「バタフライは難しそうで、自分には無理かもしれない……」そんなふうに諦めていませんか?
ダイナミックなフォームでプールを泳ぐ姿は憧れますが、いざ挑戦してみると手足のタイミングが合わなかったり、体が沈んでしまったりと、多くのスイマーが壁にぶつかります。
しかし、バタフライは「うねり」というリズムさえ掴めば、実は余計な力を使わずに楽に泳ぐことができる種目なのです。この記事では、初心者の方でも確実にステップアップできるバタフライ練習方法を、陸上での動き作りから水中のドリルまで詳しく解説します。焦らず一つずつ実践して、優雅なバタフライをマスターしましょう。
バタフライ練習方法の基本は「うねり」の習得から始めよう

バタフライが他の泳ぎと決定的に違う点は、体の中心から生まれる「うねり(ウェーブ)」を使って進むことです。
手や足だけで泳ごうとすると、すぐに疲れてしまいます。まずは、このうねりの感覚を体で覚えることが、バタフライ上達への最短ルートです。
ここでは、うねりのメカニズムと、誰でも簡単にできる基本の練習方法を紹介します。
なぜ「うねり」が必要なのか?推進力の仕組み
バタフライにおける「うねり」とは、頭、胸、腰、足へと波のように動きを伝えていく動作のことです。
この動きがスムーズに行われると、体重移動だけで前に進む力が生まれます。
初心者の多くは、手で水をかく力や、足を激しく蹴る力だけで進もうとしてしまいますが、それでは体力が持ちません。
うねりを使うことで、水に体全体を「乗せる」感覚が生まれ、抵抗の少ないフラットな姿勢を保ちやすくなります。
特に重要なのが「胸」の動きです。胸を水中に押し込み、その反動で腰が浮き上がるシーソーのような関係をイメージしてください。
この重心移動こそが、バタフライを楽に泳ぐためのエンジンの役割を果たします。
陸上で感覚を掴む!壁を使ったウェーブ練習
プールに入る前に、まずは陸上で体の動かし方を確認しましょう。
鏡の前や壁を使って行うことで、自分の動きを客観的にチェックできます。
立った状態で、壁に向かって少し離れて立ち、両手を壁につきます。
そこから、以下の手順で体を波打たせてみてください。
【壁を使ったウェーブ練習の手順】
1. 壁に両手をつき、顎を引いて頭を腕の間に入れます。
2. 「頭→胸→腰→膝」の順番で壁に近づけていきます。
3. 胸を壁に近づけるときは、背中を反らせるようなイメージを持ちます。
4. 腰を壁に近づけるときは、逆に背中を丸めてお腹を引っ込めます。
5. 最後に膝を軽く曲げてリラックスします。
6. これを滑らかに連続して行います。
この練習で大切なのは、関節を一つずつ連動させることです。
ロボットのようにカクカクとした動きではなく、ムチのようにしなやかに動かすことを意識しましょう。
特に、胸を突き出す動作と、お腹を引き込む動作のメリハリをつけることがポイントです。
水中で実践!「イルカ飛び」でうねりを体感する
陸上でイメージができたら、次はプールの中で「イルカ飛び」を行います。
これは、プールの底を蹴ってジャンプし、イルカのように水中に潜る動作を繰り返すドリルです。
水深が胸〜肩くらいの場所で行うのがおすすめです。
水面から飛び出し、再び水に入る瞬間に、先ほどの「胸を押し込む」動作を行います。
すると、自然とお尻が水面に浮き上がってくるはずです。
この「潜って浮く」という上下動のリズムが、実際のバタフライのストローク動作にそのまま繋がります。
息継ぎのタイミングもこのドリルで掴むことができるので、ウォーミングアップとして毎回取り入れることをおすすめします。
ドルフィンキックを習得するための段階的な練習メニュー

バタフライの推進力の要となるのが「ドルフィンキック」です。
クロールのバタ足とは異なり、両足を揃えて動かすため、大きなパワーを生み出すことができます。
しかし、膝だけで蹴ろうとすると抵抗が増え、逆に進まなくなってしまいます。
ここでは、効率的なドルフィンキックを身につけるための具体的な練習メニューを紹介します。
第1キックと第2キックのリズムを理解する
バタフライでは、腕を1回回す間にキックを2回打ちます。
これをそれぞれ「第1キック」と「第2キック」と呼び、役割が明確に異なります。
この使い分けができていないと、手と足のタイミングがバラバラになり、ギクシャクした泳ぎになってしまいます。
