平泳ぎは手足の動きが独特で、数ある泳ぎ方の中でも特に「息継ぎ」に苦戦する方が多い種目です。「顔が水面から上がらない」「水を飲んでしまって苦しい」「息継ぎのたびに体が沈んでしまう」といった悩みをお持ちではありませんか?
実は、平泳ぎの呼吸がうまくいかない原因の多くは、筋力不足ではなく「タイミング」と「視線」のズレにあります。無理に頭を持ち上げようとせず、水の浮力を味方につけることで、驚くほど楽に呼吸ができるようになります。
この記事では、初心者の方でも今日から実践できる平泳ぎの息継ぎのコツや、陸上でもできる練習方法をわかりやすく丁寧に解説していきます。苦しさを解消して、優雅に長く泳げるようになりましょう。
平泳ぎの息継ぎのコツをつかむ!まずは基本の呼吸法と姿勢

平泳ぎの息継ぎをスムーズに行うためには、まず水泳特有の呼吸リズムと、水の中での基本姿勢を理解することが大切です。陸上とは異なる呼吸の仕組みを体に覚えさせることで、焦らず余裕を持って息継ぎができるようになります。ここでは、泳ぎ始める前に知っておきたい3つの基本ポイントを紹介します。
水中で鼻から息を吐き続ける「ボビング」の技術
息継ぎが苦しくなる最大の原因は、「水中で息を吐ききれていないこと」にあります。肺に空気が残った状態で顔を上げても、新しい空気を吸い込むスペースがないため、浅い呼吸になってしまいます。これを解消するために必要なのが「ボビング」という技術です。
顔が水にある間は、鼻から「んー」とハミングするように長く息を吐き続けましょう。そして、顔が水面に出た瞬間に「パッ」と口を開けます。すると、吐ききった反動で自然と空気が肺に入ってきます。意識して「吸おう」とするのではなく、「吐くこと」に集中するのが、楽に呼吸をするための第一歩です。
顔を上げるのではなく「水面を斜め前に見る」視線
「息を吸わなきゃ」と焦ると、つい天井や空を見るようにあごを高く上げてしまいがちです。しかし、頭を後ろに反らすような姿勢をとると、下半身が沈みやすくなり、結果として顔が水面から出にくくなります。
理想的な視線は、水面から少し先、今の位置から1〜2メートルほど斜め前の水面を見るイメージです。あごを少し引いた状態で、首の後ろを伸ばすように意識してみましょう。頭頂部から背中にかけてのラインをなだらかに保つことで、水の抵抗を減らし、スムーズな浮上につなげることができます。
ストリームラインを崩さない「伸び」の姿勢
平泳ぎには、クロールや背泳ぎとは違い、手足の動きを止めて水に乗って進む「伸び(グライド)」の時間があります。息継ぎが終わった後、すぐに次の動作に移るのではなく、しっかりと体を一直線に伸ばす時間を作ることが重要です。
この「伸び」の姿勢が崩れていると、体が沈んでしまい、次の息継ぎ動作への移行が難しくなります。両腕で頭を挟むようにして、指先から足先までピンと張った「ストリームライン」を作りましょう。この姿勢が安定していれば、体が浮きやすくなり、次の息継ぎの動作へスムーズに入ることができます。
息継ぎのタイミングが合わない!動作を分解してリズムを整えよう

