背泳ぎを練習しているときに、鼻に水が入ってツンとした痛みを感じた経験はありませんか。他の泳ぎ方と違って上を向いて泳ぐ背泳ぎは、鼻の構造上どうしても水が入りやすく、苦手意識を持ってしまう方も少なくありません。鼻に水が入るのが怖くて、練習に集中できないという悩みは初心者から中級者まで共通の課題です。
しかし、いくつかのポイントを押さえるだけで、鼻に水が入る悩みは劇的に解消されます。呼吸のタイミングや頭の角度、さらにはちょっとした意識の変化で、驚くほど快適に背泳ぎを楽しめるようになります。この記事では、背泳ぎで鼻から水が入らないコツを、体の仕組みや具体的な練習方法を交えて詳しく解説します。
背泳ぎで鼻から水が入らないコツと浸水の原因を理解する

背泳ぎで鼻から水が入ってしまうのには、明確な理由があります。まずはなぜ水が入るのかというメカニズムを理解し、その上で基本的な対策を身につけることが上達への近道です。闇雲に鼻をすすったり、息を止めたりするだけでは、かえって状況を悪化させることもあるため注意が必要です。
鼻に水が入らないようにするためには、空気の「壁」を鼻腔内に作ることが重要になります。水と空気が入れ替わらない状態を維持できれば、どんなに激しく動いても鼻が痛くなることはありません。ここでは、そのための最も基本的かつ効果的なコツを深掘りしていきましょう。
なぜ背泳ぎは他の泳法より鼻に水が入りやすいのか
背泳ぎで鼻に水が入る最大の理由は、顔が常に上を向いているという姿勢にあります。クロールや平泳ぎでは顔が下を向いているため、鼻の穴も下を向いています。重力の関係で水は下へと流れようとしますが、鼻の穴が下を向いていれば、中の空気が蓋の役割を果たし、意識しなくても水は入ってきません。
しかし、背泳ぎでは鼻の穴が上、あるいは斜め上を向く形になります。この状態だと、鼻腔内の空気は浮力で外に逃げようとし、空いたスペースに重力と水圧で水が流れ込んでしまうのです。これが、背泳ぎ特有の「鼻がツンとする」現象の正体です。つまり、重力に逆らって空気を鼻に留めるか、外に押し出し続ける必要があるのです。
また、背泳ぎは自分の腕で跳ね上げた水しぶきが顔にかかりやすい種目でもあります。呼吸をしようと口を開けた瞬間に鼻にも水がかかり、反射的に吸い込んでしまうケースも多いです。こうした構造的な特徴を理解することで、物理的にどう防ぐべきかという戦略が見えてきます。
鼻から水を防ぐ呼吸の基本「ハミング」の技術
背泳ぎで鼻に水が入らないようにするための最も有効なテクニックが「ハミング」です。これは鼻歌を歌うときのように、鼻から「フーン」と細く長く息を出し続ける方法です。鼻から常に一定の圧力をかけて空気を出し続けることで、水が鼻腔に侵入する隙を与えないという仕組みです。
重要なのは、一気に吐き出すのではなく、細く長く出し続けることです。強く吐きすぎてしまうとすぐに肺の空気がなくなり、今度は息を吸うタイミングで水を引き込んでしまいます。ストロークのリズムに合わせて、鼻から少量の泡を出し続けるイメージを持つと良いでしょう。これができるようになると、水圧に対する抵抗力が生まれます。
このハミングは、特に顔に水しぶきがかかるタイミングや、体が上下に揺れるタイミングで意識的に強めます。口で吸って鼻から吐くという「口吸鼻吐(こうきゅうびと)」のリズムを体得することが、背泳ぎをマスターする上での呼吸の基本となります。最初は難しいかもしれませんが、意識しなくてもハミングが出るようになれば、鼻の痛みから解放されます。
鼻の粘膜を刺激しない水圧コントロールの考え方
鼻に水が入ったときに感じるあの独特の痛みは、鼻の奥にある粘膜が水(特にプールの塩素を含んだ水)に刺激されることで起こります。これを防ぐためには、鼻の奥まで水が到達しないように「水圧のバランス」を保つ必要があります。鼻腔の入り口付近に常に空気の層を維持することがポイントです。
