クロールで一生懸命腕を回しているのに、思うように前に進まない。すぐに息が上がって疲れてしまう。そんな悩みを抱えていませんか?その原因の多くは、ストロークの最初の動作である「キャッチ」にあります。キャッチとは、文字通り水を「掴む」動作のこと。ここがうまくいかないと、その後の水を後ろに押す動作もパワーダウンしてしまいます。
逆に言えば、正しいキャッチを身につけるだけで、驚くほど楽に、そして速く泳げるようになるのです。この記事では、初心者から中級者の方に向けて、クロールキャッチの基本的な仕組みから、水を逃さないコツ、そして明日からプールで実践できる効果的なドリル練習までを丁寧に解説します。感覚を掴んで、気持ちよく進む泳ぎを手に入れましょう。
【クロールキャッチ】とは?推進力を生み出す重要なメカニズム

水泳において「キャッチ」という言葉をよく耳にしますが、具体的にどの瞬間を指し、なぜそれほど重要なのでしょうか。まずはクロールの動きの中でキャッチが果たす役割と、その基本的なメカニズムについて正しく理解することから始めましょう。ここを理解することで、練習の質がぐっと上がります。
キャッチの役割と重要性
クロールの腕の動作(ストローク)は、大きく分けて「エントリー(入水)」「キャッチ(水をつかむ)」「プル(水を引く)」「プッシュ(水を押し出す)」「リカバリー(腕を戻す)」の5つの局面に分類されます。この中でキャッチは、エントリーした直後に水を捉え、身体を前に進めるための土台を作る重要なフェーズです。
陸上で例えるなら、重たい物を引っ張る際に、最初にガシッと手を掛けて力を込める準備をする瞬間に似ています。もし、この手を掛ける動作が滑ってしまえば、いくら力自慢でも物を動かすことはできません。水中でも同様に、キャッチでしっかりと水の抵抗を感じ取ることができなければ、その後のプルやプッシュでどんなに力を入れても、水が後ろに逃げるだけで推進力には変わらないのです。
つまり、キャッチは「推進力のスイッチを入れる動作」と言えます。速く泳ぐ選手ほど、この一瞬の動作で大量の水を抱え込み、効率よく体を前へと運んでいます。
なぜ「水を掴む」感覚が必要なのか
「水を掴む」と言われても、水は液体ですから手からこぼれ落ちていくものです。しかし、上手なスイマーはまるで水が固形物であるかのように、しっかりとした手応えを感じながら泳いでいます。この感覚が必要な理由は、水の抵抗を最大限に利用するためです。
水泳は、水を後ろに押した反作用で前に進みます。手のひらや腕の内側全体に水の重み(抵抗)を感じるということは、それだけ多くの水を捉えている証拠です。この感覚がないまま腕を回すと、いわゆる「スカスカ」の状態になり、腕を回す速度だけが速くて身体が進まないという現象が起きます。
初心者のうちは、水を掴む感覚がわからず、どうしても力任せに水を「叩いて」しまったり、ただ後ろに「流して」しまったりしがちです。まずは、手のひらに水圧がかかる感覚、水が重たく感じる瞬間を探すことが大切です。その重みこそが、あなたを前に運んでくれるエネルギーの源となります。
進まない人の特徴!「撫でるだけ」と「力が入りすぎ」
キャッチがうまくいかない人には、大きく分けて二つのパターンがあります。一つは、水を優しく撫でてしまっているパターンです。入水した後、すぐに水を捉えずに、手がスーッと下の方へ落ちていってしまうケースです。これでは水を押すための面が作れず、推進力が生まれません。
もう一つは、最初から力が入りすぎているパターンです。「頑張って進もう」とするあまり、入水直後からガチガチに力んでしまい、手首や肘が固まってしまうのです。水は強く叩いたり急激に力を加えたりすると、かえって逃げてしまう性質があります。力むことで手のひらのセンサーが鈍り、水の流れを感じ取れなくなってしまうのも問題です。
理想的なのは、入水直後はリラックスし、キャッチの瞬間にフッと力を入れて水を引っ掛けるようなメリハリのある動きです。力が入りすぎていると感じたら、一度深呼吸をして、指先の力を抜いてみてください。リラックスすることで、水の感触がわかりやすくなります。
理想的なキャッチのタイミング
キャッチを行うタイミングも非常に重要です。早すぎても遅すぎても効率が悪くなります。基本的には、手が着水して腕が前方に伸びきった(グライドした)直後がキャッチのタイミングです。
