平泳ぎは、学校の授業やスイミングスクールで最初に習うことが多い泳ぎ方ですが、実は「進まない」「足が沈む」と悩む人がとても多い種目でもあります。他の泳ぎ方と違って、水の抵抗を受けやすい動きが含まれているため、正しいフォームとタイミングを身につけることが上達への近道です。
この記事では、初心者の方でも分かりやすく実践できる平泳ぎの練習方法を徹底的に解説します。キックの足首の形から、手の動かし方、そして最も重要な「伸び」のタイミングまで、ステップごとに詳しく紹介していきます。今日からプールで試せるドリル練習を取り入れて、楽に長く泳げる平泳ぎをマスターしましょう。
平泳ぎ練習方法の基本!まずは正しいフォームと仕組みを理解しよう

平泳ぎの練習を始める前に、まずは「なぜ進むのか」「どうすれば抵抗が減るのか」という基本的な仕組みを理解することが大切です。ただ闇雲に手足を動かすだけでは、すぐに疲れてしまい、なかなか前に進みません。ここでは、平泳ぎの基本となる姿勢や動きのイメージについて解説します。頭で理解してから体を使うことで、上達のスピードが格段に上がります。
水の抵抗を最小限にする「ストリームライン」
水泳において最も基本であり、かつ重要なのが「ストリームライン(けのびの姿勢)」です。平泳ぎは手と足を引きつける動作があるため、どうしても水の抵抗を受けやすい泳ぎ方です。だからこそ、ひとたび推進力を得た後は、このストリームラインを作って「抵抗ゼロ」の状態で進む時間が重要になります。
両腕を耳の後ろでしっかりと組み、指先から足先までを一直線にするイメージを持ちましょう。お腹に少し力を入れて、腰が反らないように注意することもポイントです。この姿勢が崩れていると、いくら強いキックを打ってもブレーキがかかってしまいます。
推進力の要!足の裏で水を押す感覚
クロールや背泳ぎは足の甲で水を蹴りますが、平泳ぎは「足の裏」で水を後ろに押し出すことで進みます。この「足の裏で水を押す」という感覚が掴めないと、足が空回りしてしまい、前に進む力が生まれません。初心者の多くは、足首が伸びたままキックをしてしまう傾向があります。
練習の第一歩として、足首をしっかりと曲げ(背屈)、足の裏全体で重たい水を感じることから始めましょう。壁を蹴ってスタートする時も、足の裏全体で壁を捉えているはずです。その感覚を水中でのキックでも再現することが目標です。
独特な腕の軌道と呼吸のメカニズム
平泳ぎの腕の動きは、推進力を生むだけでなく、呼吸をするための浮力を確保する役割も持っています。手のひらで水を外側から内側にかき込むことで体を浮かせ、その瞬間に顔を上げて息を吸います。この時、腕を後ろまでかきすぎてしまうと、戻す動作(リカバリー)で大きな抵抗が生まれてしまいます。
手は胸の前あたりでコンパクトに回転させ、素早く前へ突き出すのがコツです。呼吸動作と腕の動きが連動していないと、顔が上がらずに苦しくなったり、逆に体が沈んでしまったりする原因になります。
足の動きをマスターする!推進力を生むキック強化の練習メニュー

平泳ぎのスピードの大部分は、実は「キック」によって生み出されています。正しいキックを習得することは、平泳ぎ上達の最大の難関であり、同時に一番の近道でもあります。ここでは、膝や足首の正しい使い方を体に覚えさせるための具体的な練習メニューを紹介します。焦らず一つずつ確認しながら進めていきましょう。
プールサイドに腰掛けて行う足首の柔軟体操
水中に入る前に、まずはプールサイドに腰掛けて足の形を確認しましょう。平泳ぎのキックで最も重要な「足首を90度に曲げる」動作は、普段の生活ではあまり行わない動きです。プールサイドに座り、両足を水に入れた状態で、足首を直角に曲げてつま先を外側に向けます。
この「ペンギンの足」のような形を作ることがスタートです。その形のまま、足の裏で水を押すように膝を伸ばし、最後に足の裏同士を合わせるように閉じます。自分の目で見ながら足首の形を修正できるので、初心者に特におすすめの練習です。
ビート板を使った基本のキック練習
