プールで泳いでいると、時計を見ながら黙々と泳ぎ続けている人を見かけたことはありませんか?もしかすると、その人は「インターバルトレーニング」を行っているのかもしれません。水泳の練習方法の中でも、特に効果が高いとされるのがこのトレーニング法です。
インターバルトレーニングは、単に長い距離を泳ぐだけでは得られない「速さ」と「スタミナ」、そして「脂肪燃焼効果」を短時間で効率よく引き出すことができます。しかし、専門用語が多く、初心者には少し敷居が高く感じられることもあるでしょう。
この記事では、水泳のインターバルトレーニングが持つ具体的な効果から、初心者でも実践できるメニューの作り方、そして注意点までをわかりやすく解説します。泳力を伸ばしたい方も、ダイエットを成功させたい方も、ぜひ参考にしてみてください。
水泳のインターバルトレーニングとは?その驚くべき効果

水泳の練習において「インターバルトレーニング」という言葉を耳にすることは多いですが、具体的にどのようなトレーニングで、どのような恩恵があるのでしょうか。ここでは、その基本的な仕組みと、身体や精神に与えるプラスの効果について詳しく掘り下げていきます。
そもそもインターバルトレーニングとは何か
インターバルトレーニングとは、一定の距離を全力に近いスピードで泳ぐ「運動区間」と、短い休憩を挟む「休息区間(レスト)」を交互に繰り返す練習方法のことを指します。ずっと同じペースで泳ぎ続ける「長距離泳(ロング)」とは異なり、心拍数を上げたり下げたりすることで身体に強い負荷をかけるのが特徴です。
例えば、「25メートルを泳いで10秒休む」という動作を10回繰り返すのも立派なインターバルトレーニングです。休憩を挟むことで、完全に疲労が回復する前に次の泳ぎをスタートさせるため、身体は常に「少しきつい」状態を維持することになります。この「不完全回復」の状態を利用してトレーニングを行うことが、最大のポイントと言えるでしょう。
陸上のマラソンランナーなどが取り入れている手法ですが、水泳においても非常にポピュラーで、トップスイマーから市民スイマーまで幅広く実践されています。短時間で高い運動効果が得られるため、忙しい現代人にも適したトレーニング方法といえます。
心肺機能が強化され持久力がアップする
インターバルトレーニングの最も代表的な効果の一つが、心肺機能の向上です。休憩時間が短いため、呼吸が整う前に次のスタートを切らなければならず、心臓と肺には大きな負荷がかかります。これによって、酸素を体内に取り込み、全身に送り届ける能力が飛躍的に高まります。
継続して行うことで、最大酸素摂取量(VO2max)が向上し、いわゆる「体力がつく」状態になります。今まで50メートル泳いだだけで息切れしていた人が、100メートル、200メートルと続けて泳げるようになるのは、この心肺機能の強化による影響が大きいです。
また、心臓のポンプ機能が強くなることで、日常生活でも疲れにくくなったり、階段の上り下りが楽になったりと、水泳以外の場面でもその効果を実感できることが多いでしょう。スタミナ不足を感じている方には、まさにうってつけの練習方法です。
スピードを維持する力が自然と身につく
「速く泳ぎたいけれど、後半になるとバテて失速してしまう」という悩みを持つスイマーは少なくありません。インターバルトレーニングは、こうしたスピード持久力の養成にも非常に効果的です。一定のペースを守りながら本数を重ねることで、疲れた状態でもフォームを崩さずに泳ぐ力が養われます。
トレーニングの中では、1本目と同じようなタイムで、最後の1本まで泳ぎ切ることが目標とされます。筋肉に疲労物質(乳酸)が溜まった状態でも、脳と神経、そして筋肉をコントロールして泳ぎ続ける能力が開発されるのです。これは、レース後半の粘り強さに直結します。
単にゆっくり長く泳ぐ練習だけでは、速いスピードで泳ぐための筋力や神経系は刺激されにくいものです。インターバルを取り入れることで、スピードを出した状態での身体の使い方を覚え、それを長時間維持する「スピード持久力」を手に入れることができます。
短時間で効率的に脂肪燃焼!ダイエット効果
ダイエット目的で水泳をしている人にとっても、インターバルトレーニングは強力な味方となります。有酸素運動である水泳はもともとカロリー消費が高いですが、インターバルを取り入れることで運動強度が上がり、さらに消費エネルギーが増大します。