初心者に多いのが、入水した瞬間にすぐ水をかき始めてしまうこと。これでは腕が十分に伸びず、ストローク長(ひとかきで進む距離)が短くなってしまいます。また、逆に待ちすぎてタイミングを逃すと、身体が沈み始めて抵抗が増えてしまいます。
反対の手がリカバリーを終えて入水してくるタイミングや、身体のローリング(回転)に合わせてキャッチに入ると、体重移動を使った力強いストロークが可能になります。左右の腕のタイミングを合わせる「タイミング」こそが、楽に長く泳ぐための秘訣でもあります。自分の泳ぎのリズムの中で、一番水が重く感じられるポイントを探してみましょう。
水を逃がさない「ハイエルボー」をマスターしよう

クロールのキャッチ技術を語る上で欠かせないのが「ハイエルボー」です。直訳すると「高い肘」となりますが、これは単に肘を高く上げることだけを意味するわけではありません。なぜこの形が推奨されるのか、どのように実践すればよいのかを詳しく見ていきましょう。
ハイエルボー(肘を立てる)がなぜ良いのか
ハイエルボーとは、水中でのキャッチからプルにかけて、手首や指先よりも肘が高い位置にある状態を指します。このフォームの最大のメリットは、水を押すための「面」を大きくできることです。
もし肘が下がった状態で水をかこうとすると、水を押すのは「手のひらだけ」になります。しかし、肘を高く保ち、肘から先(前腕)を地面に対して垂直に近づけることができれば、手のひらだけでなく前腕全体を使って水を捉えることができます。面積が広がれば、それだけ多くの水を一度に後ろへ運べるため、推進力が格段にアップします。
また、ハイエルボーは広背筋などの背中の大きな筋肉を使いやすいという利点もあります。腕の力だけで泳ぐとすぐに疲れてしまいますが、背中の筋肉を使えれば、長距離でも疲れにくく、パワフルな泳ぎを維持することができます。効率よく進むためには必須の技術と言えるでしょう。
肘が落ちる「ドロップエルボー」のデメリット
ハイエルボーの対極にあるのが「ドロップエルボー(落ちた肘)」です。キャッチの段階で肘が指先よりも低い位置に下がってしまう状態のことです。初心者の多くがこのフォームになってしまいがちですが、これには多くのデメリットがあります。
まず、肘が下がると、水を後ろではなく「下」に向かって押してしまいやすくなります。水を下に押すと、身体が一瞬浮き上がるだけで、前への推進力にはなりません。結果として、身体が上下動して抵抗が増え、無駄なエネルギーを使うことになります。
さらに、水を押す面積が小さくなるため、水をかいてもかいても進まない「空回り」の状態に陥ります。いくら回転数を上げても進まないため、すぐに息が上がり、肩や腕の筋肉ばかりが疲労してしまいます。ドロップエルボーを改善することは、クロール上達の第一歩と言っても過言ではありません。
肩甲骨の動きがポイント!楽に肘を立てるコツ
いざ「肘を立てよう」と意識しても、身体の構造上、ただ肘を高くしようとするだけでは窮屈で難しいものです。ここでポイントになるのが「肩甲骨」の使い方です。ハイエルボーをスムーズに行うためには、肩甲骨を少し外に開くような意識を持つことが大切です。
イメージとしては、高いところにある棚の上の物を、肘を曲げながら手前に引き寄せるような動作に似ています。あるいは、大きなバランスボールを抱え込むような感覚とも言えます。肩甲骨を寄せるのではなく、少し前にスライドさせるように使いながら肘の位置をキープすると、自然なハイエルボーの形が作りやすくなります。
無理に肘を高く上げようとして肩をすくめてしまうと、肩関節を痛める原因になります(インピンジメント症候群など)。肩はリラックスさせて下げたまま、肘から先だけを内側に向けるような意識を持つと、安全かつ効果的なフォームになります。
手のひらだけじゃない!「前腕」全体で面を作る
キャッチの極意は、手のひらだけで水を掴もうとしないことです。ハイエルボーの形ができれば、肘から手首までの「前腕」が水に対して垂直に近い角度になります。この前腕全体を一つの大きなパドル(水かき)だとイメージしてください。
手のひらの面積は限られていますが、前腕を含めればその面積は2倍以上になります。この広い面で水をブロックし、そのまま後ろへ運ぶのです。上手な人は、二の腕や脇の下でも水を感じていると言います。