水中に潜っているとき、水深が深くなるほど水圧は増していきます。背泳ぎで少し体が沈んだ際、鼻の中の空気は水圧に押されて圧縮されます。このとき何もしないと、圧縮された空気の分だけ水が入ってきます。そこで、ハミングによって内側からの圧力を高め、外からの水圧と相殺させるのがコツです。
また、心理的な緊張も水圧コントロールに影響します。鼻に水が入るのを恐れて鼻を「すする」ような動作をしてしまうと、自ら水を鼻の奥へ引き込んでしまいます。逆に、力を抜いてリラックスすることで、余計な呼吸の乱れを防ぎ、安定した排気を維持できるようになります。物理的な圧力と精神的な落ち着きの両面が大切です。
正しい頭の位置と姿勢で鼻への浸水を物理的に防ぐ

呼吸法と同じくらい大切なのが、泳いでいるときの姿勢、特に「頭の角度」です。頭の位置が少し変わるだけで、鼻の穴が向く方向が変わり、水が入りやすい角度になってしまいます。正しい姿勢を保つことは、泳ぎのスピードを上げるだけでなく、鼻への浸水を防ぐための防波堤にもなるのです。
多くの初心者は、水に浮くことへの不安から頭を上げすぎたり、逆に鼻に水が入るのを嫌がって顎を引きすぎたりします。しかし、極端な姿勢はどちらも鼻への浸水を招く原因となります。ここでは、鼻に水が入らないための理想的なフォームについて具体的に解説します。
顎を引きすぎず上げすぎないベストな角度を見つける
背泳ぎでの頭のポジションは「顎(あご)を軽く引く」程度が理想とされます。具体的には、目線が真上よりも少し足元の方を向くくらいの角度です。顎を上げすぎてしまうと、鼻の穴が真上を向いてしまい、水が垂直に落ちてきやすくなります。逆に顎を引きすぎると、後頭部が沈んで顔全体に水が被りやすくなります。
ベストな角度を見つける目安として、「耳が水に浸かり、顔の面が水面と並行に近い状態」を意識してください。この状態をキープできれば、鼻の穴はやや下流(足側)を向く形になります。泳いでいるときの進行方向に合わせて水が流れていくため、正面から鼻に水が突っ込んでくるリスクを最小限に抑えることができます。
また、首に力が入りすぎていると、泳いでいる衝撃で頭が細かく揺れてしまいます。この揺れが鼻に水が入るきっかけになるため、首回りはリラックスさせ、後頭部を水という枕に預けるような感覚を持つことが大切です。体幹で体を支え、頭はどっしりと安定させることで、鼻腔への浸水を物理的にブロックしましょう。
頭を動かさない安定した体幹の意識が鍵
背泳ぎは腕を交互に回すため、どうしても体が左右に揺れやすくなります。この揺れを「ローリング」と呼びますが、ローリングに合わせて頭まで一緒に動いてしまうと、鼻に水が入り放題になってしまいます。体は回っても、頭は一本の軸として動かさないことが、鼻への浸水を防ぐ重要なコツです。
頭が左右にグラつくと、その度に水面が鼻の高さまで迫ってきます。これを防ぐには、お腹に軽く力を入れ、一本の棒になったようなイメージで泳ぐことが必要です。体幹が安定していれば、腕をどんなに速く回しても顔の周りの水面は穏やかなまま保たれます。安定した姿勢こそが、最も効果的な「水の侵入経路」の遮断方法です。
練習方法としては、おでこにペットボトルやビート板を乗せて泳ぐドリルが効果的です。頭を動かすとこれらはすぐに落ちてしまいます。頭を静止させたまま体を動かす感覚を養うことで、鼻に水がかかる回数を劇的に減らすことができます。「顔は常に穏やかな水面上にある」という状況を作り出すことを目指しましょう。
目線の位置が鼻への水の入り方を変える