高強度の運動を行うと、トレーニングが終わった後も身体の代謝が高い状態が続く「アフターバーン効果(EPOC:運動後過剰酸素消費)」が期待できます。つまり、プールから上がって着替えて家に帰っている間も、脂肪が燃えやすい状態が続くということです。これはゆっくり泳ぐだけでは得にくいメリットです。
また、心拍数を上げて泳ぐことで交感神経が刺激され、脂肪分解ホルモンの分泌が促されるとも言われています。短い時間でしっかりと身体を追い込むことができるため、「今日は時間がないけれど運動したい」という日でも、短時間で十分なダイエット効果を得ることが可能です。
苦しさを乗り越える精神力と集中力の向上
インターバルトレーニングは肉体的な効果だけでなく、精神的な成長も促します。「あと3本泳がなければならない」「息が苦しいけれどペースを落としたくない」という葛藤の中で、自分自身を鼓舞して泳ぎ切る経験は、強いメンタルを育てます。
特に、設定したタイムを守り切った時の達成感は格別です。「自分はこれだけの練習をやり遂げた」という自信は、レース本番や日常生活での困難な場面においても、大きな支えとなるでしょう。自分に厳しく向き合う時間は、集中力を高めるトレーニングにもなります。
水泳は水の中という孤独な環境で行うスポーツです。その中で自分の限界に挑戦し続けるインターバルトレーニングは、己との対話でもあります。苦しさを乗り越えた先にある爽快感を知ると、水泳というスポーツがより深く、楽しいものに変わっていくはずです。
知っておきたい基本用語とトレーニングの仕組み

インターバルトレーニングを始めようとしたとき、最初に戸惑うのが専門用語や時計の見方です。「サークル」や「レスト」といった言葉の意味を正しく理解し、自分でメニューを組み立てられるようになると、練習の質がグッと上がります。ここでは基本的な仕組みを解説します。
「サークル(サイクル)」の意味と設定方法
水泳のメニュー表を見ると、「1分サークル」や「1’00″」といった表記がよく使われています。これは「泳ぐ時間」と「休憩時間」を合わせた、1本あたりの持ち時間を意味します。「サイクル」と呼ばれることもありますが、意味は同じです。
【例:50m×4本 1分15秒サークルの場合】
1本目のスタートから、2本目のスタートまでの時間が「1分15秒」ということです。
・もし50mを55秒で泳いだら、残りの20秒が休憩時間になります。
・もし50mを1分05秒で泳いだら、残りの10秒しか休憩できません。
・1分15秒を過ぎてしまったら、休憩なしですぐに次をスタートするか(アウト)、練習が成立しなくなります。
つまり、速く泳げば泳ぐほど休憩時間が長くなり、遅くなると休憩が減って苦しくなるのがサークルトレーニングの仕組みです。このゲーム性が、練習への集中力を高めてくれます。
サークルの設定方法は、自分の平均的なタイムに「10秒〜20秒」程度の余裕を持たせた時間が一般的です。例えば、50mを普段50秒で泳ぐ人なら、1分00秒サークルや1分10秒サークルから始めてみると良いでしょう。
休憩時間「レスト」の適切な取り方
「サークル」という考え方が難しい場合や、初心者の方におすすめなのが「固定レスト」方式です。これはシンプルに、「泳ぎ終わってから一定時間休む」という方法です。
例えば、「25m泳いだら、必ず10秒休んでから次をスタートする」というルールにします。これなら、泳ぐスピードが速くても遅くても、身体を休める時間を確保できます。時計の秒針が「12(0秒)」や「6(30秒)」に来たタイミングでスタートする、というやり方も計算しやすくおすすめです。
適切なレスト時間は、練習の目的によって変わります。持久力を高めたい場合は、心拍数が下がりきらないように短め(5秒〜15秒)に設定します。逆に、スピードを爆発させたい場合は、しっかりと回復させるために長め(30秒〜1分以上)のレストを取ることもあります。
セット数と本数の基本的な考え方
トレーニングの全体像を作るのが「本数」と「セット数」です。同じ距離を何回泳ぐかを表すのが「本数」、そのまとまりを何回行うかを表すのが「セット数」です。
一般的には、「距離 × 本数 × セット数」と表記されます。例えば「50m × 8本 × 2セット」であれば、まず50mを8回繰り返し、その後少し長めの休憩(セット間休憩)を挟んで、もう一度50mを8回行うことになります。
初心者の場合は、まずは1セットから始めましょう。「25m × 4本」を1セットとして、慣れてきたら8本に増やしたり、2セットに増やしたりして負荷を調整します。セット数を分けることで、途中で集中力をリセットしたり、泳ぐ種目を変えたりといった工夫が可能になります。