足の形が理解できたら、ビート板を使って水中で実践します。ビート板の先端を持ち、顔を上げた状態でキックの練習を行いましょう。顔を上げることで腰が沈みやすくなりますが、あえてその状態で足が水面から出ないように蹴るコントロールを身につけます。
膝を引きつける時は、お腹の下あたりまでゆっくりと引き、そこから足首を曲げて後ろに強く蹴り出します。「1(引きつけ)、2(蹴る)、3(伸びる)」というリズムを口ずさみながら行うと効果的です。特に「3」の伸びる時間を長くとるように意識してください。
膝の開きすぎを防ぐ「プルブイ挟みキック」
平泳ぎのキックでよくある間違いが、膝を大きく広げすぎてしまう「ガニ股キック」です。膝が開きすぎると水を押す力が分散してしまいます。これを矯正するために、太ももの間にプルブイ(足に挟む浮き具)を挟んだままキックの練習をしてみましょう。
プルブイを落とさないようにすることで、膝の幅を一定に保つことができます。膝から下(ふくらはぎと足首)だけを外側に回すように動かす「ウィップキック」の感覚が自然と身につきます。最初は窮屈に感じるかもしれませんが、これが効率的なキックのフォームです。
仰向けで確認する「背面キック」ドリル
自分のキックが正しくできているかを確認するには、仰向けになって泳ぐ「背面平泳ぎキック」が有効です。ビート板をお腹の上で抱えるか、頭の後ろで持った状態で仰向けに浮き、平泳ぎのキックを行います。
この練習のメリットは、膝が水面から飛び出さないように意識できることです。膝を引きつける時に膝頭が水面から出てしまうと、それは股関節が正しく使えていない証拠です。膝を水中に隠したまま、かかとをお尻に引きつける動作を練習しましょう。天井を見ながらリラックスして行えるので、フォーム修正に最適です。
腕の動きをスムーズに!プル動作の改善ドリル

キックで進む感覚が掴めてきたら、次は手の動き(プル)を磨いていきましょう。平泳ぎの手は、大きくかけば良いというものではありません。コンパクトかつ力強く水を捉え、素早く抵抗の少ない姿勢に戻ることが重要です。ここでは、腕の正しい軌道と水感を養うためのドリルを紹介します。
水感を養う「スキャリング」練習
手のひらで水を捉える感覚(キャッチ)を養うために、「スキャリング」という練習を行います。立った状態、もしくはうつ伏せで浮いた状態で、手を顔の前に出します。そこで手のひらを外側・内側へとワイパーのように動かしながら、水の手応えを感じてください。
大きく動かす必要はありません。小さな動きで、常に手のひらに水の重みを感じ続けることがポイントです。この感覚が、平泳ぎの「水をかき込む」動作の基礎になります。力が入りすぎて手首が硬くならないよう、リラックスして行いましょう。
足にプルブイを挟んだ「プル専念」ドリル
足の動きを止めて、手の動きだけに集中する練習です。足の間にプルブイを挟み、下半身を浮かせた状態で腕だけで進みます。キックの推進力がない分、手のひらでしっかりと水を後ろへ運ばないと前に進みません。ここで意識してほしいのは「肘の位置」です。
水をかく時に肘が下がってしまうと、水を撫でるだけになってしまいます。肘を高く保ったまま(ハイエルボー)、水を胸の前へとかき込むように意識してください。また、呼吸の際もプルブイのおかげで下半身が安定するため、顔を上げるタイミングの練習にもなります。
脇を締めて抵抗を減らす「リカバリー」のコツ
平泳ぎのプルで意外と見落とされがちなのが、かいた手を前に戻す「リカバリー」の動作です。水をかき終わった後、手が胸の前にある状態から、いかに速く、抵抗なく前へ伸ばせるかがスピードを左右します。コツは、かき込んだ勢いを利用して、両肘を肋骨にぶつけるようなイメージで脇を素早く締めることです。脇を締めることで手が自然と前へ飛び出します。
拝むような手つきでゆっくり戻すのではなく、シュッと鋭く突き出すイメージを持ちましょう。鏡の前で、肘を締めて手を突き出す動作をシャドートレーニングするのも有効です。
タイミングが命!コンビネーション練習で長く泳ぐ