平泳ぎで「沈んでしまう」悩みの多くは、手足の動きと呼吸のタイミングがずれていることから生じます。腕をかいている最中に息を吸うのか、伸びている時に吸うのか、このタイミングが少しでも狂うと浮力を失ってしまいます。ここでは、一連の動作を4つのステップに分解して、正しいリズムを身につけましょう。
1. 水をキャッチして腕を引き始める瞬間
息継ぎの準備は、腕を広げて水を捉える「キャッチ」の段階から始まります。腕を肩幅より少し広めに開き、水を自分の方へ引き寄せ始めると同時に、少しずつ顔を上げる準備をします。
この時、まだ顔は水中にある状態です。鼻から息を吐き出しながら、水を押さえる力を使って上半身が自然に持ち上がるのを待ちましょう。自分の力で頭を持ち上げるのではなく、腕で水をかいた反作用で体が浮き上がってくる感覚をつかむことが大切です。
2. 脇を締めて顔が水面に出る「インスイープ」
腕を胸の前まで引き寄せ、脇を締める動作(インスイープ)を行う時が、最も顔が高い位置に来る瞬間です。このタイミングに合わせて、水面から口を出し、素早く息を吸います。
ポイントは、脇を強く締めることで上半身をグッと持ち上げることです。腕だけで体を支えるのではなく、肘を内側に寄せ集める力を利用します。この一瞬の間に「パッ」と短く息を吸い込みましょう。長く吸おうとするとタイミングが遅れてしまうので、短く鋭い呼吸を心がけてください。
3. 腕を前に戻しながら顔を沈める「リカバリー」
息を吸い終わったら、間髪入れずに腕を前方へ伸ばし(リカバリー)、同時に顔を水中に戻します。ここで動きが止まってしまうと、せっかく浮いた体がズブズブと沈んでしまいます。
「吸ったらすぐ戻る」を合言葉に、腕を前に突き出す勢いを利用して頭を腕の間に入れ込みましょう。顔を水につけることで、浮力が復活し、下半身が浮き上がりやすくなります。怖がらずに頭をしっかり沈めることが、次の安定した姿勢につながります。
4. キックを打って体を一直線にする「グライド」
腕が伸びきり、顔が水中に入ったタイミングに合わせて、足のキックを行います。キックの推進力で体全体が前に進み、浮力が最大になる「グライド(伸び)」の状態に入ります。
このグライド中は、息継ぎのことを忘れてリラックスする時間です。慌てて次の動作に移らず、体が水面近くをスーッと進む感覚を味わってください。この「間」を十分に取ることで、呼吸のリズムが整い、心拍数の上昇も抑えることができます。
顔が上がらない・沈んでしまう時の具体的な対処法

タイミングは理解していても、どうしても体が沈んでしまったり、水を飲んでしまったりすることがあります。そんな時にチェックしてほしいポイントと、修正するための具体的なテクニックを紹介します。力任せに泳ぐのではなく、物理的なコツを使って解決しましょう。
チェックポイント:
・腕を後ろまで引きすぎていませんか?
・頭を上げる時、天井を見ていませんか?
・息を吸う時間が長すぎませんか?
腕を後ろまでかきすぎない「コンパクトなストローク」
初心者に最も多いのが、腕をお腹や腰のあたりまで大きくかいてしまうケースです。腕を後ろまで引きすぎると、戻す動作(リカバリー)に時間がかかり、その間に体が沈んでしまいます。
手は「肩のライン」または「胸の前」あたりで止めて、素早く前に戻すのが正解です。小さな円を描くようなイメージで、コンパクトに腕を動かしましょう。ストロークを小さくすることで、腕を前に戻すスピードが上がり、沈む前に次の「伸び」の姿勢に入ることができます。
水面をあごで押すイメージの「あご引き」テクニック
顔を上げようとして首に力が入り、あごが上がってしまうと、重心が後ろに移動して足が沈みます。これを防ぐには、「テニスボールをあごと首の間に挟んでいる」ような感覚であごを引くことが効果的です。
水面から顔を出す時は、おでこから出るのではなく、頭頂部で水面を突き破り、あごで水面を押さえつけるようなイメージを持ちましょう。視線は常に斜め下をキープします。首の後ろ側を伸ばしたまま呼吸することで、下半身の沈み込みを最小限に抑えることができます。
息継ぎの瞬間に「腰を入れる」感覚
上半身を起こすことばかりに意識が向くと、腰が反ってしまい、姿勢が崩れます。息継ぎの瞬間は、お腹に少し力を入れて、腰を少し丸めるような意識を持つと安定します。
水泳では「フラットな姿勢」が良いとされますが、平泳ぎの息継ぎの瞬間だけは、骨盤を少し後傾させる(おへそを覗き込むような)イメージを持つと、足が浮きやすくなります。これにより、上半身と下半身のシーソーのような関係が改善され、スムーズな体重移動が可能になります。
自宅やプールサイドでできる効果的な練習メニュー