効果を高めるための「心拍数」の管理方法
インターバルトレーニングの質を左右するのが「心拍数」です。どれくらい身体に負荷がかかっているかを客観的に知る指標になります。水泳では、首筋(頸動脈)や手首に指を当てて、10秒間の脈拍を数え、それを6倍して1分間の心拍数を推測するのが一般的です。
効果的なトレーニングのためには、泳ぎ終わった直後の心拍数が、自分の最大心拍数(簡易計算で「220 – 年齢」)の70%〜80%程度になっていることが目安です。例えば40歳の方なら、最大心拍数は約180ですので、練習直後に脈拍が126〜144程度(10秒間で21〜24回)になっていると、良いトレーニングができている証拠です。
最近では防水のスマートウォッチが普及しており、泳ぎながらリアルタイムで心拍数を計測できるため、これらを活用するのも非常に有効です。心拍数が上がりすぎている場合は危険信号ですので、無理せずペースを落とす判断材料にもなります。
レベル別・すぐに実践できるインターバルメニュー

理論がわかったところで、実際にプールで試せる具体的なメニューを紹介します。自分の泳力レベルに合わせて、無理のない範囲からスタートしてください。すべてのメニューにおいて、準備体操とウォーミングアップは十分に行った上で実施しましょう。
初心者向け:無理なく続ける25mメニュー
まだ長い距離を泳ぎ続ける自信がない方や、インターバル練習が初めてという方は、25mプールを活用したショートインターバルから始めましょう。サークルタイムを気にしすぎず、一定のリズムで泳ぐことを目指します。
このメニューの目的は、インターバルのリズムに慣れることです。「泳ぐ→休む→泳ぐ」というサイクルを身体に覚えさせましょう。息が上がりすぎる場合は、休憩時間を15秒や20秒に延ばしても構いません。まずは8本泳ぎ切ることを目標にします。
中級者向け:50mでスタミナをつけるメニュー
50mや100mを連続して泳げるようになってきたら、本格的なサークル練習に挑戦です。ここでは50mをベースにした、持久力アップのためのメニューを紹介します。
例えば、50mを平均60秒で泳ぐ人なら、1分20秒サークルに設定します。これなら毎回20秒程度の休憩が確保できます。もし後半バテて休憩が5秒しかなくなってしまう場合は、サークル設定が厳しすぎるか、前半飛ばしすぎている可能性があります。一定のペース(イーブンペース)を刻む練習として最適です。
上級者向け:高強度で追い込むハードメニュー
大会に出場する方や、さらなるレベルアップを目指す方向けのトレーニングです。ここでは「Des(ディセンディング)」という手法を取り入れます。これは、本数を重ねるごとに徐々にタイムを上げていく練習法です。
セット間に2分程度の完全休息を入れます。疲労が蓄積した状態でスピードを上げる必要があるため、精神的にも肉体的にもハードです。しかし、これを乗り越えることで、レース後半の「競り勝つ強さ」が養われます。サークルタイムは自分の実力に合わせて厳しく設定してみてください。
泳法を変えて飽きずに楽しむアレンジ方法
ずっとクロールばかりでは飽きてしまう、または全身をバランスよく鍛えたいという場合は、個人メドレーの順番(バタフライ・背泳ぎ・平泳ぎ・クロール)を取り入れるのがおすすめです。
【アレンジ例:25m × 8本(各種目2本ずつ)】
1-2本目:バタフライ
3-4本目:背泳ぎ
5-6本目:平泳ぎ
7-8本目:クロール
このように種目を変えることで、使う筋肉が分散され、局所的な疲労を防ぐことができます。特にダイエット目的の場合は、様々な泳法を行うことで全身の筋肉をくまなく刺激できるため、シェイプアップ効果が高まります。苦手な種目がある場合は、その部分だけクロールやビート板キックに置き換えてもOKです。
インターバルトレーニングを行う際の重要なポイント

インターバルトレーニングは効果が高い反面、やり方を間違えると効果が半減したり、悪い癖がついたりすることもあります。ここでは、トレーニングの質を最大限に高めるために意識すべき3つのポイントを解説します。
最後まで崩れないフォームを意識する
最も重要なのは「フォームを崩してまで速く泳ごうとしない」ことです。疲れてくると、どうしても腰が下がったり、腕のかきが小さくなったり、呼吸が乱れたりします。しかし、乱れたフォームで何本泳いでも、それは「乱れた泳ぎ」を身体に記憶させているようなものです。