意外かもしれませんが、どこを見ているかという「目線」も、鼻から水が入るかどうかに大きく関わっています。人間は目線の方向に頭が動く習性があるため、目線を固定することは姿勢の安定に直結します。背泳ぎ中にキョロキョロと周りを見てしまうと、その瞬間に頭が傾き、鼻に水が入る隙が生まれます。
基本的には、真上にある天井の一点や、屋外なら空の広い範囲をぼんやりと見るようにします。ただし、先ほど述べたように顎を軽く引くため、視界の下の方に自分のつま先が時折見えるくらいの角度がベストです。自分の足の動きを視界の端で確認できる程度に目線を固定すると、頭の角度が一定に保たれやすくなります。
もし、コースロープや隣の泳者が気になって横を見てしまうと、鼻の穴が水面に対して横を向き、横から水が流れ込んでしまいます。背泳ぎでは「常に自分の真上を見続ける」という強い意志を持つことが、結果として鼻を守ることにつながります。目線を安定させることが、鼻への浸水を防ぐためのサイレント・コツと言えるでしょう。
頭の角度を一定にするためのチェックポイント
1. 耳がしっかりと水に浸かっているか確認する
2. 目線が真上からやや足元に向いているか意識する
3. 泳いでいる最中、天井の照明などが左右に揺れて見えないかチェックする
スタートやターンの壁蹴り時に水が入らない工夫

背泳ぎで最も鼻に水が入りやすい瞬間、それはスタート時やターン後の「壁を蹴って潜っているとき」です。水面で泳いでいるときよりも水圧が強くかかり、さらに進行方向に対して体が仰向けで進むため、鼻の穴に水が押し込まれるような力が働きます。この難所をどう乗り切るかが、背泳ぎをマスターする最大の関門と言っても過言ではありません。
潜水(バサロキック)中に鼻が痛くなってしまい、つい早めに浮上してしまうという方も多いでしょう。しかし、潜っている間の鼻のコントロールさえ覚えれば、背泳ぎはもっと楽に、そして速くなります。ここでは、水中動作における鼻のディフェンス方法を詳しく見ていきましょう。
バサロキック中の鼻からの吐き出し方
バサロキックやドルフィンキックで潜っている間は、水面を泳いでいるときよりも強いハミングが必要です。水深が深くなればなるほど、外から鼻を押し通そうとする水圧が強まるからです。潜り始めた瞬間から浮上するまで、絶え間なく鼻から細かな泡を出し続けるのがコツです。
多くの人が失敗するのは、潜り始めにすべての息を吐ききってしまうことです。そうなると、浮上する直前には吐く息が残っておらず、水圧に負けて水が入ってきてしまいます。潜っている間を「5秒」と想定するなら、その5秒間ずっと一定のペースで吐き続けられるよう、肺の空気量を調整しましょう。
もし途中で苦しくなった場合は、鼻から吐く量をさらに細くするか、口を閉じたまま「んー」と喉の奥で圧力をかけるだけでも、ある程度の浸水を防ぐことができます。大切なのは、鼻腔内の圧力を外気圧(水圧)よりわずかに高く保ち続けることです。この感覚をバサロキックの練習とともに身につけていきましょう。
壁を蹴る瞬間の力加減と呼吸の連動
壁を強く蹴って加速する瞬間は、水が鼻に当たる衝撃も最大になります。この瞬間に無意識に息を止めてしまうと、衝撃で鼻の奥まで水が入り込みやすくなります。壁を蹴り出す直前に大きく息を吸い込み、蹴り出すと同時に鼻から「フッ」と少し強めに息を吐き出すのがポイントです。
また、蹴り出す方向が深すぎると、水圧の変化に呼吸が追いつかなくなることがあります。初心者のうちは、真後ろではなく、水面と平行に近い浅い角度で蹴り出すことで、急激な水圧の変化を避けることができます。加速のエネルギーを利用して、鼻の中の空気を外へ押し出すイメージを持つと、水の侵入を効果的に防げます。