・第1キック:手が水に入水した瞬間に打ちます。目的は、腰を高い位置に保ち、体を前方に滑らせることです。比較的大きく、ゆったりとしたキックになります。
・第2キック:水中で水をかき終わり、手を水面上に抜く瞬間に打ちます。目的は、推進力を生み出し、スムーズなリカバリー(手を前に戻す動作)を助けることです。鋭く、素早いキックが求められます。
練習では「トン(入水)、トン(フィニッシュ)」というリズムを口ずさみながら泳ぐと、タイミングが合いやすくなります。
最初から両方を強く打とうとせず、まずは第1キックでリズムを取り、第2キックで進む感覚を養いましょう。
ビート板を使った基本のキック練習
まずはビート板を使って、キックのフォームを固めましょう。
ただし、顔を上げっぱなしにしてキックを打つのは、初心者の方にはおすすめしません。
腰が反りすぎてしまい、うねりの動作ができなくなるからです。
以下の方法で練習してみてください。
【顔入れビート板キック】
1. ビート板の先端を持ち、顔を水につけてストリームライン(けのびの姿勢)を作ります。
2. 胸を軽く押すようなイメージでうねりを開始します。
3. その動きが腰、足先へと伝わるようにキックを打ちます。
4. 苦しくなったら顔を上げて呼吸し、すぐに戻します。
ポイントは、「膝を曲げるのではなく、お尻を持ち上げる」という意識を持つことです。
膝を深く曲げて水を叩くように蹴ると、ブレーキがかかってしまいます。
太ももから動かし、足の甲で水を後ろに押し出すように意識すると、進むキックになります。
水中で行う「サイドキック」と「背面キック」
うねりの方向をコントロールするために、体の向きを変えた練習も効果的です。
「サイドドルフィンキック」は、体を横向きにして、下側の手を前に伸ばし、上側の手は体側に添えてキックを打ちます。
体幹が安定していないとまっすぐ進まないため、バランス感覚を養うのに最適です。
前後に動く通常のうねりとは違い、左右に波打つ感覚になりますが、体の中心を使う感覚は同じです。
また、「背面ドルフィンキック(背泳ぎの姿勢でのキック)」も非常に有効です。
仰向けになることで、膝の曲がりすぎを防ぐことができます。
膝が水面から飛び出さないように注意しながら、お腹から足先までを使って水を蹴り上げます。
この練習を行うと、足を引き上げる際(アップキック)の感覚が鋭くなり、キック全体のパワーが向上します。
上級者への近道!立ち泳ぎでの「巻き足」応用
少し難易度は上がりますが、足のつかない深いプールで行う「バーティカルドルフィンキック(垂直方向のキック)」は、キック力を劇的に向上させます。
その場で立ち泳ぎをするように、体を垂直に保ったままドルフィンキックを打ちます。
手は胸の前で組むか、水面に出して行います。
この練習のメリットは、ごまかしが効かないことです。
うねりを正しく使えていないと、体がすぐに沈んでしまいます。
また、前後均等に水を捉える必要があるため、蹴り下ろす力だけでなく、足を引き上げる力も鍛えられます。
最初は10秒間キープすることを目指し、徐々に時間を延ばしていきましょう。
これにより、コア(体幹)が強化され、後半でもバテない強いキックが身につきます。
腕の動作をスムーズにするストロークの練習

キックで推進力が得られるようになったら、次は腕の動き(ストローク)です。
バタフライのストロークは、両腕を同時に大きく回すため、非常に体力を使うイメージがあります。
しかし、正しい軌道と力の入れどころを知れば、驚くほど軽く回せるようになります。
ここでは、水をつかむ「キャッチ」から、リラックスして腕を戻す「リカバリー」までを分解して解説します。
エントリーからキャッチ:水をつかむ準備
腕が水に入水する「エントリー」の位置は、肩幅か、それより少し広いくらいが目安です。
広すぎると力が入らず、狭すぎると窮屈になります。
親指側から静かに入水し、すぐに手のひらを外側に向けながら水をつかむ「キャッチ」の動作に入ります。
この時、肘を落とさないこと(ハイエルボー)が非常に重要です。
肘が下がってしまうと、水を撫でるだけになり、前に進む力が生まれません。
ボールを抱え込むようなイメージで、肘を高く保ったまま水を捉えましょう。
ここで焦って力を入れる必要はありません。あくまで次の動作への準備段階と考え、丁寧に水を感じてください。
プッシュ:一気に加速するポイント
バタフライのストロークの中で、最も加速するのが「プッシュ」の局面です。