練習方法として、手のひらをあえて軽く握った状態(グー)で泳いでみると、前腕で水を捉える感覚がわかりやすくなります。手のひらに頼れない分、どうしても腕全体を使おうと身体が工夫するからです。手のひらの向きだけでなく、腕全体の角度を意識することで、キャッチの質は劇的に向上します。
キャッチを成功させる「エントリー」と「伸び」の関係

キャッチは単独で存在する動作ではなく、その前の「エントリー(入水)」と、その後の「グライド(伸び)」と深く連動しています。正しい位置に入水し、しっかりと伸びることが、理想的なキャッチを生む準備となります。
正しい入水位置は肩の延長線上が基本
手を入水させる位置(エントリーポイント)は、基本的には「肩の延長線上」が理想です。頭の中心線を超えて内側に入水してしまうと(クロスオーバー)、身体がくねくねと蛇行する原因になり、水の抵抗が増えてしまいます。
逆に、外側すぎると水を捉える力が逃げてしまい、十分な推進力が得られません。肩幅、あるいは肩の延長線上よりわずかに内側を目安に、指先から静かに入水させましょう。水しぶきを立てずに、一点に指先、手首、肘と順番に入っていくようなスムーズなエントリーを心がけてください。
適切な位置に入水することで、その後のキャッチ動作に入りやすくなります。入水位置がずれていると、キャッチの瞬間に腕を修正する動きが必要になり、無駄な力を使ってしまいます。鏡の前で腕を伸ばし、自分のエントリー位置を確認してみるのも良いでしょう。
入水後の「グライド(伸び)」がキャッチの準備になる
入水したら、すぐに水をかき始めるのではなく、一瞬ググッと前方に腕を伸ばす「グライド」の時間を取ります。この「伸び」が非常に重要です。腕を前に伸ばすことで、水の抵抗が少ない流線型(ストリームライン)を作ることができます。
また、しっかりと前に伸びることで、肩甲骨が前に引き出され、より遠くの水をキャッチできるようになります。遠くの水を掴めば、それだけストロークの距離(ストローク長)が伸び、少ない回数で速く進めるようになります。
「伸び」と言っても、ただ休んでいるわけではありません。指先を遠くへ突き刺すようなイメージで、身体全体を前に引っ張られるような感覚を持つことが大切です。この伸びている間に、反対側の腕はフィニッシュからリカバリーへと移行しています。左右の連動性を高めるためにも、焦らずに「待つ」時間を作りましょう。
重心移動とキャッチを連動させるイメージ
クロールは腕の力だけで進むものではなく、身体全体の重心移動を利用して泳ぐものです。入水して腕を前方に伸ばしたとき、身体の重心は前(胸から脇の下あたり)に乗ります。この「重心が前に乗った瞬間」に合わせてキャッチを行うと、体重を乗せた重たいストロークが可能になります。
スキーで坂を下るときに体重を前にかけるように、水泳でも前に体重を預けることでスムーズに進みます。キャッチ動作は、単に水を後ろに引くだけでなく、自分の身体をキャッチした位置(水中の固定点)へ乗り込ませていくような動作でもあります。
イメージとしては、梯子(はしご)の段に手をかけて、身体を引き上げるような感覚です。手を引くのではなく、身体を前へ移動させる。この意識を持つことで、腕の筋力に頼らない、楽で効率的な泳ぎへと変化していきます。
呼吸動作でキャッチが崩れないように注意すること
多くの人がつまずくのが、息継ぎの瞬間のキャッチです。呼吸をしようとして顔を横に向けると、つられて入水した手が沈んだり、外側に逃げたりしやすくなります。これを「キャッチが抜ける」と言います。
呼吸動作中であっても、前に伸ばした手(リーディングアーム)はしっかりと位置をキープし、水を捉える準備をしておく必要があります。呼吸時こそ、前の手に体重を乗せて身体を安定させることが重要です。前の手がふらつくと、身体全体が沈んでしまいます。
対策としては、呼吸の際に頭を上げすぎないこと、そして視線を真横ではなく少し斜め後ろに向けることが挙げられます。また、意識的に前の手を「置いておく」感覚を持つと良いでしょう。呼吸をしていない側の腕がしっかりと舵取り役を果たすことで、安定したキャッチを維持できます。
今日からできる!キャッチ上達のためのドリル練習5選

理論がわかったところで、次は実践です。プールで実際に身体を動かしながら、キャッチの感覚を養うためのドリル(部分練習)を紹介します。いきなり長い距離を泳ぐのではなく、短い距離で丁寧に行うことが上達への近道です。
基本中の基本「スカーリング」で水を感じる