さらに、壁を蹴る際の顔の向きも重要です。顎を極端に引いた状態で蹴ると、鼻の穴が進行方向を正面から捉えてしまいます。ほんの少しだけ顎を浮かせ、鼻の穴を進行方向の後ろ側に逃がすような角度を保つと、水の抵抗を直接鼻で受けずに済みます。加速と呼吸をシンクロさせることが、快適な水中動作を実現します。
深く潜りすぎないための入水角度の調整
スタートやターンの際、深く潜れば潜るほど水圧は強まり、鼻への浸水リスクは高まります。競技としては潜水距離を稼ぐのが有利ですが、練習段階や鼻への浸水を防ぎたい場合は、「水面下30cm〜50cm」程度の浅い層をキープするのが賢明です。この深さであれば水圧もそれほど強くなく、コントロールが容易です。
入水時の角度が鋭角すぎると、一気に深いところまで潜ってしまい、耳や鼻に強い圧力がかかります。ターンの後は壁を蹴る角度を水平に保つよう意識し、早めに浮上の姿勢に移ることで、鼻への負担を軽減できます。浮上する際も、水面に出る直前までハミングを止めないように注意しましょう。
水面に顔が出る瞬間に「パッ」と口で残りの息を吐き出すことで、鼻の周りの水を吹き飛ばし、スムーズに次の吸気へ移ることができます。このように、潜る深さを自分でコントロールできるようになれば、鼻への不安を感じることなくダイナミックな壁蹴りができるようになります。潜水は無理をせず、自分の呼吸が続く範囲で調整してください。
ストローク中のしぶきから鼻を守るテクニック

安定して泳いでいるつもりでも、腕を回す動作(ストローク)に伴って水が鼻に入ることがあります。これは、自分の腕が水面を叩いたり、持ち上げた腕から水滴が滴り落ちたりすることで発生します。特に速く泳ごうとして力んでしまうと、水しぶきが激しくなり、鼻に入るリスクも高まります。
ストローク中に鼻を守るためには、ただ呼吸を気にするだけでなく、水しぶきを立てない「静かな泳ぎ」を意識することが重要です。腕の動かし方ひとつで、顔まわりの環境は劇的に変わります。ここでは、泳ぎの中で水しぶきを最小限に抑え、鼻への浸水を防ぐ具体的なテクニックを解説します。
腕の抜き上げ(リカバリー)時の注意点
背泳ぎで腕を水面から引き上げる「リカバリー」の際、手のひらが水面を叩くように上がってしまうと、大量の水しぶきが自分の顔に降り注ぎます。これを防ぐコツは、「親指から抜き上げ、小指から入水する」という基本を忠実に守ることです。親指を先に出すことで、水が腕を伝って顔に落ちてくるのを防ぐことができます。
また、腕を上げるスピードが速すぎると、遠心力で水が顔の方へ飛んできます。リカバリーはリラックスして、大きな弧を描くようにゆっくりと回すことを意識しましょう。腕が顔の真上を通るときが最も水が落ちやすいタイミングですので、その瞬間に合わせて軽く鼻から息を吐くハミングを強めると、万が一の水滴にも対応できます。
水が滴り落ちてくるのがどうしても気になる場合は、腕を少し外側に回すようなイメージでリカバリーするのも一つの手です。真っ直ぐ上に上げるよりも、わずかに体から離れた軌道を通ることで、顔への直撃を避けることができます。自分のストロークがどの程度水しぶきを上げているか、一度ゆっくり泳いで確認してみるのが良いでしょう。
肩のローリングと顔の向きの関係
背泳ぎにおいて、肩を左右に入れ替える「ローリング」は推進力を生むために不可欠ですが、これに伴って顔まで一緒に動いてしまうと鼻に水が入りやすくなります。理想は、「肩は大きく動くが、顔(鼻)は常に真上を向いて静止している」という状態です。この独立した動きが鼻を守る防壁になります。
右肩が上がるとき、右側の顔面が水面からより高く出ます。逆に右肩が沈むときは、右側の顔面が水面に近づきます。このローリングの周期に合わせて、鼻に近い方の水面が上下します。もし首がグラついていると、肩の動きに引っ張られて鼻が水に浸かってしまいます。首の付け根を安定させ、鼻を水面から最も高い位置に固定し続ける意識を持ってください。