お腹の下あたりまでかいてきた水を、太ももに向かって一気に押し出します。
この動作に合わせて「第2キック」を打つことで、爆発的な推進力が生まれます。
最後まで水を押し切ることで、その反動を利用して体が浮き上がりやすくなります。
中途半端な位置でやめてしまうと、次のリカバリーで腕を上げるのが重くなってしまうので、親指が太ももに触れるくらいまでしっかり押し切りましょう。
リカバリー:低く、広く、リラックスして
水を押し切った後、腕を空中で前に戻す動作を「リカバリー」と呼びます。
初心者の多くは、腕を高く上げようとして肩に力が入りすぎてしまいます。
しかし、高く上げる必要はありません。
むしろ、水面すれすれを、低く横から回すくらいの感覚が正解です。
ポイントは、手のひらを後ろに向けたまま(あるいは小指側を上にして)、リラックスした状態で腕を振り回すことです。
遠心力を使って、腕の重さを感じながら前に放り投げるようなイメージで行いましょう。
顎を水面につけるくらい低い姿勢を保つことで、腕は自然と低い軌道を描き、肩への負担も軽減されます。
この時、息を吸おうとして頭を上げすぎると、体が立ち上がって腕が回しにくくなるので注意が必要です。
タイミングが命!手と足を連動させるドリル練習

キックとストローク、それぞれの形ができても、それを組み合わせるタイミングがズレていると、バタフライは泳げません。
「うねり」のリズムに合わせて、手足をパズルのように組み合わせる必要があります。
ここでは、タイミングを体に覚え込ませるための、最も効果的なドリルを紹介します。
バタフライ習得の王道「片手バタフライ」
バタフライの練習といえばこれ、と言われるほど重要なのが「片手バタフライ」です。
片方の手は前に伸ばしたまま(あるいは体側に添えて)、もう片方の手だけでバタフライのストロークを行います。
両手で泳ぐよりも体が軽く感じるため、呼吸やタイミングの確認に集中できます。
【片手バタフライの練習方法】
1. けのびの姿勢からスタートします。
2. 右手だけでストロークを行います。
3. 呼吸は、回している腕の側(横向き)で行うと楽です。
4. 慣れてきたら、前向き呼吸に切り替えます。
5. 25mごとに左右の手を入れ替えたり、「右手2回・左手2回・両手2回」と組み合わせたりします。
この練習で意識すべきは、「伸ばしている手」の安定感です。
動かしていない方の手がぐらつくと、体全体がブレてしまいます。
前に伸ばした手でしっかりと体重を支え、一本の軸を作るようなイメージで泳ぎましょう。
3回キック・1回ストロークのドリル
通常のリズム(2キック1ストローク)だと忙しくてタイミングが取れない場合は、「3キック1ストローク」のドリルがおすすめです。
腕を前に伸ばした状態で、ドルフィンキックを3回打ちます。
3回目のキックに合わせてストロークを開始し、呼吸をしてまた前に戻ります。
この練習の目的は、「伸び」の時間を作ることです。
バタフライは、エントリーした直後に「グライド(伸びる)」時間があります。
初心者はこの時間が短く、すぐに次の動作に入ろうとして忙しくなりがちです。
3回キックを入れることで、しっかりと体を一直線に伸ばす感覚を養い、余裕を持ってストロークに入ることができます。
「1、2、1、2」のリズム合わせ
ドリルで部分的な動きを確認したら、通常のコンビネーションスイム(両手バタフライ)に戻してリズムを確認します。
頭の中で「イチ、ニ、イチ、ニ」と数えながら泳いでみましょう。
・「イチ」:手が入水し、第1キックを打つ(潜る・伸びる)
・「ニ」:水をかき終わり、第2キックを打つ(浮く・進む)
このリズムが一定になるように意識します。
特に「イチ」の伸びる時間を大切にしてください。
上手な人ほど、この「イチ」の瞬間にスーッと体が前に進んでいます。
焦ってバタバタと手足を動かすのではなく、ワルツを踊るようなゆったりとしたリズムを目指しましょう。
苦しくない息継ぎを身につけるためのポイント

バタフライで最も苦戦するのが「息継ぎ(呼吸)」です。
「顔が上がらない」「水を飲んでしまう」「息継ぎの後、沈んでしまう」という悩みをよく聞きます。
実は、息継ぎがうまくいかない原因の多くは、頭の上げすぎやタイミングの遅れにあります。
楽に呼吸をするためのコツを押さえましょう。
顎の位置とタイミングの重要性
息継ぎの際、水面から顔を高く出そうとして、首を大きく反らせていませんか?
