習などを指します。

ディセンディングが「変化させること」を目的としているのに対し、イーブンペースは「維持すること」を目的としています。これは長距離を楽に泳ぎ続けるためや、自分にとって最も効率の良い巡航速度を見つけるために欠かせない練習です。

練習では、イーブンペースとディセンディングを組み合わせて行うことがよくあります。例えば、「最初の4本はイーブンペースで泳ぎフォームを固め、次の4本はディセンディングで心拍数を上げていく」といったメニューです。

イーブンペースで泳げない(タイムがバラバラになる)状態では、正確なディセンディングを行うことは難しくなります。まずは一定のリズムを刻めるようになり、その上で意図的にリズムを変えるディセンディングへとステップアップしていくのが理想的な習得順序です。

インターバル練習との関係性

少し専門的になりますが、「インターバル練習」と「ディセンディング」の関係についても触れておきましょう。インターバル練習とは、一定の休息を挟みながら、高い強度の運動を繰り返すトレーニングの総称です。

実は、ディセンディングはインターバル練習の一種、あるいはインターバル練習の中で行われる指定方法のひとつと言えます。メニュー全体が「インターバル」という大きな枠組みであり、その中で「どう泳ぐか」の指示として「ディセンディング」が存在するイメージです。

多くのインターバル練習は「すべて同じタイムで頑張る」か「すべて全力で」という形になりがちですが、ここにディセンディングの要素を加えることで、単調さを防ぎ、集中力を高める効果が生まれます。ずっと全力で泳ぎ続けるのは精神的にもきついものですが、「徐々に上げていけばいい」と考えることで、心理的なハードルを下げる効果も期待できます。

また、インターバルのセット内でディセンディングを行うことで、乳酸が溜まってきた状態からさらに体を動かすという、レース終盤を想定した実践的な体力を培うことができます。これが、競泳選手がこぞってこの練習を取り入れる大きな理由の一つです。

ディセンディングを取り入れる3つのメリット

なぜ、多くのコーチやスイマーがディセンディングを練習に取り入れるのでしょうか。単に速く泳ぐ練習をするだけなら、最初から全力で泳げば良いはずです。しかし、あえて「徐々に上げる」ことには、明確なメリットが3つあります。

正しいペース配分(ペースクロック)の感覚が身につく

水泳の上達において、避けて通れないのが「ペースクロック(プールサイドにある大きな時計)」を見る習慣です。ディセンディングを行うには、自分が今何秒で泳いだかを知る必要があります。

「感覚としては軽く泳いだつもりだけど、タイムは40秒だった」「次はもう少し力を入れたら38秒になった」というように、自分の体感と実際のタイムをすり合わせる作業を繰り返すことになります。これが非常に重要です。

初心者のうちは、ガムシャラに泳いでしまいがちですが、この練習を通じて「このくらいの力加減なら、このタイムが出る」という自分の中の基準を作ることができます。これができるようになると、長距離を泳ぐ際もバテないペースを守れるようになりますし、レース本番でも前半から飛ばしすぎて自滅することを防げます。

トップスピードを引き出す準備ができる

いきなり全力で泳ごうとしても、体と神経はすぐには反応してくれません。特に水泳は水の抵抗があるため、力めば力むほどフォームが崩れ、かえって遅くなることもあります。

ディセンディングでは、ゆっくりした動きから徐々にスピードを上げていくため、神経系と筋肉を段階的に目覚めさせることができます。これを「プライミング効果」と呼ぶこともありますが、要するに車のギアをローからトップへとスムーズに入れていくようなものです。

1本目、2本目で良いフォームを確認し、水をつかむ感覚を鋭くしてから、3本目、4本目で出力を上げていく。この手順を踏むことで、いきなりダッシュするよりも、結果的に高いトップスピードを出すことが可能になります。ウォーミングアップの最後にディセンディングがよく取り入れられるのは、このためです。

フォームを崩さずにスピードを上げられる

「速く泳ごう!」と思った瞬間、手足をバタバタと激しく動かしてしまい、フォームがバラバラになってしまった経験はありませんか?これは、スピードに対するフォームの安定性が追いついていない証拠です。

ディセンディング練習の最大の利点は、「きれいなフォームを保ったまま、スピードだけを変化させる」練習ができる点です。1本目のゆっくりした泳ぎで作った「大きなストローク」や「伸びのある姿勢」を維持しつつ、2本目では少しだけテンポを上げる、3本目ではキックを少し強くする、といった微調整を行います。

もし途中でフォームが崩れたり、水がスカスカと抜ける感覚がしたら、それはペースを急激に上げすぎているサインです。その場合は、一度ペースを落としてフォームを修正します。このように、フォームとスピードのバランス調整能力を養うことができるのが、ディセンディングの大きな魅力です。

初心者が実践するためのコツと注意点

これから初めてディセンディングに挑戦する方に向けて、失敗しないためのコツと、気をつけるべきポイントをお伝えします。これさえ押さえておけば、周りのベテランスイマーと同じように効果的な練習ができるようになります。

最初はゆっくり入ることが最重要

ディセンディングで最も多い失敗は、「1本目が速すぎて、その後タイムが上がらなくなる」ことです。例えば4本のディセンディングを行う場合、1本目から「そこそこ頑張って」泳いでしまうと、2本目、3本目で上げる余地がなくなってしまいます。

コツは、自分が思っている以上に、1本目を「遅く」泳ぐことです。「こんなにゆっくりでいいの?」と思うくらいリラックスして、フォームを丁寧に確認しながら泳ぎましょう。余力をたっぷりと残してスタートすることで、後半にかけて気持ちよくタイムを上げていくことができます。