ローリングが正しく行われていれば、顎のラインが水を切る役割を果たし、鼻の周りに「気泡のポケット」のような空間が生まれます。この空間を維持できれば、鼻に水がかかることはほとんどありません。肩の柔軟性を高め、体幹を軸にして回転することで、顔周りの穏やかな環境を維持しましょう。ローリングは鼻を守るための高度なテクニックでもあるのです。
入水時の泡が鼻にかからないようにするコツ
腕が頭の先で水に入る「入水」の瞬間も、鼻に水が入る危険なポイントです。勢いよく入水しすぎると、巻き込まれた空気と水が混ざり合い、しぶきとなって顔にかかります。これを防ぐには、小指から静かに、かつ遠くの手の位置に入水させることがコツです。耳のすぐそばでバシャッと入水させると、水は確実に鼻へと飛んできます。
また、入水した後に腕で水をかく「キャッチ」の動作も影響します。深く手を沈めようとしすぎて体が沈み込むと、連動して顔も水に浸かってしまいます。水面に近い位置で効率よく水を捉える技術を磨くことで、顔の高さを一定に保つことができます。「入水は静かに、キャッチは正確に」を心がけることが、鼻への浸水防止につながります。
もし、入水時のしぶきがどうしても避けられない場合は、そのタイミングに合わせて一時的にハミングを強くし、鼻のバリアを強化してください。ストロークのリズムと鼻からの排気リズムを同期させることで、どんなに水しぶきが舞う環境でも、鼻の奥まで水を通さない強固な呼吸のリズムが完成します。泳ぎ全体の質を高めることが、究極の鼻対策です。
どうしても苦手な人のための補助ツールと練習法

ここまで呼吸法や姿勢のコツを解説してきましたが、「どうしても鼻に水が入ってパニックになってしまう」「練習に集中できない」という方もいるでしょう。そんなときは、無理に自力だけで解決しようとせず、補助ツールを活用したり、段階的な練習を取り入れたりするのが賢明です。鼻に水が入らない感覚を一度脳に覚えさせてしまえば、その後の上達は非常にスムーズになります。
補助ツールを使うことは恥ずかしいことではありません。トップアスリートでも練習の内容によってはツールを使用することがあります。まずは鼻の痛みというストレスを取り除き、「背泳ぎは楽しい」と感じることが大切です。ここでは、初心者の方におすすめのツールや、自宅でもできる練習メニューを紹介します。
ノーズクリップ(鼻栓)のメリットと活用法
鼻への浸水を物理的に100%遮断する最強のツールが「ノーズクリップ(鼻栓)」です。これをつければ、どんなに頭が沈んでも、どんなに激しいバサロキックをしても、鼻に水が入ることはありません。「鼻に水が入らない」という絶対的な安心感を得られるため、ストロークやキックのフォーム改善に100%集中できるようになります。
ノーズクリップを使用するメリットは、呼吸の不安がなくなることで、無駄な力みが取れる点にあります。背泳ぎが苦手な人の多くは、鼻を守ろうとして体に余計な力が入っています。一度クリップをつけてリラックスした状態で泳いでみると、「こんなに楽に浮けるんだ」という発見があるはずです。そのリラックスした感覚を覚えるための「養成ギプス」として活用するのがおすすめです。
ただし、ずっと使い続けていると鼻から吐く呼吸の技術が身につかないため、慣れてきたら徐々に外す時間を増やしていきましょう。例えば、「アップのときだけつける」「潜水の練習のときだけつける」といった使い分けが効果的です。最近のノーズクリップは目立たない透明なタイプや、フィット感の良いものが多く販売されているので、自分に合うものを探してみてください。