プールに入らなくても、自宅やプールサイドで息継ぎの感覚を養うことは十分に可能です。水中でパニックにならないよう、陸上で動作のシミュレーションを行っておくことが、上達への近道です。ここでは、今日からできる簡単な練習メニューを紹介します。
鏡を使った「タイミング確認」のシャドー練習
大きめの鏡の前で立ち、平泳ぎの手の動きと呼吸のタイミングを合わせる練習です。前傾姿勢になり、両手を前に伸ばした状態からスタートします。
1. 手を広げながら(キャッチ)、まだ顔は正面(水中想定)。
2. 脇を締めながら(インスイープ)、顔を上げて「パッ」と息を吸う。
3. 手を前に出しながら、顔を元の位置に戻す。
この一連の流れを、鏡で自分のフォームを確認しながら繰り返します。特に「手が戻ると同時に顔も戻る」という連動性を意識してください。
お風呂や洗面器で行う「呼吸リズム」の特訓
顔を水につけることへの恐怖心をなくし、リズミカルな呼吸をマスターするための練習です。お風呂や洗面器に水を張り、顔をつけます。
鼻から「んー」と息を吐きながら3秒間水につけ、顔を上げたら「パッ」と吸う。これをテンポよく繰り返します。慣れてきたら、目を開けて水中の様子を見る練習も加えましょう。水圧を感じながら鼻から息を吐く感覚は、プールでの実践に直結します。
ビート板を使った「顔上げキック」練習(プール用)
プールに行ける時は、ビート板を使って呼吸動作だけに集中する練習がおすすめです。ビート板の先端を持ち、平泳ぎのキックをしながら進みます。
顔を水につけてキックし、息が苦しくなったら顔を上げて呼吸します。この時、ビート板を下に押し込むのではなく、あごを引いたまま顔を上げる練習をします。腕の動きがない分、顔の上げ方と呼吸のタイミングだけに集中できるため、初心者の方に非常に効果的なドリルです。
長く泳ぐための呼吸のリズムとメンタルコントロール

25メートル、50メートルと長く泳ぎ続けるためには、技術だけでなく「心の余裕」も大切です。息継ぎが乱れると、焦りが生まれて筋肉が硬直し、さらに疲れやすくなるという悪循環に陥ります。最後に、リラックスして泳ぎ続けるための秘訣をお伝えします。
吐く息をコントロールして心拍数を整える
泳いでいる最中に苦しくなるのは、酸素不足よりも、二酸化炭素が体内に溜まることが主な原因です。苦しい時こそ、水中でしっかりと息を「吐き切る」ことを意識してください。
焦って吸うことばかり考えると過呼吸気味になり、余計に苦しくなります。「吐けば、自然に入ってくる」という体のメカニズムを信じましょう。水中で長く、ゆっくりと息を吐くことで、副交感神経が刺激され、心拍数の急激な上昇を抑える効果も期待できます。
「1、2、の、3」のリズムを心の中で唱える
自分なりのリズムを持つことは、長距離を泳ぐ上で非常に有効です。例えば、「1(かく)、2(吸う)、の(戻す)、3(伸びる)」といったように、心の中でカウントを取りながら泳いでみてください。
特に「伸びる」時間をカウントに含めることが重要です。初心者はどうしても動作を急いでしまいがちですが、一定のリズムを刻むことで、動作の焦りを防ぎ、無駄な体力の消耗を防ぐことができます。音楽をイメージするのも良いでしょう。
メモ:
周りの人とスピードを比べる必要はありません。自分の呼吸が一番楽なペースを見つけることが、長く泳ぐための最大のコツです。
失敗しても焦らない「立ち止まる勇気」
練習中に水を飲んでしまったり、タイミングが合わなくなったりすることは、上級者でもあります。そんな時は無理に泳ぎ続けず、一度プールの底に足をついて呼吸を整えましょう。
「失敗した」と思うと体が硬くなります。「次はもう少しゆっくり吐いてみよう」「あごを引いてみよう」と、冷静に分析してリセットすることが上達への近道です。リラックスした状態こそが、最も浮力が働き、きれいなフォームを生み出します。
まとめ
平泳ぎの息継ぎのコツは、筋力で体を持ち上げることではなく、正しい「タイミング」と「視線」、そして「リラックス」にあります。まずは、水中で鼻から息を吐ききるボビングの基本を大切にし、脇を締める動作と連動させてコンパクトに息継ぎを行うことから始めましょう。視線は斜め前をキープし、あごを引くことで下半身の沈み込みを防ぐことができます。
また、自宅でのシャドー練習や、お風呂での呼吸練習も非常に効果的です。水泳は感覚のスポーツですので、焦らず一つひとつの動作を確認しながら、少しずつ体になじませていってください。息継ぎができるようになれば、平泳ぎは驚くほど楽で楽しい泳ぎに変わります。ぜひ、今回紹介したコツを意識して、快適なスイミングライフを楽しんでください。