もし4本設定であれば、1本目はウォーミングアップのつもりで、2本目はイーブンペースのつもりで、3本目から少し気合を入れ、4本目で初めて本気を出す。これくらいの心持ちでちょうど良いきれいな階段(ディセンディング)が描けるはずです。

タイムの変化幅(秒数)の目安

「徐々に上げると言われても、具体的に何秒くらい上げればいいの?」と悩む方もいるでしょう。初心者の場合、まずは「1本につき1〜2秒」の短縮を目安にしてみてください。

50メートルプールであれば、1本あたり2秒ずつ上げていくのは比較的わかりやすい目標です。例えば「60秒→58秒→56秒→54秒」といった形です。25メートルプールの場合は距離が短いため、1秒ずつの変化でも十分に立派なディセンディングになります。

慣れてくると、「0.5秒ずつ刻む」といった高度なコントロールもできるようになりますが、最初は細かすぎることにこだわらなくて大丈夫です。「さっきより少し速かったな」「最後はしっかり疲れたな」という感覚が得られれば、練習としては成功です。時計を見るのが難しい場合は、まずは「感覚的なスピードアップ」だけでも十分効果があります。

フォームが崩れない範囲で行う

スピードを上げることだけに意識が向くと、どうしても泳ぎが雑になります。ストロークが短くなったり、呼吸が乱れて苦しくなったりしては本末転倒です。ディセンディングはあくまで「良い泳ぎのまま速くする」練習です。

もし、タイムを上げようとして腕を回す回数だけが極端に増え、ひとかきで進む距離が減っているなら、それは良いディセンディングとは言えません。「ストロークの数は変えずに、力強さだけを増す」あるいは「ストロークのテンポを上げても、水のキャッチは確実に行う」ことを意識しましょう。

「これ以上速くするとフォームが崩れる」という限界点を知ることも練習の一部です。その限界点を少しずつ高いレベルへと押し上げていくイメージを持って、焦らず丁寧に取り組んでください。

レベル別・ディセンディングの活用メニュー

最後に、泳力レベルに合わせたディセンディングの具体的な活用方法を紹介します。自分のレベルに合った設定で練習することで、無理なく着実に実力を伸ばすことができます。

初級者向け:本数を少なく設定する

まだペースクロックを見慣れていない方や、体力の配分が難しい初級者の方は、本数を3本〜4本程度に設定するのがおすすめです。本数が多いと、途中でペース配分がわからなくなったり、体力が尽きてしまったりするからです。

【メニュー例】

・25m × 4本 (サークルは長めに、例えば1分ごと)

・内容:1〜4 DES(ゆっくり → 普通 → 速め → ダッシュ)

サークル(休憩時間)をたっぷりと取ることで、一本ごとに息を整え、時計を確認する余裕が生まれます。まずは「前の1本より速く泳げたか?」という単純なゲーム感覚で楽しんでみてください。成功体験を積み重ねることが、次のステップへの自信につながります。

中級者向け:サークル(サイクル)を短くする

ある程度泳げるようになってきた中級者の方は、サークルタイムを短く設定し、不完全回復の状態でディセンディングを行うことに挑戦してみましょう。これにより、心肺機能への負荷が高まり、持久力アップが期待できます。

【メニュー例】

・50m × 4本 × 2セット (サークルは50秒〜1分など、少しきつめの設定)

・内容:各セット内で 1〜4 DES

休憩が短い中でタイムを上げていくには、無駄な力を使わずにスピードを出す技術が必要です。後半になるにつれて乳酸が溜まり、手足が重くなりますが、そこでフォームを維持しようと努力することで、レース後半の粘り強さが養われます。

上級者向け:セット間ディセンディング

上級者や選手レベルを目指す方は、1本ごとのディセンディングに加えて、セット単位でのディセンディングを取り入れてみましょう。

【メニュー例】

・100m × 3本 を 1セットとし、それを3セット行う(合計9本)

・セット間の休憩は長めに取る

・1セット目の平均タイム < 2セット目の平均タイム < 3セット目の平均タイム

これは「セットディセンディング」とも呼ばれます。1セット目はウォーミングアップ気味に、2セット目はレースペースを意識して、3セット目は限界への挑戦、といったように、非常に高い集中力と体力が求められます。ここまでコントロールできるようになれば、レースのペース配分も自在に操れるようになっているはずです。

まとめ:ディセンディングをマスターして練習の質を高める

まとめ
まとめ

ここまで、水泳の「ディセンディング」について詳しく解説してきました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。

【記事の要点】

●意味:本数を重ねるごとに徐々にタイムを速くしていく練習方法。

●違い:「ビルドアップ」は1本の中での加速、「ディセンディング」は本数間での加速。

●メリット:ペース感覚が養われ、フォームを崩さずにトップスピードを出す準備ができる。

●コツ:1本目を勇気を持ってゆっくり泳ぐことが成功の鍵。

ディセンディングは、ただ漫然と泳ぐ時間を、意味のある濃密なトレーニング時間へと変えてくれる素晴らしい練習方法です。「今日はDESがあるな」と思ったら、それは自分のペース感覚を磨くチャンスだと捉えてください。

最初はうまくタイムが上がらなかったり、計算通りにいかなかったりすることもあるでしょう。しかし、時計を見ながら自分の泳ぎと向き合う時間こそが、あなたをより速く、より美しいスイマーへと成長させてくれます。次回のプールでの練習から、ぜひこのディセンディングを意識して取り組んでみてください。

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