頭を高く上げれば上げるほど、足は深く沈んでしまいます。
理想的な息継ぎは、「顎(あご)を水面につけたまま、前を向く」くらいの低さです。
口が水面ギリギリに出れば十分です。
タイミングとしては、プッシュ動作(第2キック)に合わせて顔を上げ始めますが、重要なのは「戻すタイミング」です。
手が水面から出てリカバリーに入った瞬間には、もう顔を水に戻し始めている必要があります。
「パッ」と短く吸って、すぐに頭をしまう。
手が着水する時には、すでに頭は腕の下に入っている状態が理想です。
いつまでも前を見ていると、リカバリーした腕の重みで体が沈んでしまいます。
水中での「吐く」動作を忘れない
「吸う」ことばかりに意識がいきがちですが、スムーズな呼吸の鍵は「吐く」ことにあります。
水中で鼻からしっかりと息を吐き切っていないと、顔を上げた瞬間に「吐いてから吸う」ことになり、時間が足りなくなります。
水の中では「ブクブク」と鼻から息を出し続け、顔が水面に出た瞬間に「パッ」と自然に空気が入ってくる状態を作りましょう。
肺の中に空気が残っていると浮力になりますが、古い空気が溜まったままでは苦しくなるだけです。
足が沈まないための視線コントロール
息継ぎの時、どこを見ていますか?
プールの向こう側の壁や、天井の方を見てしまうと、顎が上がり、腰が落ちてしまいます。
視線は常に「斜め前」の水面を見るようにしましょう。
また、呼吸をしない時(ノーブレス)のストロークも混ぜる練習が効果的です。
「2回かいて1回呼吸」や「3回かいて1回呼吸」など、呼吸の回数を減らすことで、フラットな姿勢を保つ感覚を掴みやすくなります。
呼吸動作が入るとどうしてもフォームが崩れやすいので、まずは呼吸なしで綺麗なフォームを作り、そこに最小限の動きで呼吸を組み込んでいくアプローチがおすすめです。
まとめ:バタフライ練習方法を継続して美しいフォームを目指そう
今回は、初心者の方に向けたバタフライの練習方法について、基礎となる「うねり」からキック、ストローク、呼吸のコツまで詳しく解説しました。
バタフライ上達のポイントを振り返ります。
・「うねり」がすべて:手足の力ではなく、重心移動を使って泳ぎます。
・第1・第2キックの使い分け:「伸ばすキック」と「進むキック」のリズムを意識しましょう。
・リラックスしたリカバリー:腕は低く、遠心力を使って回します。
・低い姿勢での呼吸:顎を上げすぎず、素早く頭を戻すことが沈まないコツです。
最初からすべてを完璧にこなそうとする必要はありません。
「今日はうねりだけ意識しよう」「次は片手ドリルでタイミングを合わせよう」と、課題を一つずつクリアしていくことが、結果的に一番の近道になります。
バタフライは、一度コツを掴んでしまえば、水の流れに乗ってダイナミックに進む、とても気持ちの良い泳ぎです。
ぜひ、今回紹介した練習方法を日々のメニューに取り入れ、美しいバタフライを目指して泳ぎ続けてください。