スカーリングは、水を感じるセンサー(手のひらや前腕)を磨くために最適な練習です。基本的なやり方は、うつ伏せで浮いた状態(プルブイを足に挟むと楽です)で、腕を前に伸ばし、手のひらで「∞(無限大)」の字や「8の字」を描くように水を撫でます。
このとき、水を強く押すのではなく、手のひらの角度を微妙に変えながら、常に手のひらに水圧を感じ続けることがポイントです。水の中で手を滑らせるのではなく、水に手を「引っ掛ける」感覚を探しましょう。これをフロント(前方)の位置で行う「フロントスカーリング」は、まさにキャッチの感覚そのものです。
最初は進まなくて構いません。手のひらで水をこねるような感覚、あるいは水の中に手で渦を作るような感覚を楽しんでください。慣れてくれば、その細かな動きだけで身体がスルスルと前に進むようになります。
動作を分解して確認「片手クロール」
通常のクロールでは左右の腕が交互に動くため、意識が分散しがちです。片手クロールでは、片方の腕を前に伸ばしたまま(あるいは体側に気をつけしたまま)、もう片方の腕だけでストロークを行います。これにより、キャッチの動作に集中することができます。
特に意識してほしいのは、入水からキャッチへの移行部分です。目線で自分の手を確認しながら、「肘が落ちていないか」「指先が下を向いているか」をチェックしましょう。呼吸は反対側で行うか、または前呼吸(バタフライのような呼吸)にすると、動作を確認しやすくなります。
25mごとに左右を入れ替えたり、右3回・左3回と交互に行ったりして、左右差がないかも確認しましょう。苦手な側がある場合は、その側の練習量を少し増やしてバランスを整えます。
タイミングを整える「キャッチアップクロール」
キャッチアップクロールは、両手を前で揃えてから、片手ずつ回す練習法です。「catch up(追いつく)」の名の通り、リカバリーしてきた手が前の手に追いついてタッチしてから、次の手がスタートします。
このドリルの目的は、「伸び(グライド)」の時間を確保し、正しいタイミングでキャッチに入ることです。手が前にある時間が長いため、身体が沈まないように姿勢を保つ練習にもなります。常に片手が前にあることで、重心が前方に安定しやすくなります。
慣れてきたら、完全にタッチする直前でスタートさせるなど、少しずつ通常のクロールのタイミングに近づけていきましょう。しっかり伸びて、水を掴んでから引く、というリズムを身体に染み込ませてください。
前腕の感覚を磨く「フィストスイム(グー泳ぎ)」
手を軽く握って「グー」の状態でクロールを泳ぐ練習です。手のひらの面積が極端に小さくなるため、手のひらだけに頼った泳ぎをしていると、全く進まなくなります。これにより、強制的に「前腕(腕の内側)」を使って水を捉える意識が芽生えます。
フィストスイムで進むためには、普段以上にハイエルボーを意識して、前腕全体を面にしなければなりません。最初は空振りするような感覚があるかもしれませんが、腕全体で水を抱え込むように泳ぐと、次第に進むようになります。
25mをグーで泳いだ直後に、普通の手(パー)で泳いでみてください。手のひらが巨大になったかのように、水が強烈に引っかかる感覚に驚くはずです。これが「水を掴む」という感覚の正体です。
道具を活用!「パドル」を使った練習のメリットと注意点
水泳用のパドル(ハンドパドル)を装着して泳ぐのも有効な手段です。パドルをつけると手の面積が広がるため、水の抵抗がダイレクトに伝わります。キャッチの角度が正しいとグンと進みますが、角度が悪いとパドルが外れそうになったり、変な方向に持っていかれたりします。
メリット
正しいキャッチができているかどうかのフィードバックが即座に得られます。また、筋力トレーニングとしての効果も高く、力強いストロークを養うことができます。
注意点
肩への負担が大きくなるため、使いすぎには注意が必要です。特にフォームが固まっていない状態で大きなパドルを使うと、肩を痛めるリスクがあります。最初は小さめのフィンガーパドルや、技術練習用のパドルを選ぶのがおすすめです。また、パドルに頼りすぎると、外したときにスカスカに感じてしまうことがあるため、必ずパドルなしのスイムとセットで練習しましょう。
よくある間違いと改善のためのチェックポイント

練習をしていて「何かしっくりこない」と感じる場合、どこかにエラーが生じている可能性があります。ここでは、キャッチにおいてよくある間違いと、それを修正するためのチェックポイントを挙げます。自分の泳ぎを振り返る参考にしてください。