手と足のそれぞれの動きが良くても、そのタイミングが合っていなければ平泳ぎはスムーズに進みません。平泳ぎは「プル→呼吸→キック→伸び」という一連のリズムが非常に重要です。ここでは、手足の連動性を高め、楽に長く泳ぐためのコンビネーション練習を紹介します。
基本のリズム「1かき1ケリ」でグライドを意識する
平泳ぎの完成形において最も美しい瞬間は、手足が伸び切っている「グライド(伸び)」の時間です。この時間を長く取るために、まずはゆったりとしたテンポで泳ぐ練習をします。壁を蹴ってスタートしたら、まずはひとかきして呼吸し、その後にキックを一回打ちます。
キックを打ち終わったら、心の中で「イーチ、ニー」と数えるまで、あえて何もしないで伸びてください。体がスーッと水の中を進んでいく感覚を味わいましょう。初心者は不安で手足をすぐに動かしがちですが、この「何もしない時間」こそが進む時間なのです。
「2キック1プル」で動作の焦りを解消する
手足のタイミングがバラバラになってしまう人におすすめなのが、「2回キックして1回手をかく」というドリルです。通常の平泳ぎは1回の手のかきに対して1回のキックですが、あえてキックを2回入れます。「キック・伸び・キック・伸び・プル(呼吸)」というリズムになります。
この練習の目的は、キックの後の「伸び」を強制的に作ることと、慌てて手を回さないようにすることです。しっかりと体が浮き上がり、推進力を得てから次の動作に移るという余裕が生まれます。呼吸も落ち着いてできるようになるため、長距離を泳ぐ際のペース配分にも役立ちます。
動作の繋がりを確認するスローモーションスイム
あえて全力で泳がず、スローモーションのようにゆっくりと動作を繋げる練習も効果的です。力を抜いて、一つ一つの関節の動きや水の流れを確認しながら泳ぎます。手が伸びてから足を引きつけ始めているか、キックが終わって足が揃ってから伸びているか、といった細かいタイミングをセルフチェックします。
速く泳ごうとすると、どうしても手足が同時に動いてしまう「カエル泳ぎ」になりがちです。ゆっくり泳ぐことで脳と体の連携を深め、正しいタイミングを体に染み込ませましょう。丁寧な泳ぎは、結果として速い泳ぎに繋がります。
よくある悩み別!平泳ぎの矯正・改善ポイント

練習を続けていると、特定のポイントでつまずくことがあります。ここでは、多くの人が抱える「足が沈む」「あおり足になってしまう」といった悩みに対して、具体的な原因と解決策を提示します。自分の泳ぎに当てはまる部分がないかチェックしてみてください。
解決したい悩みリスト
・下半身が沈んでしまう
・キックを打っても進まない(あおり足)
・呼吸が苦しくて続かない
・スピードが出ない
足が沈んでしまう原因と対策
足が沈む最大の原因は、呼吸時の「顔の上げすぎ」と「目線」にあります。息を吸おうとして顎を高く上げすぎると、シーソーの原理で腰と足が沈んでしまいます。呼吸時は水面ギリギリに口を出すだけで十分です。また、目線を正面や天井に向けてしまうのも体が反る原因になります。
呼吸時でも目線は斜め前(水面から1〜2メートル先)を見るようにしましょう。そして、キックを打った直後に素早く頭を腕の間に入れることで、重心が前方に移動し、腰が浮き上がってきます。「頭を入れる」動作を意識するだけで、水平な姿勢を保ちやすくなります。
推進力を逃す「あおり足」の直し方
一生懸命蹴っているのに進まない場合、足の甲で水を蹴る「あおり足(スクリューキック)」になっている可能性が高いです。これは足首が固定されておらず、水を切ってしまっている状態です。
矯正するためには、足首を曲げたまま固定する感覚を養う必要があります。陸上で壁にかかとをつけて立ち、つま先だけを外側に開く練習を繰り返してください。また、プールではビート板を持って、足の親指同士を軽く触れ合わせるイメージでキックの準備をし、蹴り終わりには足の裏で水を挟み込むように意識すると改善しやすくなります。足首の90度固定が全ての鍵です。
呼吸が苦しい時の改善テクニック