「きつい時こそ丁寧なフォームで」と自分に言い聞かせましょう。ストローク数を数えながら泳ぐのも有効です。1本目を20かきで泳いだなら、疲れてきた8本目も20かき前後で泳げるようにコントロールします。これが実践的な泳力向上につながります。
頑張る時と流す時のメリハリをつける
全ての練習を全力で行う必要はありません。トップ選手でも、強度の高い日と低い日を分けて調整しています。インターバルトレーニングを行う日は「今日は頑張る日」と決めて集中し、逆に疲れが溜まっている日はゆっくり長く泳ぐリカバリーの日にするなど、メリハリが大切です。
また、1つのメニューの中でもメリハリは作れます。例えば「奇数本目はハード(頑張る)、偶数本目はイージー(流す)」というように設定すれば、質の高いダッシュ練習とフォーム確認を交互に行うことができます。メリハリをつけることで、怪我のリスクも減らすことができます。
タイムを計測して成長を可視化する
トレーニングの効果を実感するためには、記録をつけることをおすすめします。プールの壁にあるペースクロックを見る癖をつけましょう。「今日は50mを平均45秒で回れた」「前回よりサークルを5秒短くできた」といった具体的な数字は、モチベーション維持に不可欠です。
可能であれば、防水のノートやスマートフォンのメモ機能を使って、練習内容とタイムを記録しておくと良いでしょう。1ヶ月後、3ヶ月後に見返したとき、自分の成長がはっきりとわかり、水泳がもっと楽しくなるはずです。
よくある失敗と注意点・リスク管理

最後に、インターバルトレーニングを安全に行うための注意点をお伝えします。特に初心者が陥りやすい失敗や、水中ならではのリスクについて理解しておきましょう。
頑張りすぎによるオーバーワークと怪我
やる気がある時ほど、無理な設定で泳ぎすぎてしまう傾向があります。しかし、肩や腰への負担は、水中では気づきにくいものです。陸上と違って着地衝撃がないため痛みを感じにくいですが、関節の炎症(スイマーズショルダーなど)は徐々に進行します。
「肩に違和感がある」「泳ぎ終わった後に痛みが引かない」といった場合は、勇気を持って練習を中断し、休息を取りましょう。週に2〜3回程度のインターバルトレーニングでも十分な効果があります。毎日のように高強度で行うのは避け、身体の回復を待つこともトレーニングの一環です。
水分補給を忘れがちな水中ならではの盲点
水中では汗をかいている感覚がほとんどありませんが、インターバルトレーニングのような激しい運動中には、驚くほどの水分が失われています。脱水症状になると、足がつりやすくなったり、急激に気分が悪くなったりする危険があります。
プールサイドには必ずドリンクボトルを持参し、練習の合間(セット間の休憩など)にこまめに水分補給を行いましょう。喉が渇いたと感じた時には、すでに脱水が始まっていると言われます。「渇きを感じる前に飲む」を鉄則にしてください。
サークル設定が厳しすぎてフォームが乱れる時
目標を高く設定するのは良いことですが、休憩が全く取れなくなるようなサークル設定は逆効果になることがあります。常に溺れるような必死さで泳いでいると、水の抵抗を減らすテクニックよりも、ただ腕を振り回すだけの体力勝負になってしまいます。
もし設定したサークルが回れない場合は、素直に設定時間を5秒〜10秒伸ばしましょう。余裕を持って正しいフォームで泳ぎ、確実に休憩を取る方が、長期的には泳力アップにつながります。自分のレベルに合った設定を見つけることが、上達への近道です。
まとめ:水泳のインターバルトレーニングで理想の体と泳力を手に入れる
水泳のインターバルトレーニングについて、その効果や具体的な実践方法を解説してきました。要点を振り返ってみましょう。
- 高いトレーニング効果:心肺機能の向上、スピード持久力の強化、そして高い脂肪燃焼効果が期待できます。
- 基本の仕組み:全力に近い泳ぎと短い休憩を繰り返すことで、身体に「不完全回復」の状態を作り出し、負荷をかけます。
- メニューの作り方:「サークル」や「レスト」を自分の泳力に合わせて調整し、無理のない設定から始めることが大切です。
- 質の向上:ただ本数をこなすだけでなく、フォームを維持すること、心拍数を意識することで効果が最大化します。
- 安全第一:水分補給やオーバーワークへの配慮を忘れず、楽しく継続できるペースを守りましょう。
インターバルトレーニングは、最初はきつく感じるかもしれません。しかし、そのきつさを乗り越えた先には、以前よりも楽に、速く、長く泳げるようになった新しい自分が待っています。ダイエット目的の方も、記録更新を目指す方も、ぜひ次回のプール練習から取り入れてみてください。