手が外側や内側に流れすぎていないか
キャッチからプルにかけて、手の軌道が極端にジグザグになっていませんか?手が身体の中心線を越えて内側に入りすぎると(クロスオーバー)、水を横に切ってしまい推進力が逃げます。逆に外側に広がりすぎると、力が入りにくくなります。
基本は「身体の幅の中」で水をかくことです。キャッチした水を、お腹の下を通って太ももまでまっすぐに運ぶイメージを持ちましょう。プールの底にあるラインを目安にして、それに沿って手を動かす練習も効果的です。
特に呼吸をする際に、手が反対側へ流れることが多いので注意が必要です。呼吸時でも、手は進行方向に対してまっすぐ後ろへ引く意識を強く持ちましょう。
水を押す方向が下向きになっていないか
これは前述の「ドロップエルボー」とも関連しますが、キャッチの瞬間に手のひらがプールの底(真下)を向いてしまい、そのまま下に押し込んでしまうケースです。これでは身体が持ち上がるだけで前には進みません。
目的は身体を「前」に進めることですから、水は「後ろ」に押さなければなりません。キャッチの初期段階から、手のひらを徐々に後ろへ向けていく意識が必要です。指先を下に向け、肘を高く保つことで、手のひらは自然と後ろを向くようになります。
「ドラム缶を乗り越える」というイメージを持ってみてください。ドラム缶の上を撫でるのではなく、ドラム缶の手前側に手を引っ掛けて、自分の身体を向こう側へ送り出す感覚です。
指先が力んで反り返っていないか
指先に力が入りすぎて、ピンと反り返っている人をよく見かけます。指が反ると手のひらの中央が窪んでしまい、水がその隙間から逃げてしまいます。また、逆に指を強く閉じすぎてお椀のように丸めてしまうのも、表面積が小さくなるため良くありません。
指先は、わずかに隙間があるくらいのリラックスした状態(自然体)がベストです。水泳では「ソフトハンド」とも呼ばれます。指を閉じようと意識しすぎず、自然に伸ばした状態で水を面で捉えるようにしましょう。
指が反り返っていると手首も固まりやすく、しなやかなキャッチができません。水を感じ取るためには、指先の脱力が不可欠です。水圧によって自然に指が揃うくらいの力加減を目指しましょう。
肘を意識しすぎて肩を痛めていないか
ハイエルボーを習得しようとするあまり、肩関節に無理な負担をかけてしまうことがあります。特に、肩の柔軟性が低い人が無理に肘を高く上げようとすると、インピンジメント(衝突)を起こし、痛みの原因になります。
大切なのは「無理のない範囲でのハイエルボー」です。肘が水面より上に出る必要はありません。手首より肘が高ければ、それは立派なハイエルボーです。自分の骨格や柔軟性に合わせたフォームを探しましょう。
泳いだ後に肩の鋭い痛みを感じる場合は、フォームを見直すサインです。肘を上げる意識よりも、脇を少し開く意識に変えてみたり、ストレッチで肩甲骨周りの柔軟性を高めたりすることから始めましょう。
まとめ:クロールキャッチの感覚を掴んで泳ぎを変えよう
ここまで、クロールのキャッチについて詳しく解説してきました。キャッチは、水泳の推進力を生み出す起点となる非常に繊細で重要な動作です。力任せに水をかくのではなく、正しい技術と感覚で水を「捉える」ことができれば、泳ぎは驚くほど楽に、そして速くなります。
記事のポイント
- キャッチは推進力のスイッチ。水を「撫でる」のではなく「掴む」感覚が大切。
- 「ハイエルボー」を意識し、手のひらだけでなく前腕全体を使って水を捉える。
- 正しい「エントリー」と十分な「伸び(グライド)」が、良いキャッチを生む準備になる。
- スカーリング、片手クロール、フィストスイムなどのドリル練習を継続して感覚を養う。
- 無理なフォームは怪我のもと。リラックスして、自分の身体に合った動きを探求する。
最初から完璧なキャッチをマスターするのは難しいかもしれません。しかし、毎回の練習で「今日は指先の向きを意識しよう」「今日はスカーリングを丁寧やろう」と小さな意識を持つことで、必ず感覚は変わってきます。ある日ふと、「あ、水が重たい!」「身体がグンと進んだ!」と感じる瞬間が訪れるはずです。
その感覚こそが、上達の証です。ぜひこの記事を参考に、プールでの練習を楽しんでください。あなたのクロールがより美しく、より力強いものになることを応援しています。