平泳ぎで息が苦しくなるのは、吸うことよりも「吐くこと」が不十分なケースが多いです。顔が水中にある間に、鼻からしっかりと息を吐き出しておきましょう(ボビングの要領です)。肺の中の空気を出し切ることで、顔を上げた瞬間に自然と新しい空気が入ってきます。また、タイミングが合わずに水を飲んでしまう場合は、リズムが早すぎる可能性があります。「パー(手を広げる)、パッ(顔を上げて吸う)、ンー(頭を入れて伸びる)」というように、一呼吸のリズムを少しゆっくりに設定し直してみてください。
スピードが出ない時のチェックリスト
フォームは綺麗なのにスピードが出ない場合、キックの「挟み込み」が甘いことが考えられます。水を後ろに蹴るだけでなく、最後に両足を強く揃えて水を挟み込む(スクイーズする)ことで、最後のひと伸びが生まれます。また、手が抵抗になっている場合もあります。
カバリーで手を前に出す際、水面より上で手を戻したり、水面をバシャバシャと叩いていたりしませんか?手は水面直下を滑らせるように静かに、かつ鋭く前に伸ばすのが鉄則です。この「抵抗の削減」と「最後の足の閉じ」を意識するだけで、タイムは劇的に縮まります。
陸上でも上達できる!自宅でできる平泳ぎ練習方法

週に数回しかプールに行けない場合でも、自宅での陸上トレーニングを行うことで平泳ぎの上達を加速させることができます。特に平泳ぎは股関節と足首の柔軟性が非常に重要です。お風呂上がりやテレビを見ながらできる簡単なメニューを紹介します。
股関節の柔軟性を高める「カエル足ストレッチ」
平泳ぎのキックには、柔軟な股関節が必要です。床にうつ伏せになり、両膝を左右に大きく開きます(カエルのような形)。膝の内側を床につけたまま、お尻をかかとの方へゆっくりと近づけていきます。この時、股関節周りが伸びているのを感じてください。無理をする必要はありませんが、痛気持ちいい範囲で毎日続けることで、可動域が広がり、水中でスムーズに足を引きつけられるようになります。股関節が柔らかくなれば、膝への負担も減り、怪我の予防にも繋がります。
足首を柔らかくする「和式トイレ座り」
足首が硬いと、水を捉えるための「背屈(足首を曲げる動作)」が十分にできません。簡単なトレーニングとして、かかとを床につけたまましゃがむ「和式トイレ座り(ヤンキー座り)」を行ってみましょう。もし後ろに倒れてしまう場合は、足首やふくらはぎが硬い証拠です。
最初は壁や柱に掴まりながらでも構いません。この体勢で足首に体重をかけ、じっくりとストレッチします。足首が柔らかくなると、キックの瞬間に足の裏を後ろに向けやすくなり、より多くの水を捉えられるようになります。
椅子を使ったイメージトレーニング
椅子にお腹を乗せて、手足の動きをシミュレーションするのも効果的です(安定した椅子やベッドの端を使ってください)。実際に泳ぐ時のように、手と足のタイミングを陸上で確認します。「手をかく→顔を上げる→手を戻しながら足を引く→キックして伸びる」という順番を、声に出しながらゆっくり行います。
水の中では慌ててしまいがちですが、陸上で落ち着いて動作確認をしておくことで、脳内に正しい神経回路が作られます。特に「手が前に伸びてからキックが始まる」というタイミングのズレをここでしっかり意識しておきましょう。
平泳ぎ練習方法のまとめ:焦らず基本を積み重ねよう
平泳ぎは、力任せに泳いでもなかなか進まない、技術的な要素が強い泳法です。しかし、裏を返せば「正しいフォーム」と「タイミング」さえ身につければ、筋力が少ない方や初心者の方でも、驚くほど楽に、そして速く泳げるようになります。
今回ご紹介した足首を曲げて足の裏で蹴るキックや、ストリームラインでの伸びを意識した練習を取り入れてみてください。一度にすべてを直そうとせず、「今日は足の形だけ気をつける」「明日は伸びる時間を長くする」といったように、テーマを決めて練習することをおすすめします。
水泳は継続が大切です。焦らずコツコツとドリル練習を重ねていけば、ある日ふと「水に乗る」感覚が掴める瞬間が必ず訪れます。ぜひ、楽しみながら平泳ぎの練習に取り組んでください。
練習中に膝や腰に痛みを感じた場合は、無理をせずに休憩してください。正しいフォームで行えば体への負担は減りますが、慣れないうちは関節に負荷がかかりやすいため、準備運動と整理運動を忘れないようにしましょう。