お風呂やプールサイドでできる呼吸の練習
水中で泳ぎながら呼吸の練習をするのが難しい場合は、まず水深の浅い場所や自宅のお風呂で練習してみましょう。水中に顔をつける必要はありません。仰向けに浮いたような姿勢をイメージして、鼻から「フーン」と細く長く息を吐き出す練習をするだけで、ハミングの持続力が養われます。
お風呂で練習する際は、鼻先を少しだけ水面に近づけ、鼻から出した空気で水面に小さな波紋を作るように吐いてみてください。一気に「ブクブク」と出すのではなく、「そっと空気を押し出し続ける」感覚を掴むのがコツです。これを30秒ほど続けられるようになれば、実際の背泳ぎでも十分通用する排気コントロール能力が身についています。
プールサイドであれば、壁を持って仰向けに浮く「ラッコ浮き」の状態で、呼吸の練習をしましょう。泳ぎの動作を加えず、浮いているだけの状態で鼻から吐き続ける練習です。このときに、時折わざと顔に水をかけてみても鼻に水が入らないようであれば合格です。静止した状態でできないことは、動いているときにはさらに難しくなるため、この基礎練習が非常に重要です。
鼻から吐く感覚を養う水中ボビング
ボビングとは、水中で「プハー」と息を吐きながら沈み、水面で息を吸う動作を繰り返す練習法ですが、これを背泳ぎに応用します。通常は直立姿勢で行いますが、背泳ぎの対策としては、少し体を傾けた状態で行うのが効果的です。鼻から一定の泡を出しながら、鼻の粘膜に水が触れない限界のラインを感じ取る練習です。
やり方は、水中で鼻から「んー」と出し続け、鼻腔の中に空気が溜まっている感覚を意識します。水圧に負けそうになったら少し強めに吐き、圧力を押し戻します。この「空気と水のせめぎ合い」を鼻先で感じることができれば、鼻に水が入る直前のサインがわかるようになります。この感覚があれば、泳いでいる最中に危ないと思っても即座に対応できるようになります。
ボビングを繰り返すことで、鼻から吐いて口から吸うリズムが体に刻み込まれます。背泳ぎの最中にパニックになるのは、このリズムが崩れたときです。どんな状況でも一定の呼吸リズムを保てるよう、ウォーミングアップの一部として鼻呼吸メインのボビングを取り入れてみてください。地味な練習ですが、鼻への浸水防止には非常に高い効果を発揮します。
初心者のためのステップアップ手順:
1. お風呂で鼻から細く長く吐く練習をする
2. プールでノーズクリップを使ってフォームを覚える
3. ラッコ浮きでハミングを練習する
4. クリップを外して、短い距離から泳いでみる
背泳ぎの鼻から水が入らないコツをマスターして快適に泳ぐためのまとめ
背泳ぎで鼻から水が入ってしまう悩みは、多くのスイマーが通る道です。しかし、この記事で紹介した「ハミングによる気圧のコントロール」と「正しい頭の位置のキープ」、そして「水しぶきを抑える丁寧なストローク」を意識すれば、必ず克服することができます。鼻に水が入らなくなると、背泳ぎは他のどの泳法よりもリラックスして長く泳げる素晴らしい種目に変わります。
大切なのは、一度にすべてを完璧にしようとせず、まずはリラックスすることから始めることです。鼻がツンとする痛みへの恐怖心が取れれば、体は自然と水に浮きやすくなり、フォームも安定してきます。必要であればノーズクリップなどのツールも賢く活用し、自分に合ったスタイルで練習を進めていきましょう。
背泳ぎのコツを掴むことは、水泳全体のスキルアップにもつながります。鼻呼吸のコントロールができるようになれば、ターンやクイック動作、他の泳法の呼吸も一段と楽になるはずです。今回学んだポイントを次回のプール練習で一つずつ試して、鼻の痛みを気にせず、水面を滑るように進む背泳ぎの爽快感をぜひ味わってください。



